運命の出会い


初めて彼と出会ったのは、友人の紹介だった。彼の笑顔が印象的で、温かい人柄が感じられた。仕事の話をしたり、趣味の話をしたりして、会話が途切れることはなかった。彼の言葉に引き込まれ、心のどこかで「この人と一緒にいたい」と感じていた。

デートが重なるうちに、彼に対する気持ちは深まっていった。映画を見たり、美味しいものを食べたり、毎回のデートが楽しくて仕方なかった。彼といると、笑顔が絶えず、どれだけ忙しくても心が満たされていくのを感じた。あの日、小さなバーで深夜まで話し込んだことを思い出す。その瞬間が、私たちの関係の始まりだった。

彼がプロポーズしてくれたとき、嬉しさとともに感謝の気持ちが溢れた。「これからずっと一緒にいられるんだ」と思った瞬間、心が温かくなった。夢のような未来が待っていると信じていた。私たちは幸せで、まさに結婚生活が始まった。

子供と新たな責任

結婚して一年が経った頃、妊娠の知らせが舞い込んできた。お腹の中の命に心が躍る一方で、母親としての責任感が重くのしかかってきた。美奈が生まれた瞬間、全てが一変した。新たな命が誕生し、私たちの家族が形を成した瞬間だった。

美奈は愛おしく、彼との関係がさらに深まったと感じた。しかし、子育ては思った以上に大変で、特に最初の数ヶ月は寝不足と疲労が続いた。私一人で育児を抱え込んでいる感覚が強く、夫との会話は次第に減っていった。美奈のことばかり話題にしている自分がいた。

育児を通して彼が仕事に忙殺されていることも理解していたが、それでも「もっと一緒にいてほしい」と思う自分がいた。彼が帰ってくるのは遅く、会話の時間もほとんどなかった。夜、二人で過ごす時間は子供の世話が優先され、いつしか私たちの会話は表面的なものばかりになった。

「今日は美奈がよく寝てくれたね」「そうだね、よかった」

そんな淡々とした会話が続き、心の奥で寂しさが募っていった。結婚当初の夢が、次第に現実の忙しさに飲み込まれていくのを感じていた。

すれ違う心

美奈が幼稚園に入るころ、私たちの関係には明らかな亀裂が入っていた。彼は仕事が忙しく、帰宅が遅くなることが多かった。私も家事と育児に追われ、心に余裕がなくなっていた。やがて、私たちの間には言葉が失われていった。

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