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倉俣史朗のデザイン――記憶のなかの小宇宙

先日、富山県に所用があり、その足で、日頃より特にお世話になっている富山県美術館にも立ち寄りました。

その時に、ちょうど開催されていたのが、“倉俣史朗のデザイン――記憶のなかの小宇宙”という展覧会です。

1991年に56歳で早逝した伝説のインテリアデザイナー、
倉俣史朗の国内では実に10年ぶりとなる大規模回顧展です。
先日まで、世田谷美術館で開催されており、
死後30年経っても全然古びていない、いや、それどころか、
今の眼で観ても、十分新鮮に感じるプロダクトの数々に感銘を受けたばかり。

なので、巡回先のこちらでは、

サラッと観るくらいにとどめようかしら。

そのようなことを、富山県美術館の皆様にお伝えすると、
「いやいや、ウチの展示はセタビさんのとはまた一味違うんで♪」

と、口を揃えて返されました。


「ん?でも、出展作品は一緒ですよね?」


「一部、出展されていない作品があったり、逆に、ウチにしか出ていない作品もありますが、基本的には、セタビでの倉俣展と出展作品は変わらないです」


「えー、じゃあ、そこまで違いはなくないですかー?」


「まぁまぁ、会場に行ってのお楽しみ、ということで♪」


そう皆様に見送られた後、半信半疑で会場に訪れたところ・・・・・


わ!これはスゴい!!


美術館の皆様が自慢げ(?)だったのが、よくわかりました。

セタビでの倉俣展ももちろん素敵だったのですが、さすが倉俣史朗の椅子を7脚も所蔵しているだけあって、
かつ、『アート&デザイン』とデザインにも力を入れている美術館だけあって、

(注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。)

展示により気合が入っている印象を受けました。

なお、展示デザインも富山県美術館のオリジナルver.となっており。

日本庭園の枯山水を思わせるスペースに、

倉俣のプロダクトの数々が並べられていました。

セタビで鑑賞した際には、そこまで倉俣作品に“和”を感じなかったのですが。

こうしたスタイルで展示されてみると、禅のような、わびさびのようなものが感じ取れました。


なお、この床に敷き詰められていたのは、何らかの印刷物を裁断したものと思われます。

ちなみに。
展覧会のハイライトはやはり、
倉俣の代表作中の代表作《ミス・ブランチ》。
セタビの時と同じく、国内にある3脚の《ミス・ブランチ》が集結しています。
こちらももちろん、展示スタイルは富山県美のオリジナルver.でした。

3脚の《ミス・ブランチ》の周囲を、

これまでの展覧会では観たこと無い素材の何やらが囲んでいます。

金属製のミカンのネット??

フワッと軽やかな印象ながらも、

レースや布とは違って、結界感(?)があるといいましょうか。

内部に気軽に入ってはいけないような感じが醸し出されていました。

が、しかし、実際は内部に入ることは可能です。

出来る限り近づいて、心行くまで《ミス・ブランチ》を鑑賞することができます。

巡回展とはいえ、会場が変わると、こうも違う印象になるのか!

展覧会の面白さを改めて感じることができました。

セタビですでに観た倉俣ファンの方も、

富山県美術館をわざわざ訪れる甲斐はありますよ。

⭐️⭐️

なお、セタビの倉俣展同様に、

展覧会のラストでは、倉俣の蔵書やレコード、

倉俣が1980年頃から記録していたという夢日記の一部が紹介されています。

それら夢で見た光景を描いたスケッチの中に、
無数のチューリップで室内が埋め尽くされたものがありました。

そのスケッチが描かれたのが、1987年。

で、その翌年に描かれたのが、

こちらの《ミス・ブランチ》のイメージスケッチ。

もしかしたら、夢で見た光景が、

《ミス・ブランチ》のアイディアの素になっていたのかも。

夢日記、描き続けてみるものですね。


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