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「山に、生きる。」をかえりみる

2021年、アーティストのTOMONORI MURAOKA さんが、秩父郡小鹿野町河原沢にて製作した公演パフォーマンス、そして映像作品の名前が、「山に、生きる。」です。
2021年の製作当時、また2022年の展覧会「しいたけハウスがステージに変わる展(以下しいステ展)」において、まちとひととをつなぐ芸術プロジェクト Circleは、様々な側面から作品を紐解くストーリーを発信してきました。
そしてこの文章を書いている2024年現在、Circleは「あの夏、河原沢の山の中で。」と題して、東京都中野区の古民家でアートイベントを実施します。
「山に、生きる。」の映像上映を始め、パフォーマンスやトーク、絵画や造形の展示など様々な作品をご覧いただけます。

2024年の今、なぜ再び、「山に、生きる。」か?


「山に、生きる。」の製作は、当時東京を拠点に活動していたアクロバット・パフォーマーのMURAOKAさんが、10年来の「夢だった」というシルク・ドゥ・ソレイユへの出演オファーが、Covid-19の影響でキャンセルになってしまったことに起因します。
企画の始まった2020年当時は、芸術やエンターテイメントの世界をはじめ、誰もがなかなか人と繋がりを持てず、お金の見通しもたたず、苦しい時間だったかと思います。この文章を書いている私も、東京オリンピックがこれから始まる、という時期に、段々と異変が始まり、そしていつの間にか世界が変わってしまったのを覚えています。

あれから数年。

2024年現在、みなさんの生活は、どのように変わったでしょうか?


大きなイベントがやっと再開でき、人と触れ合い、夏でもマスクで息苦しければ外すことができる。あの全てが止まってしまっていた、「辛い時期」は終わったんだ、という考えもできると思います。

でも、なかなかそう単純ではありません。
円安が進み、物価が上がり、海外での戦争はまだ終わらず、外国に行くのは時間・金銭の面で難しくなり、気候変動で夏は暑く、将来を担う子供達の数が減っている。そもそもCovid-19はまだ猛威をふるっています。
人間の世界の運命なのか、悩みのタネはつきません。

でも。

悩みが消えないのであれば、その反対の発想として、悩ましい世界の中で、希望になり得るもののかけらを見つけ、それを育てていくことはできないだろうか?

「山に、生きる。」と「しいステ展」を終えた2022年12月、私はセゾン文化財団が主催する、「U35フォーラム」に参加し、同世代のアートに携わる人たちと、舞台芸術のこれまでとこれからについてディスカッションをしました。
(フォーラムの概要や内容詳細については下記のURL、13ページからを参照)
https://www.saison.or.jp/wordpress/wp-content/uploads/2023/08/viewpoint_vol.101.pdf
様々な問題提起がありましたが、「演劇だと、今までスタジオに行って読み合わせをしていたけれども、Zoomでの読み合わせができるようになった。稽古の過程において時間の柔軟性やひろがりが生まれた。」「今動画サイトなどの影響で、タイムパフォーマンスが娯楽にも要求される中、敢えて舞台芸術を見るときのリズムやテンポが、次の時代には求められてくると思う。」など、ポジティブな意見も話題に上がっていたのが印象に残っています。

さて、そのような視点で「山に、生きる。」を見てみましょう。


MURAOKAさんのシルク・ドゥ・ソレイユへの進路が止まってしまった2021年。河原沢の山や川、のどかな里山の風景、住民の方の朗らかで知恵ある暮らしは、都会の生活と違った視点をMURAOKAさんに与えてくれました。今までのまま、商業舞台に携わっていたら、きっと気づかなかった視点だったと思います。
創ることは嬉しいことだ、と改めて気づけたのも、しいたけハウスにステージを作るという着想を得て、みなさんの色々な形での協力のもと、自分の思い描く姿を形にしていこうとする経験があったからこそだと思います。
私自身、企画が始まるまでは、小鹿野町河原沢のことを何も知りませんでした。でもMURAOKAさんのこの作品は絶対に作られるに値するのだ、という信念があったからこそ、応援してくださったみなさまと作品を少しでも繋げられたし、また小鹿野町が地元(群馬県安中市)の生活風景に似てる、と親近感を覚えたり、また小鹿野に住む人々と実際に知り合うことができました。ご縁がまだ続いていることに、本当に感謝します。

これを読んでくださっているみなさんにも、それぞれに「あの時」「今」に対する時代感があるかと思います。

それを反芻しながら、Covid-19にまつわる束縛が解かれた今だからこそ、また改めて、「山に、生きる。」を見てみませんか。
そして、そこで得た気持ちについて、会場で見られる出演者の身体や絵画、造形と重ねたり、違いを見つけたりしてみませんか。

2024年9月14日、会場でお会いすることをお待ちすると同時に、今後もnoteで様々なお話をシェアすることを予定しています。楽しんでいただけましたら幸いです。

まちとひととをつなぐ芸術プロジェクト CIrcle 
制作部 惡澤仁美

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アートイベント「あの夏、河原沢の山の中で。」

美しい自然と古き良き暮らしにインスパイアされ、創作された作品をお届けするアートイベントを開催!映像作品の上映、パフォーマンス、トーク、作品展示、グッズ販売など、多くの催しをお楽しみいただけます。
会場は東京都中野区の住宅街に、突如現れる古民家「くまから洞」。手作りの暖かさ溢れる会場にて、どこか懐かしい、素敵なひとときをお過ごしください。

【イベント概要】

日時:
2024年9月14日(土)①11:30 ②14:30 ③16:30
*イベント時間 1時間程度の入替制です。
*受付開始・開場はともにイベント開始の30分前となります。

会場:
古民家「くまから洞」( 東京都中野区野方6-40-19)
西武新宿線「野方駅」北口および「野方駅」北口バス停から徒歩5分

入場料金:
一般 ¥1,500
中学生以下 ¥1,000
(前売・当日精算。当日券は各+500円。乳幼児の膝上鑑賞は無料。)

【前売券ご予約】
Google formにてご予約をお願いします。
https://forms.gle/5d1mGU3bDP5aGZuR9

【物販】
CIrcle 新デザインのTシャツ、キャップを販売いたします(デザインは近日公開)。また、既に販売中のTシャツ、缶バッジ(緑のみ)、ショッパー(手提げ袋)もお求めいただけます。
2024/7/14に公開予定のチケットお申込みフォーム内でのご予約をいただいた場合、イベント当日会場にて直ぐのお受け渡しが可能です。ぜひこの機会にご活用ください。

【お問い合わせ】
まちとひととをつなぐ芸術プロジェクト Circle   (担当:惡澤/アクザワ)    
〒177-0051 東京都練馬区関町北2-22-15-401  
TEL:050-5359-1554    
MAIL:artprojectcircle@gmail.com 
WEB:https://circle.je-tokyo.com/

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文責:惡澤仁美
「まちとひととをつなぐ芸術プロジェクト Circle」の制作/コーディネーター担当。
舞台を中心に、エンターテイメントとアートのジャンル分けを超えた創作を伝える役割を担います。
時にプロデューサー、時に当日運営、時に広報、時に進行管理。作品研究の役割も。
青山学院大学英米文学科卒。

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