生きづらさを抱える子ども・若者とつくるミュージカルプロジェクト M6 MUSICAL ACT (NPO法人ヒューマンフェローシップ )
横浜は、異国情緒あふれる港町、みなとみらいのビル群の風景としてよく知られていますが、郊外にいくと古墳や宿場町といった旧跡があり、鉄道沿線に住宅が立ち並び、森や川、広々とした公園など自然が豊かで四季折々の風景があります。
YokohamArtLifeは、こうした横浜ならではの環境を生かして、アートプロジェクトを実施し、地域と共に芸術体験を深めていくことを試みました。その結果、予期せぬコロナウイルス禍のなかでも、各地で芸術と住民の出会いを生みだし、寄り合える居場所やそこで行われる芸術活動の大切さを地域と共有することができました。
このマガジンでは、すでに発行したYokohamArtLifeの「2019年度-2020年度 横浜市芸術創造特別支援事業リーディング・プログラム YokohamArtLife ヨコハマートライフ報告書」(PDF:28MB)から、実際の活動や仕組みづくりに協力してくださった学識者の言葉を抜粋して、ご紹介します。
2019-2020年度YAL(ヨコハマートライフ)採択プロジェクト「生きづらさを抱える子ども・若者とつくるミュージカルプロジェクト
M6 MUSICAL ACT 」(NPO法人ヒューマンフェローシップ)の取り組みをご紹介します。
未知なる経験の中で、自己表現の場を持ち、社会へつながるきっかけに
NPO法人ヒューマンフェローシップが行った『M6 MUSICAL ACT 』は、課題を抱えた若者たちとアーティストや地域をつないでいくことを目指すプロジェクトです。
不登校・ひきこもりなどの生きづらさを抱えた子ども・若者が、磯子区・Negishi M6で、プロのアーティストを講師に迎え、毎週2回、歌やダンスのレッスンを行って一つのミュージカル作品を作り上げ、その成果を大きな舞台で発表するという取り組みです。
19年度は磯子区にて、9月〜12月にワークショップ形式の練習を行い、12月21日に中区の新港中央広場、22日に磯子区LiveboxM6で『ジーザスクライスト スーパースター』の発表会を行いました。
発表風景(NIGHT SYNC YOKOHAMA):2019年撮影
20年度は、オンラインでの参加・見学も積極的に受け入れ、歌唱やダンスで参加したくない人には、映像制作や裏方の仕事で参加してもらうような仕組みも準備しました。12月19日にはブランチ南部市場にて『美女と野獣ハイライト版』を屋外上演。
発表風景(ブランチ南部市場):2020年撮影
生きづらさを感じる若者と子どもたちに、ミュージカル体験を通して社会との関わり方を再発見してもらうこと、そしてそういった人たちに対する理解者・支援者を増やし、彼らを支える地域形成を目指しています。
▼ 2019年度のプロジェクトのインタビュー
福祉に芸術を取り入れる
ヒューマンフェローシップは、設立当初から課題を抱えた若者たちの支援に取り組んできました。
その活動の中で、自分を表現することや人と関わることに苦手意識を持っている若者が、体を動かしたり歌を歌ったり、同じ課題や目的を持った他者と関わる事で、様々な発見や変化があるということに、若者自身が気づくようになる様子を見てきました。
そこで、「ミュージカルを発表する」という大きな目標を立て、そのために、参加する若者を中心に、レッスンする講師、支援する人たちといった関係者みんなが、コミュニケーションをとりながら一つのミュージカル作品を作り上げることを目指しました。
Musical ACT練習風景:2020年撮影
勉強や仕事ではない経験でつながり、価値観を互いに共有し、ときにぶつかり合い、ときに褒め合う芸術表現を通したコミュニケーションを介して、それぞれの価値ある経験が生まれる場づくりに取り組んでいます。
これからも、こうした若者に向けた福祉分野における芸術表現の活動をさらに広げて、アーティストにより深く関わってもらうことで、若者たちに実際の芸術作品制作の空気を味わってもらいたいと考えています。
そのために、アーティストの方との共通言語の獲得や目的の共有という課題を見据えながら、芸術と福祉の融合を目指して活動していきます。
NPO法人ヒューマンフェローシップの岩本真実さん、金伽耶さんへのインタビューを元に事務局で執筆しました。
ミュージカル参加者たちの声
ここからは、紙幅の都合で報告書に掲載できなかった、M6参加者の声の一部を抜粋して掲載します。
参加者の声①
私は、一昨年、昨年のミュージカルにより、作品作り、芸術の素晴らしさを学びました。また、たった一つの作品に対して数え切れない程の多くの方々が関わっていることも知りました。きっと1人欠けても大変なのだと思います。
一昨年の「ジーザス・クライスト」では、ほとんど台詞もなく、歌とダンスのみのパフォーマンスでした。初めてきく作品(タイトルのみ知っていた)で、戸惑いもありましたが、主に体調面が課題でした。[…]
その後もいろいろありましたが、今回は病気もせず無事に出ることができました。私は、自分に自信はないし、歌もダンスも演技も下手です。だけど、歌もダンスも演じることも人に負けないくらい大好きで、またやりたいなと思います。もしまた参加できる機会があったら、次はもっと成長して出たいです。
Musical ACT練習風景:2019年撮影
参加者の声②
ダンスは、いっぱい覚えることがあって最初は、ミュージカルに参加するか迷いました。だけど後になって自分でもミュージカルに参加したいという心情になりました。ミュージカルはやはりやってみないとわからないので自分の中でミュージカルに参加してみようと思う変化が生まれました。
本当に踊るのが苦手でなつこ先生にダンスを教えてもらって少しダンスが出来るようになりたい変化も生まれました。
参加者の声③
参加した当初は、最後まで参加出来ればよし、出来なくても休みが元に戻るといった程度の考えで、レクリエーションに参加したような気分でした。
参加して続けていくにつれ、楽しくなっていき、最後まで参加したいと強く思うようになり、見た人の感想も楽しみになってきました。
母もミュージカルに参加していた時期があったので見た後の感想を聞き、良ければ嬉しく、悪くてもどこが良くなかったということを聞くことで、次に活かそうと思えました。
Musical ACT練習風景:2020年撮影
▶『ヒューマンフェローシップ』の報告書は こちら (PDF:5MB)
YALが目指すゴールに向けてどのような歩みがあったのか、そして、各参加団体が自分たち自身の活動をどのように振り返っているのかは、以下の報告書に取りまとめていますので、ご覧いただければさいわいです。
▶すべての取り組みの報告書は、こちらから(ACYウェブサイト)