離婚物語1 決断の朝

目覚まし時計がけたたましく鳴り響く。いつもなら無意識に手を伸ばして止めるのだけれど、今日はただ布団の中でじっとその音を聞き続けた。カーテンの隙間から薄暗い朝の光が差し込んでいる。新しい一日が始まるのを告げているはずなのに、私の心はまるで鉛のように重かった。

隣で眠る悠斗の寝息が、静かに部屋の中に響いている。彼の寝顔を横目でちらりと見ながら、私は何度も心の中で繰り返してきた言葉を思い出す。

「もう限界かもしれない…」

私たちが結婚して、もう7年が経つ。娘の美奈は4歳になり、ますますおしゃまな女の子に成長している。振り返ってみれば、最初の頃は本当に幸せだった。恋に落ち、結婚し、子供が生まれ、家族としての生活がスタートした。すべてが順調だった。でも、気づけば、私の心には少しずつ深い隙間ができ始めていた。

いつの間にか、悠斗は仕事に追われる毎日を送り、家に帰るとすぐにソファに座ってスマホをいじり始める。会話なんて、ほとんどなかった。私が話しかけても、彼の返事は生返事ばかり。まるで私の存在が透明人間にでもなったかのような気分になる。

もちろん、私も育児と家事に追われている。それでも、夫婦としてのつながりを感じたい、支え合いたいと何度も思った。でも、悠斗は「仕事が大変なんだから」と一言で片づけてしまう。それ以上の会話はもう望めなかった。

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