展覧会『交差する物語』日本とフランス2人の写真家が映し出す市井(しせい)の人々の美しさ
こんにちは、アーツトンネルの高木です。田川市美術館で開催中の本橋成一とロベール・ドアノー 交差する物語(福岡展)に行ってきました。
二人の写真家、本橋成一とロベール・ドアノー
田川市美術館で開催中のこの展覧会では、生まれた時代や地域が異なる二人の写真家、本橋成一とロベール・ドアノー が、共通するテーマで撮影した作品を展示しています。
写真を通して二人が描き出した作品には、場所や時代は違えど、市井の人々の生活や喜びが映し出されていました。
本橋成一さんは、炭鉱や魚河岸、上野駅、サーカス、屠場など市井の人々をテーマにした作品を数多く残している写真家です。
本橋さんは、1965年に上野英信さんを訪ね、筑豊の炭鉱を撮影しました。
展覧会では、記録文学作家として、炭鉱労働者を文章で残し続けた上野英信さんとの交流の一部がテキストで展示されています。
「どこに軸足を置いて撮るのか」
上野さんの言葉を引用した本橋さんの言葉が印象に残りました。
共通のテーマ、交差する物語
ロベール・ドアノーの作品で最も印象に残ったのは、フランスの貧困街を撮影した写真でした。
ボロボロの家屋の前に立つ少女は、ボロボロの服を着て、こちらを見つめています。
しかし、その構図があまりにも完璧で、まるで映画のワンシーンのように見えました。
確かに現実を捉えた写真のはずが、あたかもフィクションのように感じてしまうほど、整っていて、まるでポスターのようでもありました。
ただ、写真がとらえる対象は労働者やパリの人々であり、ロベール・ドアノーも本橋さんと同様に、市井の人々をテーマにしています。
市井の人々の喜びや笑顔、生活が垣間見れる表情や働く姿。
アプローチは違えど、二人はそれらに美しさを感じ、作品として市井の人々をとらえていったのだと感じました。
社会変化と共に変わるart
artが市井の人々にスポットを当てるようになったのには、様々な影響があります。
資本主義や社会主義、戦争など、人々は社会状況や国の情勢に大きく揺さぶられてきました。
生きることの主体は、市井の一人ひとりの中にこそある。
多くのアーティストがそう気づいたように、僕も同じことを感じています。
市井の中にあるart
「生きていることは表現。みんな表現者なんだよ」
昔、イラストレーターであり画家でもある岩永ハナヱさんとそんな話をしました。この展覧会を観て、急にそのことを思い出しました。
市井の中にこそartがある。
僕はそう思っています。今回の展示「本橋成一とロベール・ドアノー『交差する物語』」を観て、そのことを再確認できました。
最後に、現在、アーツトンネルはアーツトンネルギャラリーで母里聖徳個展『鉄を生ける』を開催中です。会期は2024年1月14日(日)まで。
「本橋成一とロベール・ドアノー『交差する物語』」は2024年1月28日(日)まで田川市美術館で開催中ですので、ぜひ、合わせてお出かけください。