【北海道開拓の思い出】#30 兄の結婚
兄が兵隊から帰ってきてお嫁さんが決まり、家でも明るい話が出始めた。何もない時代だけれど、我が家でもできるだけのことをと思ったのだろう。まずお膳を20組とお椀もそろえて注文した。お膳の裏に窪野という名も漆で書いてもらった。結婚式のお料理は今まで飯場のご飯炊きをしていたご夫婦の谷脇さんにお願いすることになった。谷脇さんは若い時は連絡船のコックをやっていたという人で、プロのコックさんだ。私は初めて見る懐石料理のお手伝いをさせてもらった。
もう何日かしたら兄のお嫁さんが我が家に来ると云う日、父が母姉私妹を父の前に正座させた。父も正座して大事な話だからよく聞きなさいと云った。「今度兄に嫁さんが決まって、いついつの日に結婚式をやる。この窪野にとっては一番大事な人だ。色々なことを教えたり話し合って、仲良く暮らすように」。私達も窪野にとっては一番大事な人なんだと思った。
いよいよ兄の結婚式。昔はみんな我が家でやるのが当たり前。八田鉱山の村上部長さんの仲人で盛大な結婚式をやった。
70年も昔のことはなかなか思い出せませんが、みんなが幸せに暮らせることは、私にとっても何よりの幸せです。ご一読いただきありがとうございました。