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今夏のプレシーズンの雑感


今夏の移籍市場、どうでしたか。CR7がマンチェスターユナイテッドに、ルカクがCL王者チェルシーにそれぞれ復帰、冨安がアーセナルにとなんだかんだで楽しかったですね。コロナ禍とは思えないマーケットでしたな。

今夏の財政状況

さて、ブラックバーンはどうだったかと言えば、銀行口座の提出に時間がかかり、市場が開いてからしばらくはEFLから移籍禁止措置を受けていたためにその間に狙っていた選手を先取りされてとり逃すことも多かったし、FFPの関係もあって、高額でないにしても移籍金を払って選手を獲得することがそもそも難しかった。実際に、今夏移籍金を払って獲得したのはリンカーンに所属していたTayo Edunだけだった。

お金の話をする上で、前提となるブラックバーンローヴァーズの財務体制について示しておこう。ブラックバーンはインドのコングロマリット企業であるVenkysの資本下にある。そのオーナー企業であるVenkysは2010年にブラックバーンローヴァーズの株を99%保有する「Venky's Limited London」(略称VLL)を運営会社として設立しており(この会社はあくまでインドの本社をイングランドの現地法人として分社化したもので実際の事業活動はしていないに等しい)、この会社を通じてブラックバーンへの投資が行われている。

家禽類、鶏肉の加工などをビジネスとするVenkysもコロナ禍の影響を受けたが、他産業に比べれば割と早めに業績を持ち直した。実際、2020年にはコロナ禍に関わらずVLLから£6mの増資が行われたが、結果はプレーオフ圏外、昇格を逃すこととなった。

加えて決算報告書によると2020年3月までで£20.8m(日本円で約31億円)の損失を計上。20年の3月まででこれだけ損失が発生しており、本格的にコロナ禍と呼ばれる2020年3月以降を含む来年の決算報告が今から既に恐ろしい。

アダム・アームストロングの移籍について

しかし、この話に関連して嬉しいニュースがあった。そう、アダムアームストロングが今夏に£17mでサウサンプトンに売れたことである。

まず、アームストロングの契約は22年夏までだったため移籍金を得るためには今夏がベストなタイミングだった。そして、ブラックバーンが18年夏にニューカッスルから彼を獲得した際の移籍金は£1.9m +転売条項(次回移籍時の移籍金の40%をニューカッスルが受け取る)がついていた。
ただでさえ赤字を埋めるために現金が必要だったブラックバーンだが、この転売条項があったためにトレードではなく満額移籍金での売却に拘った。

アームストロングにはサウサンプトン、エヴァートン、フラム、ウェストハム、ブライトンらが興味を示していた。

他クラブも財政的に苦しくなかなか大枚を叩くクラブは出てこず、移籍市場閉幕のギリギリまで交渉を長引かせてディスカウントを狙うクラブらと、今夏に移籍させて現金を得たいブラックバーンの間での駆け引きが続いた。

特に£15m以下で買い取ろうと値切る動きがあり、サウサンプトンも当初は£8m +オバフェミの譲渡によってアームストロングを獲得しようと試みるも現金が欲しいブラックバーンがトレードを拒否、そしてトレード要因にされていたオバフェミ自身もブラックバーンへの移籍を拒否したことで白紙に。最終的にはサウサンプトンが折れ、報道によれば£17m(ところによっては£15mと報道する記事もあるが)の移籍金で移籍が成立。ざっくり言えば獲得時から10倍弱で売れたのだ。
転売条項として£7mほどはニューカッスルに渡るものの、結果的には£10mの現金を手にすることに。単純化すれば、赤字の半分をアダムアームストロングの移籍金だけで賄うことができた事になる。アダム様さまである。

ダビド・ラジャからのお小遣い

2012年夏にスペインからブラックバーンU18に加入し、トップ昇格、サウスポートへのローン、復帰、ブラックバーンローヴァーズで108試合に出場したのちに19年夏に£3mでブレントフォードに移籍したダビド・ラジャ。一時はアーセナル移籍の噂もありましたね。(ラムズデール獲得により消滅)

昨季、ブレントフォードは昇格プレーオフを制し初のプレミアリーグ昇格が決定。ラジャももちろんプレーオフに出場し勝利に大貢献。ブレントフォードはプレミアリーグでもBIG6の一つ、名門アーセナルに勝利するなど勢いに乗っていてるが、ラジャがブレントフォードの守護神として昇格し、プレミアに舞台で戦っていることにブラックバーンのファンは特に喜んでいます。

なぜ?そりゃ、育成組織出身の選手がプレミアで活躍したら嬉しいに決まってるだろ?

というのは建前で(いや、本当にその点でも嬉しいんだけど)実は彼がブレントフォードに移籍する際にクラブ間で昇格ボーナス(昇格した場合は追加でブラックバーンに£2mを支払う)をオプションとして取り付けていたため、ブレントフォードが昇格を確定させた時点で、£2m(3億円ほど)の臨時収入が転がり込んできたことが嬉しいというのが本音。


びっくりですよね。自分たちは昇格プレーオフにすら入れず悠々と過ごしてたらなんか知らんけど3億円が振り込まれてましたって。宝くじかよ。

ということで、思いもよらぬボーナスを与えてくれたダビド・宝くじ・ラジャに感謝するとともに、今後の活躍を期待しております。

今季のスカッドあれこれ

OUT

【完全移籍】
Adam Armstrong (Southampton FC):£17m
【契約満了】括弧内はフリートランスファー先のクラブ
Amari'i Bell(Luton Town)🏴󠁧󠁢󠁥󠁮󠁧󠁿2部
Lewis Holtby (Holstein Kiel)🇩🇪2部
Corry Evans(Sunderland AFC)🏴󠁧󠁢󠁥󠁮󠁧󠁿3部
Elliot Bennet(Shrewsbury Town)🏴󠁧󠁢󠁥󠁮󠁧󠁿3部
Charlie Mulgrew(Dundee United FC)🏴󠁧󠁢󠁳󠁣󠁴󠁿1部
Brad Lyons(Kilmarnock FC)🏴󠁧󠁢󠁳󠁣󠁴󠁿2部
【ローン移籍】
Harry Chapman(Burton Albion)🏴󠁧󠁢󠁥󠁮󠁧󠁿3部:半期
Dan Pike(AFC Flyde)🏴󠁧󠁢󠁥󠁮󠁧󠁿6部:1ヶ月
【現役引退】
Stewart Downing

IN

【完全移籍】
Harry Pickering(Crewe Alexandra)🏴󠁧󠁢󠁥󠁮󠁧󠁿3部
Tayo Edun(Lincoln city)🏴󠁧󠁢󠁥󠁮󠁧󠁿3部
【ローン加入】
Ian Poveda(Leeds United)🏴󠁧󠁢󠁥󠁮󠁧󠁿1部
Reda Khadra(Brighton Hove&Albion)🏴󠁧󠁢󠁥󠁮󠁧󠁿1部
Jan Paul  Van Hecke(Brighton Hove&Albion)🏴󠁧󠁢󠁥󠁮󠁧󠁿1部
Leighton Clarkeson(Liverpool)🏴󠁧󠁢󠁥󠁮󠁧󠁿1部

Pickeringは正しく言えば昨季冬に完全移籍で獲得したがその後も半年間はクルーでプレーしていて、ブラックバーンでプレーするのは今季からなので今夏の加入リストに入れてみた。

放出について一言で言うならば、「ベテラン大放出祭り」というところだろうか。
キャプテンを務めたベネットおじさんは32歳、10番をつけていたホルトビーは30歳、エバンスも30歳、マルグリューに関しては35歳だった。ホルトビー以外の面々は出場機会がなく、ほとんど戦力外的な扱いだったので納得できたが、ホルトビーの万両については意外だった。普通に活躍していたので。

ホルトビーはブラックバーンを去る直前に「このクラブには若く素晴らしい才能を持った選手がトップチーム、ユース含めたくさんいるのだから自前の若手選手を多く起用する方針にするべきだ」とこの記事で語っていた。

実際、ブラックバーンはイングランド内でもユースチームが強いと評判である。
ユースからトップチームへ昇格し活躍している選手も多い。
トップチームは10年近くプレミアリーグから遠ざかっているが、ブラックバーンU23はプレミアリーグ2というU23のトップリーグでマンU、マンC、アーセナル、リバプール、チェルシーら錚々たるビッグクラブのスーパーエリートらと戦っている。 そして善戦している。

U18に至っては、U18プレミアリーグ(こちらも同年代の最高峰リーグ)でタタッかており、そしてこれを書いている時点では4試合を終えて2位のリバプールU18(1試合未消化)に勝ち点差5をつけて首位である。

ブラックバーンのユースについてはいくらでもかけるが今回の記事の要旨から少し離れてしまうのでまた別の機会に書こうと思う。

本題に戻そう。

ユースは成功している。
お金に関しても、完全にオーナーに依存しすぎな気もするが、増資してくれる分、他所よりは恵まれている。
アダムは10倍で転売できたし、ベテランと上手く別れることもできたのは強化部の努力の賜物である。

明らかにピッチ内だけが上手くいっていないように思う。

4年も指揮していて昇格にかすりもしないのは流石にどうなのか。
今季はプレミアリーグから有望な若手を受け入れることに成功したが、トニーモウブレーはアダムアームストロングが抜けた穴を埋める新たなストライカーの補強を熱望していた。
具体的にはIdah(Norwich)、Maja(Bordeaux)、Oliver Burke(Sheffield U)らが獲得リストに挙がっていたが獲得には至らなかった。Majaに関してはメディカルチェックに引っかかり獲得を見送ったという報道があった。
つまりだ。今夏もモウブレーの思うような補強はできなかった。しかし、どうにか工面してもらわなきゃ困る。
EFLの監督をやってれば満足な補強ができることなんてまずないのだから。

なんか最後は愚痴っぽくなってしまったが今季こそ昇格の瞬間を観られるように、毎週日本からRoversTVを通して応援しようと思う。


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