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座談会:アシックス里山スタジアムから生まれるモノ・コト_コミュニティビレッジきとなる

社会福祉法人来島会_重松理恵さん × 大沢麻紀子さん × 三幡大輔さん

地域と福祉をアートがつなぐ
新しい共生のカタチ

ーサッカースタジアムと福祉施設。一見すると異色の組み合わせに感じますが、なぜこの場所に施設を作られたのでしょうか。
三幡さん:従来、障がい福祉は専門的なサービス提供に重点が置かれ、地域社会とのつながりが希薄になりがちでした。その結果、障がいのある方々が社会の中で”見えない存在”になってしまうという課題を抱えていたんです。
障がいのある方々が、適切な支援を受けながら、同時に地域社会ともつながることができるような場所を作りたい――。
そんな時に、FC今治さんの里山スタジアム構想を知りました。このスタジアムを拠点とすることで、地域と関わりをもちながら施設を運営できるのではないか。そして、それは地域にとっても意味があることなのではないか。そんな思いでご提案をさせていただいたんです。

障がいのある方、地域住民、スポーツファンなど、多様な人々が交流し、関わりが生まれることを期待して、「コミュニティビレッジきとなる」はスタジアムエリアにオープンした

ーオープン以降、地域とはどんなつながりが生まれてきたのでしょうか。
大沢さん:スタジアムという開かれた場所にあるからこそ、利用者の方々の日々の様子を見ていただく機会が増え、企業や地域の方々に、私たちのことを理解していただきやすくなったと感じています。
同時に、目の届く範囲に福祉施設があることで、地域の人が、日々の生活の中で困りごとを抱える人たちの存在に気づくきっかけも生まれているように思います。例えば、スタジアムを歩いていたお母さんが子どもに少し厳しく声を掛けているのを目にして、「さっきのお母さん、大丈夫かな?」とスタッフに声をかけてくれた方がいらっしゃいました。見ず知らずの人同士でも、相手の存在を気にかけて、何か困ったことがあれば助け合う。そんなかつての町内会のような、地域コミュニティがここに生まれ始めていると感じています。

障がいのある人もない人も、大人も子どもも、様々な人が行き交うスタジアムエリア。何気なく交わすあいさつからも、つながりが生まれ始めている

ー多様な人が行き交い、集まることで、多くの良い影響が生まれているのですね。今後、この場でアーティストとのコラボが生まれていくのも、楽しみです。
重松さん:私たちは、アートにはとても大きな可能性を感じているんです。これまでにも、さまざまなアート活動に取り組んできた中で、アートが障がいのあるなしに関わらず、人と人、人と地域社会をつなぐツールであることを実感してきました。

Ⓒ社会福祉法人来島会
アート作品を制作する「きとなる」の利用者。来島会では、利用者が制作した絵画や造形作品を展示し、一般のお客様にも見ていただける展覧会「くるしま アール・ブリュット展」を毎年開催している(写真提供=社会福祉法人来島会)
Ⓒ社会福祉法人来島会
日々の活動に、アートをモチーフにした遊びやワークショップなども取り入れている(写真提供=社会福祉法人来島会)

重松さん:今回のプロジェクトの中でも、普段接する機会が少ないアーティストの方々との交流や、新たな表現に触れることは、利用者の方々にとって、貴重な経験になるはずです。見たことのない景色を見たり、想像力を広げたりすることにもつながると、期待しています。
スタジアムで展開されるアート作品を通して、利用者、スタッフ、地域の皆さんがつながれる、そんなコミュニケーションが生まれるといいなと思っています。

重松理恵さん(写真左)
社会福祉法人来島会 放課後等デイサービス「なかよし学童くらぶ」マネージャー・アートの保健室プロジェクト プロジェクトリーダー。子どもたちが安心して過ごせる居場所づくりに努めるとともに、各施設とアートをつなぐ取り組みを推進している。介護福祉士。

大沢麻紀子さん(写真中央)
社会福祉法人来島会 事業部 児童部門責任者・「コミュニティビレッジきとなる」内 放課後等デイサービス「らびっつ」マネージャー。スタジアムエリアという立地を生かし、障がいのある方と地域住民が交流し、誰もが安心して過ごせる場所づくりを目指す。社会福祉士。保育士。

三幡大輔さん(写真右)
社会福祉法人来島会 法人本部 経営企画責任者。地域における障がい者福祉の向上を目指し、経営企画に携わる。社会福祉士。

【インタビュアー】ひめラー:中島佐知子、難波江 任、和田玲子