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対談:私たち、子どもたちの居場所

えひめこどもの城 事業企画リーダー 今井朋子さん
× 利用者 小針麻友さん

子どもの好奇心を見守る
子どものための最高の遊び場


―おふたりの出会いから聞かせてください。
今井:小針さんに出会ったのは今から20年以上前、私がえひめこどもの城(以下、こどもの城)で野外活動を担当していた頃ですね。こどもの城自体もできて間もなかった時期です。
小針:小学生のときに参加していた、こどもの城のクラブ活動の担当が今井さんでした。1泊2日のキャンプは今でも鮮明に覚えています。ホームシックになってしまって「帰りたい」とぐずっている私の話を、ベンチに座ってずっと聞いてくれたことを今でも覚えています。
今井:弟さんと一緒に参加してくれましたよね。あの時は、兄弟という立場を離れていろんな体験をしてほしくて、あえて別のテントにしてしまったから余計寂しかったんでしょうね。
小針:本当にいろんな遊びを経験させていただきました。紙パックの中で何かを焼いたり、テントを張ってキャンプしたり。今も色濃く記憶が残っています。
今井:小針さんが短大生の時、アルバイトにも来てくれて。10年ぶりの再会に感激しました。小針さんのように、中学生になったらボランティア、大人になったらアルバイトという形でこどもの城に戻ってきてくれる子がいるのも、こどもの城の特徴かもしれません。
小針:10年ぶりに会った今井さんは、姿も接し方もまったく変わってなくて、それがとてもうれしかった。アルバイトで働いてみたら、子どもたちの楽しさの裏にある準備や運営の大変さを知り、「スタッフの方ってすごい!」って、思いましたね。
今井:今は、お子さんを連れて親子で来てくれていますね。こどもの城はオープンしてから25年経つので、当時の子どもが親になって、親子で来てくれる時期なんです。

えひめこどもの城の「あいあい児童館」。この建物にも小針さんの思い出がたくさん詰まっている

― 2世代で今井さんとつながっているのですね!
小針:そうなんです。今、1歳10カ月のわが子と「おひさまデイキャンプ」に参加しています。未就園児を連れてのキャンプってハードルが高いじゃないですか。クッキングしたり、火をおこしたりと本格的なキャンプを安全に楽しめるからありがたくて。私自身がこどもの城で得たものがあまりに大きくて、自分の子どもにも同じような体験をさせたいと思って応募しているのですが、人気が高くて抽選から漏れてしまう月もあるんですよ。
今井:もともとおひさまデイキャンプは、お母さんのストレスを解消するための企画でした。お母さんが笑顔なら子どももうれしいはず。だから「料理も片付けも任せてね」って伝えています。お子さんにとっても楽しい時間になってほしいから、親御さんに「お子さんの進みたい方向へ自由に進めさせてあげてね、止めないでね」とも話しています。
1歳ぐらいの子でも、シメジを分けたりキャベツをちぎったり、卵の殻を取ったり意外といろんなことができるんですよ。
小針:そうそう!「あんなこともさせてくれるんだ」、「こんなこともできるんだ」っていう発見の連続です。味も一味違って、子どもがバクバク食べてくれる。この前キャンプで作ったいもたきがおいしすぎて、キャンプから帰る途中で買い物して早速、自宅で作っちゃいました。

子どもが一番、子どもが味方
その思いに子どもたちが満たされる
 
― 今井さんはこどもの城の立ち上げ時から関わっているそうですね。
今井:人と自然をつなぐ仕事がしたくて、縁あって就職したのが立ち上げ前のこどもの城でした。何も決まっていないまっさらな状態から、子どものために何をすればいいか、他のスタッフと一緒に一から考えました。一番大事にしているところは今も変わりません。それは、子どもが一番であること、子どもの味方であることです。こどもの城は必ず、親と一緒に来る場所なのですが、子どもって案外親の顔色をうかがうんです。私たちスタッフは「どっちでも好きな方でいいよ」と子どもの思いを後押ししています。
小針:ここへ来ると当時のことを思い出すのは、たくさんの刺激をもらい、思い切り遊ばせてもらっていたからだと感じます。昔も今も、こどもの城は私にとって心が満たされる場所です。

小針さんの話を、ほほえみながらうれしそうに聞く今井さんの姿が印象的でした

― 今のお仕事についてお聞かせください。
今井:敷地内にある愛媛県体験型環境学習センター「えひめエコ・ハウス」で、虫とりやみそ作りなど、“自然と仲良くなるためのプログラム”を企画、実施しています。
こどもの城は自然が豊かなので、植物や昆虫、いろんなものに“呼ばれて”、少しの距離を歩くのにすごく時間がかかってしまう(笑)。子どもたちが自然と仲良くなってほしいので、ビオトープをはじめ、生き物に触れられる環境をもっと整えていきたいですね。
小針:私自身、こどもの城での経験があったから、今でもアウトドアが大好きだし、幼稚園で働いていた時は、竹を切って子どもたちのテントを作るなど積極的に自然体験を取り入れていました。それは、受け持っていた子たちに、こどもの城の活動で私自身が味わったような楽しい経験をさせてあげたいなと思っていたからです。

―おふたりにとってこどもの城とは?
今井:私にとっての”自然のホームグラウンド”。自然と子どもは一緒です。大人が勝手なことをしなくても自然も子どもも自分たちで勝手にできる。私たちスタッフができるのは、子どもたちの邪魔をしないことです。ここで過ごす時間を思いっきり楽しんでほしいですね。
小針:来るたびに、幼かった頃の好奇心が揺さぶられ、昔に戻るような感覚になります。楽しくキラキラした日々が、今でも心の中の“アルバム”になって残っています。7年前に亡くなった母がこどもの城の児童館で紙芝居をしていたことも、思い出します。いつの日か、孫を連れて来る日まで末長く続いていてくれることを願っています。

今井朋子
1998年、えひめのこどもの城のオープン時から児童厚生員として勤務。他の児童館勤務を経て、退職。現在、愛媛県体験型環境学習センター「えひめエコ・ハウス」のスタッフとして活動している。


小針麻友
幼少の頃からこどもの城の野外活動に参加。短大保育科で学んでいた頃、こどもの城でアルバイトも経験。卒業後は幼稚園教諭として8年勤務。結婚、出産を機に退職し、現在は育児に専念している。

【インタビュアー】ひめラー:難波江 任、宮本奈苗