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第53回 長野県長野市で東郷青児
ルノアールを筆頭に、モネ、ゴッホ、シャガール・・・と、
街を歩いていると、時に、美術界の巨匠たちと同じ名前のお店に出くわします。
果たして、それらのお店と巨匠との間に関係はあるのか??
気になるようで気にならない。
でも、気にしてしまったら、気になって仕方がない。
そんな疑問を解消すべく、アートテラーは今日も店へと赴く!!
先日、善光寺のほど近くにある老舗ホテル、
THE SAIHOKUKAN HOTEL(長野ホテル犀北館)に宿泊しました。
実はこちらのホテルは、江戸時代から続くほどの歴史があるそうで、
過去には、夏目漱石や川端康成、昭和天皇や平成天皇も泊まったことがあるのだそう。
また、芸術家も多く、泊まっていたようで、
高村光雲や岡本太郎、東山魁夷といった巨匠たちも、
こちらのホテルに泊まったことがあるのだとか。
洋画家の中川紀元も、犀北館を定宿にしていたそうで、
その縁もあって、1階のロビーには、中川紀元の作品が飾ってありました。
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さらに、中川紀元の作品は2階のロビーにも。
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と、館内にある中川紀元の作品を巡っていたところ、
中川紀元の作品に食いつく宿泊客がよほど珍しかったのでしょう、
ホテルのスタッフさんが「1階のBar SEIJIにも作品がありますよ」と声を掛けてくれました。
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チェックインを済ませて間もなくだったのですが、せっかくの機会なので、バーの中に入ってみることに。
すると、バーカウンターの後ろの壁に、ひと際立派な中川紀元作品が飾ってありました。
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と、バーカウンター内の中川紀元作品を撮影していたところ、
やはり中川紀元の作品に食いつく客がよほど珍しかったのでしょう、
バーのスタッフさんが「東郷青児の作品もありますよ」と声を掛けてくれました。
・・・・・ん?東郷青児??
あれ?つい最近、その名を耳にしたような・・・・・あ!!
「あの、もしかして、店名の『SEIJI』って、
東郷青児の名前から付けられたんですか?」
「はい、そのように聞いております」
そんな店名の由来となった東郷青児作品がこちら↓
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東郷青児が32歳の時に制作されたもので、
彼の画家人生の中で最初で最後のステンドグラスなのだとか。
そんな貴重な作品だけに、ホテルのロゴにも採用されています。
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ちなみに。
館内着にもワンポイントで刺繍されていました。
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ところで。
ホテルの歴史を紹介する年表によると、
「洋画家中川紀元が同道した、東郷青児画伯によるステンドグラスが制作」とありました。
つまり、中川紀元が東郷を連れてこなければ、
このステンドグラスは生まれていなかったかもしれないわけです。
であるならば、ロビーにも作品を多く飾ってあることですし、
バーの名前は『SEIJI』でなく、『KIGEN』にしてあげてもよかったような。
そうでなければ、中川紀元がかわいそう。
このホテルくらいしか、中川紀元がフィーチャーされる場所はないのに(←?)!
・・・・・・・・などと勝手に同情していたのですが。
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ホテル内の日本料理店の名前に、
ちゃんと彼の名前が使われていました。
その名も、紀元茶寮。
さすが中川紀元をフィーチャーする唯一の場所だけあります。
<お店情報>
Bar SEIJI
住所:長野県長野市県町528-1 THE SAIHOKUKAN HOTEL(長野ホテル犀北館)1F
定休日:無休
営業時間:10:00~21:00