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「砥部ミュージアム通り」解体新書_坂村真民記念館

焼き物の町、愛媛県砥部町。半径100mに大小さまざまなミュージアムが点在する大南地区では、町の伝統工芸・美術・文化・文学などを知ることができます。また、砥部町には公立で日本唯一のデザイン科単科高校、愛媛県立松山南高等学校砥部分校があります。特色あるこれらの施設の館長さんや関わっているみなさんに、この場所の魅力を聞きました。


いのちを尊び弱きものに寄り添う
生きるための道標となる珠玉の詩

真民さんに出会える静かで緑豊かな環境

坂村真民記念館

館長 西澤孝一さん

「念ずれば花ひらく」で知られる詩人・坂村真民の詩の世界、そして人柄を知ることができる記念館です。58歳の時に砥部に移り住んだ縁からこの地に建てられました。全国から足を運んで下さり、詩の前で立ち尽くす方、涙を流している方もいらっしゃいます。真民の詩には、人々に生きる希望や勇気を与え、前向きな気持ちにさせてくれるような力が宿っています。この記念館の大きな特徴は、本人直筆の畳1帖もある作品を間近で見られることです。その迫力、筆跡から伝わる想いを感じていただければと思います。
実は私は真民の三女と結婚した縁で館長を務めさせていただいています。前職は県職員でしたが退職後に学芸員資格を取得。晩年真民と同居し、最後を看取りました。真民は0時に起床し、毎朝重信川の河原で朝日に手を合わす「祈りの行」を行っていました。生前書いていた日記はノート796冊。日々の出来事や詩を書く過程が綴られており、私は毎日このノートを開き、年3回の企画展の構成を考えたり、真民の詩を読み解くヒントを求め、真民と対話を重ねています。このノートを読むたびに、真民は人としてどう生きるかを時に優しく、時に厳しく問いかけてくれるのです。

真民さんが好きだった朴の木がある中庭をのぞむ。写真中央が西澤館長
掛け軸、直筆詩墨作品など様々な展示物が並ぶ、常設の展示室
当時の書斎を再現。真民さんが最後に持っていた貴重な本を展示している

[DATE]
愛媛県伊予郡砥部町大南705
089-969-3643
開館時間:9時〜17時(入館は16時30分まで)
休館日:月曜(祝日の場合は翌日)
料金:大人400円(65歳以上300円)、高校生・大学生300円、小学生・中学生200円

【インタビュアー】ひめラー:首藤喬一、山口聡子