JAXAから国連宇宙部へ!日本と世界を繋ぐ専門家に聞いてみた!
この記事は全文公開です。(インタビュー:2022年5月)
国際的に宇宙分野で働くのは私の憧れです!
宇宙に関する仕事はエンジニアや宇宙飛行士だけではありません。今回インタビューした森 葉月さんは国連宇宙部(UNOOSA)で働いています!
森 葉月さんについて
森さんは現在、JAXAからUNOOSAのSpace Applications SectionのExpertとしてUNOOSAへ出向中です。
早稲田大学で国際取引法の学位を取得。2014年からJAXAに勤務。さらに、2018年にISU(国際宇宙大学)の宇宙研究プログラム修了。2020年にオーストリアのウィーンに移り、 UNOOSA本部で勤務を開始。現在、サセックス大学で持続可能性に関する修士号の取得を目指している。
UNOOSAについて
UNOOSAは、宇宙空間の平和利用における国際協力を促進する国際連合の組織です。
森さんの仕事について
彼女の仕事は、UNOOSAが推進する"Capacity Building Project"に関与する多くのパートナー間のコミュニケーションの間に立つことです。彼女は多くの人々を繋ぐ役割として働き、またプログラム進行の管理をしています。
主にUNOOSAの「Access to Space for All」プログラムの参加組織とのお仕事が多いそうです。
:森さんの大学の学位は現在の職業とどのように関連していますか?
「私の現在の仕事は主に管理と調整に関するものです。私の国際取引法の学位は現在の仕事に直接関係はありませんが、プロジェクト開始前に新しいパートナー達と話し合う際の基礎知識として有効活用できています。以前JAXAで法務と調達に携わっていた際には、大学で学んだことは非常に役立ちました。」
:森さんの日常の一日
:ウィーンにいることの一番いいところは何ですか?
「ウィーンは非常に国際的な都市であり、仕事外でも様々な国の多くの人々と出会い友達になれます。歴史ある美しい街であり、治安が良いです。」
森さんの過去について
:宇宙に興味を持ったのはいつですか?
「子供の頃、アメリカに住んでいました。初めて宇宙に出会ったのはフロリダのケネディ宇宙センターです。また、夜空に浮かぶ星々に興味を持ち、スターウォーズのファンだったことも宇宙への憧れにつながっていると思います。」
:なぜ大学で国際取引法を勉強することにしたのですか?
「私は日本の高校に進学して、残念ながら理系に向いていないことに気づいてしまいました。文系の中から専攻科目を探すことにした時に国際法を見つけました。国際法はすべての産業の基礎として機能するので、将来の選択肢を広く維持できる科目だと思い、決めました。」
:森さんにとって最も困難な時期はいつでしたか?そしてどのようにしてその状況を克服しましたか?
「私にとっては大学3年生の時が一番辛かったです。誰もが就職活動をしなければいけない頃、自分が何をしたいのかわからず、とても迷いました。私は仕事選びの際、2つの柱を念頭に置いていました。1つ目は、英語のスキルおよび子供の頃のアメリカでの経験を活かせる国際的な仕事であること。さらに、国際舞台で日本の存在感を高め、日本を代表する技術を持った組織で働きたいと思っていました。2つ目は、世界中の人々へプラスの影響を及ぼすような何かがしたかったです。そうして、私は以下のような宇宙業界の素晴らしさに気づき、JAXAへの就職を目指しました。
宇宙業界のメリット:
①日本の宇宙業界には技術的に優れた会社が多く存在する。
②スペーステクノロジーには無限の可能性がある。例えば、人工衛星の使用だけでもインターネット提供、農業、災害管理など様々な分野で役立てられる。
③SDGsとスペーステクノロジーをリンクさせると、世界に大きな影響を与えられる。 」
:森さんは大事なことを決める時、何を指針にしていますか?
「重要な決定を下すとき、私は常に『将来、多くの選択肢をもたらす道』を選ぶことを意識しています。学ぶ分野が広すぎてもいけませんが、自分の強みが具体的すぎると、いつか転職が難しくなるかもしれません。自分がたくさん動き回って挑戦できる『空間』を維持する為に国際法と宇宙を追求することにしました。
エンジニアなどの理系職種希望の場合は、該当する専門的な分野を選択する必要性があるのだろうと思います。」
森さんが教えてくれた宇宙分野で働く際に重要なこと
❶業界について知ること
「誰が政治力を持っているのか?誰が最も資金を持っているのか?最先端のテクノロジーを持っているのは誰か?どの企業の勢いが増し、どの企業の勢いが停滞してきているのか?これらの質問に対する答えを探し、業界を理解することはとても重要です。例えば宇宙業界に特化した記事を読んだり、宇宙ビジネスを行う企業のソーシャルメディアをチェックしたり、オンラインでイベントに参加したりして宇宙業界のリーダー達と繋がりを持つことが大事です。」
❷多様な文化と様々なコミュニケーション方法があることを理解すること
「国際機関では、たとえ全員が一緒に英語を話しているとしても、文化的・歴史的な違いは大きな違いを生みます。例えば、アメリカ人と日本人では、同じ英語を使っても自分の考えを伝える方法は違います。それらを理解するために世界の歴史を意識することも大事です。私は高校でたまたま世界史を選択していましたが、今その知識がとても役に立っているので運が良かったです。
どの文化にもそれぞれ独自の歴史があり、文化を理解するために歴史を理解することがいかに重要であるかは、強調してもしきれません。最後に、世界中で戦争・対立が起きている現在では、皆さんと同じ10代の若者が戦争を経験した、今経験しているということです。国際的な環境で働くには、相手を思いやる心遣いを忘れないようにしてください。」
❸政治・国際関係について理解を深めること
「国連やJAXAのような有名な組織で働くことはとても輝いていて”カッコイイ”ように見えるかもしれません。しかし、これらの組織は多くの国の政府に関係していることを知っている必要があります。国連もJAXAも、国際舞台の政治の影響を強く受けます。たとえば、国連で一番大きな力を持つのは国連加盟国です。国連で進行するプロジェクトへの資金提供を負担するからです。国連事務局は加盟国に対してプロジェクトを提案をしますが、どのプロジェクトに資金を提供し、どのプロジェクトに資金を提供しないかについて最終決定権は加盟国側にあります。常に、そのプロジェクト/目標に価値があることを示す必要があります。
同様に、JAXAでのプロジェクトは国(日本)からの支援を受けているため、政治家に対して、そのプロジェクトの価値を示す必要があります。JAXAとUNOOSAの両方で働き、国および国際レベルで世界がどのように機能しているかを知れたのは良い経験でした。」
森さんから学生へのメッセージ
森さんのモットー
追加の参考情報 (国際機関で働く方法)
日本人が利用できる主なもの
❶ジュニアプロフェッショナルオフィサー(JPO)派遣制度:
35際以下の若手日本人に対し原則2年間国際機関で経験を積む機会を提供する制度。日本の外務省を通じて申請。宇宙関連部門に申請する場合は、宇宙関連の技術的/法的な経歴が必要。
❷国連事務局ヤングプロフェッショナルプログラム(YPP):
国連事務局の若手職員採用試験。年に一度、試験が行われ書類審査、筆記試験、面接を経て合格した場合、合格者名簿に登録され、ポストの空き状況に応じて選考され採用される。採用されると2年の任期で勤務する。募集分野に関する学士号以上の学位が応募には必要。
❸直接応募(空席公募)
ポストに欠員が出た場合に公募情報を確認し応募する。空席公告は、各国際機関のホームページのEmploymentやRecruitmentの項目に掲載される。
❹インターンまたはボランティア等
❺その他:森さんの様に加盟国の機関から国際機関への出向
UNOOSAの活動の例
Access to space for all:過重力、微小重力、衛星開発、宇宙探査の分野における技術ノウハウ、エンジニアリングプロセス、インフラの開発、および宇宙空間の平和利用における国際協力の促進を目的として、宇宙研究施設、インフラ、情報へのアクセスを提供する。
UN Spider: 衛星データとそれを利用するための技術へのアクセス可能性を高めることにより、災害リスクを減らすための行動を改善する。
Space4Women:宇宙での女性のエンパワーメントを推進する。
Space4Youthコンテスト:宇宙分野において、若者の発信力を高めることを目的としたエッセイコンテスト。
Space Law:宇宙法に関する情報とアドバイスを提供する。
UNOOSAのウェブサイト、Space4SDGs、および年次報告書などで詳細情報をご覧ください。
宇宙に興味がある方へ:
KiboCube:加盟国はISSのきぼうモジュールからキューブ衛星を配備できます。
UNISEC Global:学生の宇宙活動を推進する国際機関。(「UNISEC」は日本で始まったが、「UNISEC Global」は国際的な組織である)
Space Generation Advisory Council:宇宙産業に携わる学生、若手プロフェッショナル、OBからなる最大のネットワーク。
国際宇宙大学(International Space University):宇宙教育のみを目的とした世界で唯一の大学。
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