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座談会:環境を生かし人が集う場所へ 新生・愛媛県総合運動公園の魅力

一般社団法人e.n 
代表理事 村上茉利江 × 園長 五十嵐靖也 × 事業開発部長 宮岡彩乃 

目的地として進化する
森の中にある総合運動公園


ー2024年度より、愛媛県総合運動公園(以下、運動公園)の管理を、コンソーシアム「TOBEMORI SEEDS」が行うことになったとお聞きしました。
村上:「TOBEMORI SEEDS」は、一般社団法人e.n、ニンジニアネットワーク株式会社、協和道路株式会社、学校法人河原学園、株式会社愛媛新聞社の5社によるコンソーシアムです。私たち一般社団法人e.nは、その中でも、運動公園の運営の実行部隊として活動しています。     
                     
ーTOBEMORI SEEDSが関わることになり、運動公園はどのように変化していくのでしょうか。
村上:運動公園は、昭和55年に開園しました。40年以上の間、安定した運営によりスポーツイベントの誘致・運営などが行われていたのはとても素晴らしいことです。今回、私たちは、「スポーツの普及と推進については引き続き行い、アップデートするところはしつつも、さらに他のことにも挑戦していきましょう!」ということを強調させていただきました。

運動公園には、陸上競技場(ニンジニアスタジアム)・体育館・球技場・テニスコート・多目的広場・弓道場などのスポーツ施設のほか、キャンプ場や子ども広場などが点在している

ー他のこととは具体的にどのようなことでしょう。     
五十嵐:
例えば、コンソーシアムの中には多くの専門学校を運営されている河原学園さんがいらっしゃいます。その中の河原調理専門学校とコラボをした食のイベントや、地域密着型のイベントコンテンツ「えんの森」を定期的に開催したいと思っています。

ーえんの森について詳しく教えてください
宮岡:自然豊かな運動公園を中心に、この地域でさまざまな体験活動を行う、未就学児を中心としたお子さん向けのイベントです。10月には、砥部町の川井営農組合さんのご協力のもとサツマイモ掘りを行い、掘った芋を、運動公園内のキャンプ場で焼き芋にしてみんなで食べました。お子さんはもちろんですが、親御さんにも喜んでいただき、とても楽しいイベントになりました。

たくさんの親子連れでにぎわう、えんの森の活動の様子。この日は芋掘りをした後、キャンプ場で焼き芋に(写真提供:一般社団法人e.n)

ーたくさんの企画を考えられているんですね!
五十嵐:
もちろん、スポーツを軸にした企画も大切にしたいです。愛媛FCのホームゲームなど、大きな試合や大会がある時はたくさんの人がいらっしゃいますが、それだけではなく普段から、来園される皆さまに楽しんでいただける企画を考えていきたいですね。また、eスポーツのようにこれまで運動公園では行われてこなかったジャンルのスポーツイベントがあってもいいかもしれません。
村上:具体的な話はこれからですが、音楽フェスなどの大きなイベントも実施していきたいですね。  

世代や目的を越えて楽しめる
パブリックスペースとしての在り方


ー運動公園の魅力は何だと感じられていますか。
村上:
森に囲まれているこの場所自体が魅力だと感じています。ボストンレッドソックスで現役のマッサージセラピストとして活躍されている内窪信一郎さんに、一般社団法人e.nの理事になっていただいていますが、運動公園を一目見て、素晴らしいスタジアムだと絶賛されていました。「この環境でスポーツができる選手たちは恵まれていますね」と。この”環境”というのは、森の中にある静けさや景色のことです。スポーツの分野で一流の世界を経験されている方から見ても、この場所は魅力的なのだと改めて感じました。

ー私たちからすると、当たり前すぎて気が付きにくい魅力なのかもしれません。                
村上:本当にそう思います。地元の人からは、遠いから行きにくいというネガティブワードが出てきがちです。施設自体も大変な投資をして作られた素晴らしい施設だと思いますが、改めてこの場所自体がすごく魅力的なんだと再確認しました。
五十嵐:運動公園は、ニンジニアスタジアムや体育館やテニスコートといったスポーツ施設のイメージが強いと思いますが、「総合運動公園」とあるように”公園”です。あまり知られていませんがキャンプ場や子ども広場など、特徴のある施設が点在しているので、スポーツだけではない魅力を感じていただきたいですね。皆さん、競技やスポーツ観戦などそれぞれの目的があって運動公園に来られていると思いますが、いかに”パブリックスペース”として見ていただけるかということが重要です。これまでは、運動公園は、スポーツ施設を利用しない人には関係ない場所だと思われていましたが、そういった”枠”を外して見ていただきたいですね。

ーそのためにしていることはありますか。
村上:
繰り返しになりますが、ここに来ると”何かに出会える”というイベントを開催すること、そして知っていただくことだと思います。先ほどお伝えした、えんの森もその一つです。
宮岡:地元の農家さんたちと関わりながらイベントをしていくうちに、最近では農家さんから「こんなことができるよ」といったアイデアを出していただけるようになってきました。年配の方から未就学児までが一緒に活動を楽しんでいます。

森に囲まれた運動公園内で談笑するひめラーと一般社団法人e.nのみなさん

ー様々な世代の方が交流されていますね。
宮岡:
世代間交流が生まれているように感じます。
五十嵐:ただ、こういったパブリックスペースだからといって、放っておいて自然に交流が起こるかといえばそうではありません。やはりそこには仕掛けが必要なんです。
村上:少しずつですが、行動を起こすことで人と人が触れ合って、いろんな楽しいことやにぎわいが生まれている感じがしています。そして、これがどんどん広がっていけばいいなと思っています。

ーお話をお聞きして、すごくワクワクしています。これまでの運動公園の概念が変わりました。
村上:
もちろん、これからの運動公園としてのビジョンはありますが、誤解を恐れずに言うと強すぎるマスタープランはないのかもしれません。でも、それこそがみんなのアイデアを実現していくパブリックスペースとしての在り方のような気もします。一つのアイデアから、アレもコレもと予想もしていなかったようなことが創発的に生まれていくと面白いんじゃないかと思います。

一般社団法人e.n 村上茉利江 
『株式会社愛媛FC』のビジネス部門とコーポレート部門での責任統括者として活動する一方で、2023年に一般社団法人e.n を設立し、代表理事を務める。「Better Life, Better City」をスローガンに、人々がより豊かな生活を送れるようなまちづくりに主体的に挑戦するべく、新規事業を企画中。

一般社団法人e.n 愛媛県総合運動公園園長 五十嵐靖也
北は北海道、南は宮崎県まで、ITを軸に様々な自治体や地域企業の課題解決を実践してきた経験を生かし、2024年度より運動公園の園長に就任。地域や現場の人と共に働くことで解決策を生み出すことをモットーとしている。

一般社団法人e.n 事業開発部長 宮岡彩乃 
えんの森(旧:愛媛県総合運動公園 森のようちえん みきゃんっ子)の立ち上げメンバー。現在は、事業開発部にて運動公園で開催されるイベントの企画を担当し、運動公園と地域の人をつなぐ役割を担う。プライベートでは2児の母親。

【インタビュー】ひめラー:難波江 任、秦 元樹