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永原トミヒロ展 2020

原風景。荒川の土手の風景が思わず脳裏に浮かんだ。私は幼少期から今まで、その荒川土手近くの町にずっと住んでいる。誰もが記憶の底にずっとあるイメージを持っているはずだ。この展示を見てから、身近な人たちの原風景を聞いて歩いた。

コバヤシ画廊で「永原トミヒロ展」(2020年2月3日から15日まで)が開催された。永原トミヒロは、大阪岸和田に生まれ、今も暮らす。その風景をモチーフにした油彩平面作品を描写している。

日常的な風景をモチーフとしながら、非現実を感じさせる不思議な絵画世界。それらを前にすると大阪岸和田は故郷ではないのに、自分に染み付いたイメージが脳裏に浮かぶ。

写真を元に描いているという油彩画はとても写実的とは言えない。全体的にモヤがかかっているので水墨画のようだが、浮世絵のようにも見える。永原と話をした際、この作品群は作家自身の「記憶」を元に描いているのだと確信した。記憶にはいつもモヤがかかっているからだ。特に潜在的な記憶ではそうだ。

実は、永原は絵が描くのが辛くなった時期があったそうだ。それまでは自身の原風景を描く現在とは全く違う作風であった。1〜2年程描くことをやめていたのだが、ある日突然描きたくなった。その対象は自宅の床に積んだ洗濯物など身近なものだった。そこから自宅を一歩外に出て、自身が長年住んでいる岸和田の風景を描き始めた。

思えば、原風景は現在の生き方に大きく紐付けられているのかもしれない。身近な人にそれを聞いて歩いた際、強く感じた。原風景は現在のその人が作っているものや生業にしているものに重なる部分があるのだと。

昨今は目に見えるものしか信じない風潮が強いが、永原の作品と共に原風景を探る旅に出てみよう。それは、私たちの「生きる理由」を探す旅になるであろう。

大島有貴

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永原トミヒロ展2021


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