ソーシャル・ダイブ・スタディーズ アートプロジェクトにダイブする前に知ってほしい7つのこと vol.3 「街をリサーチする目線」 デザイナー 原田祐馬氏
UMA/design farm代表の原田祐馬は、「○○をデザイン」する。○○に入るのは、「政策」「街の景色」「まちおこし」など、どうデザインするんですか?というプロジェクトばかりである。
大学では建築を学び、デザインは独学だという。2004年に金沢21世紀美術館にてヤノベケンジさんの制作アシスタント統括を半年間していたころ、記録集出版を思い立った。手作りの企画書をクリアフォルダにファイリングして出版社を回り、制作費を集めた。この経験が、プロジェクトを最初から最後までやっていくことが面白いと思った原点だという。
「佐賀デザイン」では政策の目的とコンセプトについて役人とディスカッションし、縦割り組織でバラバラだった取り組みに、横ぐしを通していく。ディスカッションを経て再構成されたプロポ―ザルを地元のクリエイターに紹介する。自分が抜けても持続性を持って、地域のデザイン力の底上げにつなげることが理想だという。
UR鳥飼野々二丁目団地では、町と団地に寄り添ったカラーリングをデザインした。色彩で街の景色を明るくしたい。現代美術のアーティストが徹底的にリサーチしてコンセプトを組上げていくように、現場にも足しげく通った。原田のデザイン以降、住む人が目に見えて増えているので、デザインの実効性が証明され、新たな仕事につながっているそうだ。
原田にとって、プロジェクトをつくっていくプロセスそのものが「デザイン」だという。PRO(前に)JECT(投げかける)とは、自分たちが見つけて大事だと思ったことを社会に投げかけていくことだ。
多様な○○は、一見デザインと親和性が無さそうである。共通しているのは、それぞれのプロジェクトの「大事だと思ったこと」。「元気にしたい」「愛着が沸くように」「頑張ろうと思える」などの前向きなコンセプトは、原田の他者を支援することに喜びを感じる人柄を表しているように思える。一方プロジェクトの最終形は、原田一人で考えたわけではなく、非常に多くの関係者の話をこつこつきいて、たどり着いたものなのだろう。プロの仕事にあやかって、日常でもプロジェクトをデザインすれば、なんでもできるような気がしてきた。
佐藤久美