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アートセラピーが子供のセラピーに向いている5つの理由

アート制作を取り入れた心理療法・アートセラピーは、幅広い年齢層のクライアントに取り入れられているものの、子供のカウンセリングとして特に有名な心理療法の手法として知られているでしょう。

この記事では具体的に、アートセラピーのどのような特徴が、子供のセラピーに向いているのか、その理由を5つに分けて紹介したいと思います。

*なお、この記事の『子供』とは幼稚園〜13歳ぐらいまでの年齢の子供をイメージしています。


⒈ 楽しい!!遊び感覚で参加出来る

なんと言っても、子供のセラピーは楽しくなくては!!辛いトラウマを抱える子に限らず、子供の心はとても繊細。どんな子供に対しても、セラピーのセッションは、まずはその子が楽しめて安心出来る環境でなければなりません。

大人であるセラピストと二人きりの個室にいるのですから、それだけで緊張してしまったり、どうすれば良いか分からない子供もたくさんいます。アイスブレーカー的に、アートセラピストが「お互い、それぞれ自由に落書きしてみようか」「(切り抜きから)好きな画像を選んでみて」など、あえて大人と一対一で話さなくてはいけない状況から、5分でも10分でも、気を逸らすアクティビティを加えることで、緊張がほぐれリラックスしてセッションに臨めるようになります。

また、アート制作を通じて、自然と会話が生まれたり、純粋に制作に楽しく取り組めたりすることで、セッションに通うことが楽しみになります。

ちなみに、セラピーに通うことを子供に説明する際の注意点として、「セラピー」「カウンセリング」という専門的な言葉や、その子に『問題があるから』行く場所というようなニュアンスで説明するのではなく、「アートしながら色々な気持ちを自由に話せる特別な場所だよ」という感じの説明で話す方が、子供のセラピーへの抵抗が少なくて済みます。


⒉  言葉で話せなくても大丈夫

アートセラピーの、話すセラピーとの大きな違いは、アート制作や視覚情報を通じて気持ちのコミュニケーションが図れるという点です。描かれた絵の内容から、クライアントの好きなこと、興味のあること、その時の気持ちなど、様々なクライアント情報を発見出来ます。

子供のセラピーが難しい一番の理由は、本人が気持ちを上手く説明出来ないこと。

そのため、絵やアート制作中に現れた形を元に、その背景である制作者本人の動機や感情を読みといていくことが出来るアートセラピーは、言葉が上手く使えない子供たちの心(内面)にアプローチするのにとても効果的です。


⒊ 問題の体現化・外的化が出来る

アート制作は、クライアントの気持ちを表出する手段、そして出来上がりのアート作品は、その気持ちが手にとって触れる、見ることが出来る存在に。そのため、心の中にあったモヤモヤや、なかなか話せずに自分の中に留まっていた気持ちが、自分の外に出た感覚、自分から切り離すことが出来ます。

辛い気持ちや葛藤、体験などが、アートという安全な表現媒体に表せることで、気持ちの整理がしやすくなります。

例えば、トラウマケアや難しい気持ちを抱えている子供の心のケアの場合、1)実際にどのようなことが起きて、2)自分がどのような反応を起こして、3)その結果、どのような気持ちが湧いているのか。

この1)から3)の一連の流れが、頭で説明を付けることが出来た時に、初めて感情の整理や処理が可能になります。

アートセラピーでは、本来であれば言葉を用いて行うこれらの情報の認知や状況の整理が、アート制作という安心して取り組める表現媒体を通じて、セラピストと一緒に行うことが出来ます。そのため、子供にも安心して活用してもらえるのです。


⒋  身体の様々な感覚を使うこと

アートセラピーには、身体を使った動作が必要になってきます。絵を一つ描くにしても、鉛筆を握ることはもちろん、強弱をつけてストロークをしたり、色を選んでみたり。体の様々な機能を使いながらの作業となります。

トラウマを抱える子や不安が強い子など、体を使った感覚というのは、気持ちを落ち着ける要素を持ちます。体感を感じることが、グラウンディングに繋がり、意識(マインド)が体(ボディ)から切り離された制御不能な状態になりにくいのです。

また、自閉症スペクトラム障害の子供は、視覚情報を受け入れやすい、という傾向がある子が多いそうです。そのため、アート作品を見ながらのセッションは、状況を説明しやすいという効果もあります。また、意識(マインド)と体(ボディ)の繋がりが上手く行かない、という症状を持つ子供も多いことが指摘されています。そのため、体を動かす作業と、考える作業を同時に練習できるアート制作というのは、両者のコーディネーションを促進する側面もあるのです。


⒌ 形に残ること

アートセラピーのセッションで制作したものは、アート作品として形に残ります。それは、自分の気持ちを体現した存在として、何かしらの愛着を持つ存在に。

子供のアートセラピーの場合、セラピストと一緒に取り組んだアート作品が、セラピストとの楽しい時間の思い出となることも、気持ちにしっかり向き合った戦利品のようになることも。

また、一時間しっかり向き合った絵画だったり工作だったりは、制作者にとって大きな意味を持ちます。そして、アートはそれを見た第三者が一緒に感動を分かち合える機会を与えてくれます。

子供の場合、お母さんお父さん、保護者、だれか大切な人に、自分の存在を見てもらえることに大きな喜びを感じます。出来上がりのアート制作を彼らに見せ、何かしらのコメントをもらえることは、子供の気持ちに安心感であったり達成感、肯定感を感じることにも繋がります。


まとめ

もちろん、アートセラピーと一言で言っても、クライアントの抱えている問題や状況、様々な条件の元、アートセラピーにも多種多様なアプローチがあり、上記に当てはまらないケースもあります。

しかし、アートセラピーが子供に向いている大きな理由というのは、アート制作が子供達にとって体を使った身近で楽しい存在であるということ。そして、出来上がりの作品には、大きな意味やメッセージが込められていること。

これらの要因があるため、アートセラピーは子供にとってとても楽しいセラピー形態なのです。

参考:

Durrani. H. (2019). A case for art therapy as a treatment for autism spectrum disorder. Art Therapy: Journal of the American Art Therapy Association, 36(2) pp.103-106.

Hass-Cohen. N., & Carr. R. (2008). Art therapy and clinical neuroscience. Jessica Kingsley Publishers. Philadelphia: PA

Malchiodi, C.A. (2007). The art therapy sourcebook. The McGraw-Hill. New York; NY.

Rubin, J.A. (2005). Child art therapy. John Wiley & Sons, Inc. Hoboken;NJ.

Siegel, D. & Payne Bryson, T. (2012). The whole brain child: 12 Revolutionary Strategies to Nurture Your Child's Developing Mind. Random House, Inc. New York: NY.

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