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11/25~11/29の振り返りと来週の展望,10年債利回りは4.180%まで低下,株式市場では短期的にリスクオンの下地が整った印象、後はFOMC次第かと。

現在のマーケットを少し俯瞰的に見た印象ですが、株式市場は11月FOMC議事要旨にあったように『利下げを急ぐ必要は無い』という意見に対する支持者が多かったですが、12月の利下げを見送るほど経済が巡航軌道から外れていないという判断もあったのではと思います。現在FEDwatchツール上では12月FOMC時に25bp利下げをすると見ている投資家が約66%を占めており、マーケットはFEDが一旦4.25~4.5%に政策金利を下げてから再精査を図る方向ではないかと見ている方が多そうです。

直近FedWatchツール上 利下げ織り込み状況

また今週は大型テック系から資金が抜けNvidiaは週間で-7.5%と突出して売られておりました。この売りを理解できない方も多いかと思いますので補足しますと、資金をシフトしようとしている投資家にとって現在Nvidiaを含めた大型テック株は出来高も多いので格好の的になりやすいです。これはファンダメンタルズに問題があって売られているのではなく、相場転換期を狙っていた投資家さん達がNvidia好決算後の買いが集まると見るや売り浴びせてきている需給バランスを狙った動きがあると個人的に思っております。

反対に言えば一旦この資金シフト先の背景が変われば(マクロ環境すなわちトランプ政権の方向性が見えて来る)またNvidiaに資金が集まってくる事も十分に考えられる為、ご自身の時間軸をしっかり確認された上でポジションを形成されるのがよろしいかと存じます。

債券市場ではCoupon(金利)に対する魅力とトランプ政権の政策の方向性の不透明感などから債券が買われる動きが進み、利回りは2年債で週間15bpの下落、10年債で週間16bpも下落しました。

市場に安心材料とされる財務長官人事も発表されました。
新たな財務長官に指名されたScott Bessent氏に対する市場の期待は高く、上院で可決されれば世界最大の政府債務市場が適切に機能するようにすること、そして国の債務返済コストが高騰しないような財政政策を追求することが求められてまいります。

Bessent氏は、財務省市場にかかる圧力、特に米国政府の債務の急増に対処する必要があります。Bessent氏単独では米国の財政政策を持続可能な軌道には乗せられませんが、税金や歳出の決定権はなくとも重要な役割を果たしておられます。

財政の無計画さが債務返済コストを増加させることを指摘し、歳入を増やし支出を抑制する具体的な策を提案することが重要です。また、課税ベースを拡大し、すべての人が公平に税金を支払う方法を模索することも必要です。

さらに、輸入関税の引き上げが歳入増加にどの程度貢献するか、そしてそれが経済成長、インフレ、生産性にどのような影響を与えるかを現実的に評価することが求められます。

最終的に、FRBの金融政策の独立性を支持することは重要です。
市場が行政府によるFRBへの過剰な国債発行の吸収を懸念するようになれば、インフレリスクをカバーするために国債の利回りが上昇することが求められるでしょう。

Scott Bessent氏 President-elect Donald Trump’s nominee for US Treasury Secretary

この様な背景からも債券市場は需給バランスが以前よりも取られやすくなると考える方が自然で、AI特需に沸いていた株式市場から一旦資金がシフトする背景にもなるかと思います。WSJの寄稿記事でもモルガンスタンレーの方が以下の様に述べておりましたので転載いたします。

『現在の米10年債利回りの水準は、債券投資家にとって魅力的な投資機会となる、とモルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメントのジム・キャロン氏がポッドキャストで語っている。
「米10年国債利回りは3.9%から4.6%の間で変動し続けるだろう。 これは、株式ポートフォリオの安定的な保護を債券に依存している投資家にとって、特に魅力的なエントリー・ポイントである』、と同氏は言う。


経済指標(個人消費支出価格指数)

次に今週の経済指標を簡単に振り返ってみたいと思います。

米国の個人所得、可処分所得、個人消費支出(PCE)の推移を他のデータと比較することで、経済全体の動向をより深く理解できます。以下に、これらの指標の最近の動向と関連データをまとめました。

2024年6月~10月 個人所得、可処分所得、個人消費支出価格指数(PCE)の推移
上記数字をグラフ化

1. 個人所得と可処分所得の推移

2024年10月の個人所得(名目値)は前月比0.6%増加し、可処分所得も同じく0.7%増加しました。これは、堅調な賃金・給与の伸びを反映しています。

2. 個人消費支出(PCE)の推移

10月の現行ドルPCEの723億ドルの増加は、サービス支出の747億ドルの増加と、財への支出の23億ドルの減少を反映しています。
サービスの中では、医療(病院主導)と住宅が増加の主要な要因でした。
一方、財における減少は、ガソリンとその他のエネルギー商品(主にガソリンとその他の自動車燃料)が最も大きく影響しました。

3. PCE価格指数の動向

10月のPCE価格指数は前月比で0.2%上昇しました。
財の価格は0.1%下落し、サービスの価格は0.4%上昇しました。食品価格は0.1%未満で上昇し、エネルギー価格は0.1%減少しました。
食品とエネルギーを除外したPCE価格指数は0.3%上昇しました。

昨年の同月と比較して、10月のPCE価格指数は2.3%上昇しました。
財の価格は1.0%下落し、サービスの価格は3.9%上昇しました。
食品価格は1.0%上昇し、エネルギー価格は5.9%減少しました。
食品とエネルギーを除いたPCE価格指数は昨年より2.8%上昇しました。

個人消費支出価格指数(PCE)年率換算比較グラフ

4. 貯蓄率の推移

2024年9月の貯蓄率は4.6%で、前月の4.8%から0. 2ポイント低下しました。これは、個人消費の増加が個人所得の増加を上回ったためと考えられます。

5. 家計の純資産と資産効果

米国の家計部門の純資産は、2024年第2四半期時点で約154兆ドルとなり、前年同期比で7.5%増加しています。この純資産の増加は、個人消費を支える要因の一つとされています。

6. 労働市場の影響

堅調な個人消費は、タイトな労働市場と賃金上昇によって支えられています。しかし、インフレや高金利の影響もあり、今後の動向には注意が必要です。
これらのデータを総合すると、米国経済は個人所得と消費の増加によって支えられていますが、インフレや貯蓄率の低下などの要因も存在し、今後の経済動向を注視する必要があります。

まとめると10月のPCEはおおむね市場コンセンサス通りで目立ったサプライズは無し、コア指数の伸び率が加速した感がありますが医療と住宅関連が主な要因のようですので、こちらは大きく懸念するような材料ではないと思われます。
個人所得の伸びが名目値ですが前月比+0.6%、可処分所得でも+0.7%とここ数ヶ月で一番の伸びを示しております。米経済を支える大きな要素である個人所得が伸びている点は潜在的なGDPの下支えになるでしょう。

今週の株式市場の振り返り

今週は下記の週間パフォーマンスヒートマップを見ても分かるようにNvidiaから大きく資金が抜けておりました。
前記したとおり現在のNvidiaは大口投資家さん達の年末ポジション調整の標的になりやすい銘柄なので、ファンダメンタルズ関係なく売られますが一時の事象と捉えても良いかもしれません。

私自身はこの売りは真剣に考えても答えが出ないと思っておりますので、特に気にしておりませんがこれ以上進むかどうかは見ております。

11/22~11/29 SP500銘柄週間パフォーマンスヒートマップ

次に各指数の週間パフォーマンスチャート比較ですが

  • Russell2000 +2.91%

  • DJI +2.25%(29日場中で史上最高値を更新)

  • SP500 +1.31%(29日場中で史上最高値を更新)

  • NASDAQ100 +0.85%

  • NASDAQ総合 +1.21%

と主にTech系銘柄から資金が抜けて債券市場や仮想通貨市場、株式市場ではCyclical系銘柄やディフェンシブ銘柄にシフトしている傾向が見られます。

主要各指数週間パフォーマンス比較チャート

11月の月間パフォーマンスチャートで見ても明確に分かるレベルで

  • Russell2000 +9.31%

  • DJI +6.17%

  • SP500 +3.69%

  • NASDAQ総合 +3.44%

  • NASDAQ100 +2.73%

とRussellはNASDAQ100の3倍以上もパフォーマンスが伸びたのです。

主要指数 11月月間パフォーマンス比較チャート

来週から12月の年末相場に入る訳ですが現在の2年債、10年債利回りは以下のようなチャートになっており、2年債に関しては12月FOMCでの25bp利下げをほぼ織り込んだ形かと思われます。この地合いは株式市場にとっては都合がよく、特にRussell系小型株はまだ資金が流入してもおかしくない状況かと思います。

米2年債、10年債利回り週間チャート

こちらは今週25日から29日までのRussell1000 Growth(青チャート)対Value(赤チャート)を比較したものですが、Growthの方は大きく売られる事もある反面、Valueチャートの方はほとんどプラス圏で推移しているのがわかります。

Russell1000 Growth対Value比較チャート

このように今週はTechnology系セクターから抜けた資金が小型株(特にValue系銘柄)にシフトしていた事が分かると思います。この流れがこのまま続いて行くのか来週の経済指標等含めて見て行きたいと思います。

来週の経済指標

来週は12月FOMC前の雇用関係重要指標が多く発表されます。
その他にも多くの指標がありますので列挙してみたいと思います。

  • 12/3(火):ISM製造業景気指数(11月)予想47.5(前回46.5)

    • ISM製造業雇用指数(11月)前回 44.4

  • 12/4(水)JOLTS求人件数(10月)前回 7.443M

    • ADP非農業部門雇用者数(11月)前回 233K

    • サービス業購買部協会景気指数(11月)予想57.0(前回55.0)

    • マーケット総合PMI(11月))予想55.3(前回54.1)

  • 12/5(木)ISM非製造業景気指数(11月)予想55.0(前回56.0)

    • ISM非製造業雇用指数(11月)前回 53.0

    • ISM非製造業物価指数(11月)前回 58.1

    • ベージュブック(米国地区連銀経済報告)

  • 12/6(金)非農業部門雇用者数(11月)予想183K(前回12K)

    • 非農業部門民間雇用者数(11月)予想160K(前回-28K)

    • 11月平均時給(前月比)予想0.3%(前回0.4%)

    • 11月平均時給(前年比)前回 4.0%

    • 失業率 予想 4.1%(前回4.1%)

    • ミシガン大学期待インフレ率(12月)前回 2.6%

    • ミシガン大学消費者信頼感指数(12月)前回 71.8

とこのようにFOMC前の雇用関連指標や景気指数関連、ベージュブックやマーケット総合PMIの指標が発表されます。現在のところ12月FOMCは25bpの利下げを織り込む方向で推移している為、よほど大きなサプライズでもない限りはそのまま利下げの方向なのではないかと推測いたします。

来週決算を発表する主な企業

来週12/2~12/6に決算を発表する主な企業は以下になります。
CyberSecurity関連ではZscaler、Okta、Sentinelone
Software関連ではSalesforce、Synopsys、Marvell、Samsara、Uipathなど
注目はSalesforceでしょうか、その他にも多くの注目銘柄の決算があります

12/2~12/6 決算発表企業

来週の相場観見通し

これらをふまえて来週の相場観や見通しを述べてみたいと思います。
あくまで独自の視点や価値観で述べている点が多くありますので、他の識者の方と違う意見などあるやもしれませんがその点はご了承ください。

ThanksGivingday明け、Blackfriday~12月はホリデーシーズンであり、小売業界にとっても売上が最も伸びる時期です。
今年のホリデーシーズンは、賃金の上昇率がインフレ率を18ヶ月連続で上回り、家計の財務状況も全体的に健全であるため、消費者の心理は向上しています。これが近月の小売売上の増加に寄与しています。

コンファレンス・ボードのホリデー支出調査によると、アメリカの消費者はホリデーシーズンの買い物に平均1,063ドル(前年比7.9%増)を使うと見込まれています。

多くの小売業者は、今年の感謝祭からクリスマスまでの期間が短いことが逆風になると懸念していますが私は、多くの小売業者が早期の特価品やセールを提供し、在庫を最適化することで適切な対策を取っていると考えていますので各社とも売上は好調に推移するのではと予想しております。

これらの要素から短期的に小売り系はプラス方向の見通し、来年の決算でもこの数字が反映してくるものと見ております。

経済指標ではやはり雇用統計、12/18のFOMC時に25bpの利下げが行われるかどうかの一つの要因がここにあります。ここにきて利下げが行われないといったサプライズが起きると株式市場は大きく売られてしまう可能性が高い為、無難に通過する事を祈りたいと思います。

その為、雇用統計が発表されるまでは個別要因での動きが主で12月1周目の前半はやや軟調気味の相場であるものの、金利が大きく下がっている背景から小型株は引き続き強含みを予想いたします。

決算では3日のSalesforceが自社開発のAIアシスタント『Einstein Copilot』が対話型の支援によって自社ソフトウェアのサポートにどれだけ貢献できているか注目です。
【Marc Benioff CEOはそれまでMicrosoftの『Copilot』に対して複数回批判的なコメントを発しており、自社製品の優位性を強調してきた経緯があります。】

金利の動きに関しては引き続き注意が必要でトランプ政権の方向性が見えないままだと10年債利回りはさらに下がる可能性が高くなります。
これは必ずしも良い事ではなく、景気見通しが悪くなると懸念する投資家が増えて来るという裏返しですので、雇用統計でしっかりした数字が出て来ることを期待し債券が売られリスクオンモードに移行する事を期待したいところです。

個人的には引き続きテーマ株や小型株を中心にしたポートフォリオを維持、仮想通貨に対しても資金を移しこちらは中期~長期の目線で保有していく事を念頭に取引き所を選びました。

前回も書いた事ですが来年2025年の相場は今年の後半よりもさらに難しい相場になると予想しております。この理由の一つに特定銘柄に対して資金が集中してしまっている点のオーバーバリュエーションです。

満遍なく幅広い銘柄に資金が入るのと違って特定銘柄に集中してしまうと、それだけ値動きが粗くなり思わぬところで予想以上の下落に見舞われる可能性が高くなります。これが来年トランプさんの政策次第で銘柄の濃淡が浮き彫りになってくる点を少し警戒しております。

楽観に傾いている状態でも地に足を付けてしっかりと相場と向き合って行きたいと思います。最後までお読みいただきありがとうございました。
読者様やフォロワーさんにとって12月は良いパフォーマンスが出せる事を心よりお祈りしております。

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