未だ至らぬプシュケを追って INアラタケ

――頁を捲る音がする。
机の上には、球形に暖色の領域を広げる燭台の蝋燭数本。
傍らの安楽椅子に座る何者かが、組んでいた脚を解いて降ろした。
木造りの床の上、ゴトリと重たげな音を立てて革靴が落ちる。
何者かは、手にしていた本を閉じる。
机の上に質素な装丁の一冊を丁寧に置く。
その手は手首から先だけの石膏の手だ。宙に浮いている。
大きな真紅のひとつ目が、瞬きをする。
辺り一帯は仄暗い闇に包まれていた。
此処にいるのはお前達、そして俺だけだ。

???
「そう、俺だ」

???
「ようこそ、冒険者諸君。
 そうではない者もいるのか?
 ま、俺にとっては些末な事だ」

???
「客は……2人か」

???
「……、……」

???
「おっと失敬、1人だな。
 勘定を間違えることはよくある。うむ」

???
「……まだ喋るなよ。お前の台詞はまだ先にある」

語られざる語り部
「俺は、お前達と同行する"語られざる語り部"という。
 なに、端役どころか語り部だ。俺の存在は気にするな。
 なんせ、主役はお前なのだからな」

語られざる語り部
「そして、お前に添える端役は一人の蒐集家の男だ。
 存分に語らい、言葉を紡ぐといい」

語られざる語り部
「……お前は誰だ?と言いたげなツラだな。
 残念ながら本筋とは関係の無いことだ。
 突っ込んで話したいなら語らんでもないが、時間の無駄だぞ」

語られざる語り部
「――とにかく、だ。
 好きなだけ待ってやる。準備ができたら声を掛けるといい。
 まずはこの物語について、お前に合うか確かめた方が良いだろう」

語られざる語り部
「……それでは、また後程。
 といっても俺は他に行く所が無いんでな。
 ここでお前を見ているとも」

【Read Me】
【はじめに】
このクエストはテキスト量が多く、一文ごとのRPはお勧めしません。
初見時の時間配分の目安としてナレーションの区切りをお知らせするため、
RP推奨ポイントをマーキングしています。
▼△▼△▼△▼△
が一区切りの目印です。
これが表示された後に場面・話題転換が控えていることを念頭に、ナレーション送りとRPを行うことをお勧めします。
この目安は作者が想定したものであくまで推奨ですので、NPCの台詞や動作に合わせて自由にRPを行ってください。
また、クエストクリア後も再度遊べます。台詞や演出が一部変わるだけの違いですが、周回は気軽にどうぞ。
クリア後のオマケ要素も検討していますが、時間の都合上、暫くは予定止まりです。

【更新履歴】
2022.11.10 公開
2022.11.12
・ログ出力時に「何を選択したか」が読み手に伝わりやすいよう一部追記
・図らずも分岐のようなものが出来たのでED名の実装
【更新履歴】
2022.11.10 公開
2022.11.12
・ログ出力時に「何を選択したか」が読み手に伝わりやすいよう一部追記
・図らずも分岐のようなものが出来たのでED名の実装
【Read Me】
【雰囲気/傾向】
当クエストは読み物系、恐らく後味は良くないクエストです。
残酷/グロテスクな表現はありませんが、PCの設定によっては心情面への悪影響が予想されます。
IF扱い~PC設定に反映まで、都合の良い形での取り扱いをお願いいたします。
ただし、他のPCPLが望まない形の交流を持ちかけるきっかけにすることはお控えください。(一例:好みの分かれる、過剰に陰鬱な個人設定を用いたネタ振りなど)

宿の依頼をまともに受けられないほどでない限り、人間~人外/善人~悪人まで問題なく遊べるかと思います。食事描写など、人外は解釈違いが起きそうな要素は避けています。想定外の解釈違いがありましたらごめんなさい。

成分表(当社比)はこちら。
明るい|-------+--|暗い
ほのぼの|--------+-|シリアス
PCメイン|----+-----|NPCメイン

語られざる語り部
「……何だ?」
語られざる語り部
「運命は女神の姿をしとらん、と言ったら分かるか?」
語られざる語り部
「……冗談だ。わはは!
 なに、そんな大層なものではない。
 見た目はちょいとイカしちゃいるがな」
語られざる語り部
「悪魔だよ。ソロモンの使い走り共以下、ぽっと出の者だ。
 そこらの悪魔とはかけ離れているかもしれん。インドア派だ。
 態度だけはこの通りデカい。懐と同じくらいだな」

語られざる語り部
「……何だ?」
語られざる語り部
「不便はしとらん、遠隔操作できる右手があるからな。
 ぶん殴る時は左の歯をよく食い縛るように言い聞かせる。
 俺の愛の拳は石のように痛い。覚悟しておけ」
語られざる語り部
「……右手? ああ。
 俺は以前右利きだったのではないかと睨んでいる。
 左腕の感覚が無くてな」

語られざる語り部
「……何だ?」
語られざる語り部
「おう。サイコロだ。俺はギャンブルの神かもしれん」
語られざる語り部
「冗談だ」

語られざる語り部
「……何だ?」
語られざる語り部
「事象の隙間だよ。深く突っ込むと沼にドボンだ。
 あまり考えるな。俺も困る」
語られざる語り部
「……まあ、真面目な話をするなら、この世はすべて舞台という彼の人間の言葉はあながち間違いでもないといったところか」
語られざる語り部
「そら、お前の頭上にも見えるぞ」
語られざる語り部
「走るペン先、かたる口、紡ぐ詩歌、叩く指先が」

語られざる語り部
「準備は出来たか?」
では、かたり始めよう。

ある日、ある朝、あなたが宿の貼り紙を眺めていた時のこと――

ある日、ある朝、あなたが宿の貼り紙を眺めていた時のこと。
一枚の依頼書が目に入った。
教養のある者の手で描き綴られたものであろう、丁寧な筆跡はよく目立つ。
こういった字を書く依頼者は、冒険者への態度は様々であっても、往々にして羽振りがいいものだ。
他の冒険者たちに先を越されなかった幸運。
早起きだったか、直前に持ち込まれたばかりだったのか。
早速手を伸ばしたあなたに、カウンターの奥で皿を並べ直していたアルマが声を掛けた。
アルマ
「あら、ふふ。
 その依頼を出したお客様なら、うちの宿で部屋を取っているわよ」
わざわざ遠くまで話を聞きに行く必要も無いらしい。
事前の苦労も含めて、割の良い仕事のにおいがする。
少々都合が良すぎる気もするが。
彼女は微笑んだ。
アルマ
「昆虫採集が趣味なんですって。
 色々な虫を採集しているようなのだけれど、
 中でも珍しい蝶を集めているみたいで――」
???
「ええ、僕の依頼です。
 すみません、ミルクを一杯いいですか?」
靴音と共、二階から降りて来たのは身なりの良い老紳士だった。
濃紺のベストを着て、長旅用のマントを羽織っている。質素ながらも整った生成り色シャツとは裏腹に、重い音を立てるブーツと、マントの下に見え隠れする大小様々な鞄は、旅慣れた装いだ。
老年の男は、オールドグレイの髪を後ろへと撫でつけ、皺の刻まれた額を晒している。年月を感じはすれど、旅人然とした風貌からは老いよりも若々しさを匂わせる。
アラタケ : ふむ…
エーミール
「ゼーツィンクベルン地方の……
 ああっと、南の方から参りました。
 エーミールと申します。貴方のお名前は?」
彼はあなたに気が付くと、胸に手を当てて会釈をした。
人好きのする笑顔とはこういった面立ちのことだろうか。
グリーンの瞳が細まり、目尻に皺が寄る。
▼△▼△▼△▼△
アラタケ : ああ、自分はアラタケと申します
エーミール
「依頼の概要でしたら、今ここでご説明いたしますよ。
 いかがでしょう?」
アラタケ : そうですね…お願いしましょう
エーミール
「ここから南西へ、幾つか丘を越えた先にあるアリアヴェル領のことはご存知でしょうか? 一日もあれば境を越えられる。いえ、土地の気風というよりは……」
エーミール
「さらに数日はかかる領の片隅に、瘴気が溜まりやすい地帯がありまして。いつからか分かりませんが、ある時から突然に。
 私もその瘴気というものが何なのかはよく分かりませんが」
アラタケ : 瘴気…ですか
エーミール
「死者が蘇りやすい土地だとか。
 過去に何度か高名な聖職者の方が清めに向かっても、
 原因も分からず、死人が生者を襲い、ただ荒れる一方」
エーミール
「そのうち、一帯からは誰もいなくなってしまったようですね。
 当時の人々の混乱についての文献に目を通しました。
 数十年を掛け、ゆっくりと人の住まない土地となり……」
エーミール
「……なぜこの話をしたかというと、」
エーミール
「既にお察しかもしれませんが、この土地にだけ生息する蝶を捕まえたいのです。ですが、アンデッドのうろつく土地をこの老いぼれが身一つでは危険ですからね」
アラタケ : …蝶?
エーミール
「大丈夫です、これでも魔物に見付からないように身を隠す術くらいは身につけています。貴方に助力をお願いするのは、万が一の保険のためですね」
エーミール
「僕が帰れなくなった時には、貴方に息子への手紙を頼みたいと思っています。この話は追々」
エーミール
「……他の話をしましょうか」
エーミール
「依頼の概要でしたら、今ここでご説明いたしますよ。
 いかがでしょう?」
アラタケ : …その蝶とは一体?
エーミール
「危険な土地にだけ生息するなんて、ろくなもんじゃあありません。死体に群がり腐肉を啜る蝶、と聞いています。だからあのような土地に集まるのだとか」
エーミール
「しかし、だからこそまともな天敵がいないあの地域で華美な姿に変貌したとかで。鮮血の色に宵の紫紺が入り混じる、それはもう素晴らしい模様と艶やかな翅だとか……」
エーミール
「……おっと!」
エーミール
「申し訳ありません、趣味の話となると途端に熱が入ってしまうのでこの話は程々に……」
エーミール
「依頼の概要でしたら、今ここでご説明いたしますよ。
 いかがでしょう?」
アラタケ : ふむ…なぜそのような蝶を…?
エーミール
「数年前、妻が永い眠りに……ええ、まあ、そう暗い話としてお話しするつもりはありませんよ。当時落ち込んでいた私に、息子が趣味の標本を再開してみてはと声を掛けてくれたのです」
エーミール
「若い頃は遠方へ出かけては一心に虫網を振り回していたものでした。妻とはその旅先で出会い……僕たちの間で愛を育むきっかけをくれたのは、ある意味で彼ら虫とも言えますね」
エーミール
「……話が逸れてしまいました。とにもかくにも、こうして今も溌溂と旅をするくらい元気になりました。ええ。これから趣味のために危険な土地に向かおうとしているのですが」
エーミール
「依頼の概要でしたら、今ここでご説明いたしますよ。
 いかがでしょう?」
アラタケ : …なるほど、お話はわかりました
確認したいことはおよそ聞き終えただろう。
アルマの持ってきた湯気の立つカップも、話している間に依頼者の手元ですっかり空になっていた。
エーミール
「と、いう訳で。護衛とは書いていますが、労力は最低限で済むかと思います。大所帯で向かえば死者たちの気を引いてしまうでしょうし、冒険者お一人に同行をお願いしたい」
エーミール
「どうです、この依頼。
 引き受けていただけるでしょうか?」
アラタケ : ええ、お受けしましょう
エーミール
「良かった! それでは、よろしければ前金としてこちらをお受け取り下さい。少々長い道程ですから、貴方はしっかりと時間を取って旅支度を。特殊な地域ですから。出発は明日で構いません」
エーミール
「この街を中継地点にするついでに同行者を募るつもりだったのですが、こんなに早く見つかるとは。嗚呼、良かった……ありがとうございます、冒険者さん」
アラタケ : いえいえ、それが仕事ですから
依頼者は感激しながら報酬の半分は入った貨幣袋を引っ張り出した。
旅の間に稼いだのだろうか?
長旅をするのであれば、あまり大金を持ち歩くわけにもいかないはずだ。
あなたはそれを、

▼△▼△▼△▼△
受け取った。
これを元手に旅支度をしてもいいかもしれない。
戦わずに済むに越したことはないが、相手はアンデッドだ。
有効なものは幾らでも用意できる。
エーミール
「それでは、また明日。
 太陽が広場に射す時間に出発しましょう」
依頼者の嬉しそうな笑顔は、老年ながら若々しい。これから向かうのは死者の領地のはずだが、彼がいれば瘴気の方から避けてくれそうだ。
あなたは、市場の観光をしたいと宿を出て行く依頼者の背中を見送った。
アラタケ : ええ、明日はよろしくお願いします
――さて。明日に備えて旅支度をしなければ。
一番に何をしようか。

▼△▼△▼△▼△
あなたはアンデッド、空きっ腹、その他様々な敵に備えるために用意を始めた。まずは買い物からだ。

▼△▼△▼△▼△
明日から短い旅が待っているのだ。

あなたは、あなたなりのやり方で明日に備える。
▼△▼△▼△▼△
リーンを出て、それなりに時間が過ぎた。馬車に揺られてどれほど経ったか。
まずは同じ方向へと向かう荷馬車に運賃を渡して森を抜けることにした。
それなりに整備された街道ではあるが、依頼者は時間と体力を温存したいという。
アラタケ : …
「代わりに終点まで話し相手になって欲しい」と頼まれたのは、荷馬車に乗り込んでからだ。是非を答える隙が無い。そうして話し相手を得た依頼者は、時たま口を開いては、冒険者に小難しい言葉を投げる。
エーミール
「蝶。あなたはどう思います?
 外見に対してでも、イメージや概念にしても」
▼△▼△▼△▼△
アラタケ : 綺麗で好きですね
エーミール
「ふふ。貴方に頼んで良かった。
 僕は小さい頃からあの美しい模様に魅了されて、今日まで彼らを追い掛けてきました」
エーミール
「黒に浮かぶ鮮やかな青から、極彩色の目にも絢な玉虫色。
 毒々しく妖しげでありながら、目を離せないあの煌めき」
エーミール
「翼のあるものたちの中でも、あの泳ぐような羽搏きは少々変わっている。鳥たちのように一所へと一直線に飛んだり、風に乗るのではなく、彷徨うように宙を泳ぐ」
エーミール
「あてどない旅のようだ。
 何を探しているんでしょうね」
話の種を投げる依頼者の顔は好奇に輝き、冒険者との問答を楽しんでいるように見える。
アラタケ : あはは…貴方は相当お好きなようだ
エーミール
「ひとつ、僕からなんでもない話をさせてください。
 このことを知った時、なぜだか胸が弾むような気がしたんです。
 もしかしたら貴方も、と思って」
エーミール
「どの地域の伝承でしたか……プシュケという名の蝶の翅を持つ女性はご存知ですか?」
エーミール
「愛の神の妻、とされた娘です。苦難の果てに、愛と結ばれた蝶。
 サイキ……と発音することもあるそうですが。魂や心、精神という意味を持つ音ですね」
エーミール
「心が愛と結ばれる。心が愛を求める。
 よくあるお話です。
 しかし、蝶と心が同じ言葉で表されるのは興味深い」
エーミール
「遠い地域の言語においては、二音を逆さに読むことで蝶と魂、二つの意味を使い分けられるそうです。正に表裏一体というわけですね」
エーミール
「他にも、孤児や囚人たちが、蝶を描くことがあるそうで――」
エーミール
「ああ、はは……ただの噂ですよ。異なる場所の人々が、みな一様に同じ絵を描くのは……少々不気味だ」
エーミール
「色んな、遠く離れた場所で同じようなことが起き、言葉が生まれる。もしそれが本当だったとして、優雅に羽搏く姿は、鳥と同じで自由に見えるのかもしれません。自由な魂に」
エーミール
「そんな蝶を追った僕も、悲しみから解き放たれた。この生活は、とても自由に感じます。商売のために他人の足元と顔色を見て、いつ蹴落とされるか、蹴落とすかを考えない生活は」
エーミール
「ええ、自由です……」
エーミールは何処か遠い目をしていた。
視界を過ぎ行く木々は明るく照らされ、生い茂る自然の息吹が身に吹き付ける。これから死者の国を訪ねるようには思えない風景が広がっている。
アラタケ : …ふむ…(気にはなるが、深くは聞かないことにした
エーミール
「どうです?
 あなたも今、自由ですか?」
あなたは……

▼△▼△▼△▼△
アラタケ : 自分ですか?…そうですね、そりゃあ…
エーミール
「冒険者である貴方に聞くまでもありませんでしたね。
 我々とは異なる不自由さを抱えながらも、何処へでも行ける。
 貴方たちはそういうものだ」
エーミール
「……、……」
エーミール
「……どうやら、お喋りで疲れてしまったようです。下ろされる直前になったら、教えてもらえませんか」
アラタケ : ん?…ええ、わかりました
エーミール
「ありがとうございます。
 それでは、暫く……」
依頼者が脚を引き寄せて膝を抱える。
頭上を通り過ぎた太陽の擦り出す木漏れ日が、何度もその顔を白く消し飛ばしていく。
……まだ目的地まで時間がある。
荷馬車を降りてからも暫く歩くことについて考えながら、あなたは緑の海を眺めることにした。
アラタケ : …それなりに長い道のりになりそうだ
景色が過ぎ、木漏れ日が瞬き、時間が過ぎて行く……
荷馬車を捕まえたといっても、行く方角が近かったというだけだ。
目的地からはまだ遠い場所で、商人から降りるように声を掛けられる。
小さな集落で採れた野菜や果物と入れ替わりに、依頼者とあなたは降りた。
目の前には相変わらず長閑な光景が広がっている。
積み荷の上げ下ろしの音を背に聞きながら適当な雑貨屋へ立ち寄り、携帯食などの買い物を済ませると、目的の方角へと歩き出す。
アラタケ : …さて、ここからはほとんど歩きになりますか
暫く歩みを進める。
木々が疎らになり、小川のせせらぎが聞こえた。
水の音に沿って進むと、湖が眼前に広がった。
輝く水面からの反射に照らされ、二人で湖畔を回り込む。背の低い草葉を踏み分けていると、時折咲いている白い花が視界に入った。
小振りの花が連なり、咲いている場所だけ季節外れの雪化粧を施したようだ。
あなたは……

▼△▼△▼△▼△
アラタケ : ふむ…
あなたは花を踏み潰さぬようにと、足元に注意を向ける。
下を気にしていることに気付いた依頼者は、あなたの顔と足元を見比べてから微笑んだ。
エーミール
「お優しいんですね」
アラタケ : いい景色ですからね、足を踏み入れて荒らすのは少し忍びない…
草を踏み分ける音が続く。
水の流れる音が遠退く。
やがて、木々の少ない開けた場所を見付けた。
湖や小川から離れている分、獣と鉢合わせることも無いだろう。
アラタケ : ほう…
エーミール
「ここなら、火を起こせそうだ。
 僕が野営の準備をしておきます。あなたの仕事は護衛ですから、どうかお気になさらずに待っていてください」
半ば強引に追いやられたあなたは、これからの数日と食糧について思いを馳せる。
今のところ問題は無い。無いが、あなたは腐っても冒険者だ。
断られた準備と別の作業であれば、好きに力添えをしていいだろう。
アラタケ : …ふ、む
携帯食を節約できれば、何かと都合が良いはずだ。
動物を狩ったり、食べられる植物を探そう。

▼△▼△▼△▼△
アラタケ : いい場所だ…久しぶりに釣りでもしますか。
先程の湖で魚影が見えた。
目標値:12 <= 3d + 器用補正 + サバイバル
達成値:18([2,3,5]+8)
判定に成功しました
アラタケ : ふむ…
通りがかる魚の影を掬うようにして。
あなたの巧みな手管により水から上げられた魚が草地で跳ねている。
アラタケ : (趣味と実用の2つを満たすように釣りを楽しむ…)
アラタケ : …ん、良い感じだ
あなたが採って来たものを見て依頼者は目を丸くしたが、間もなく焚火の対面を促した。
アラタケ : (4,5匹ほど釣り終え…)
「身体を動かさないとやっていけませんもんね。
 いやはや、恐縮です。
 これで予期せぬ何かがあっても安心ですね」
アラタケ : ふふ、良い釣り場でしたよ
あなたが戻ってくると、依頼者は熾した焚火を前に手を温めていた。
刻まれた皺が明るい橙に擦り出され、濃い陰影でより一層の年月を感じさせる。
エーミール
「どうぞ、休んでください」
焚火に近付く。
温かな炎は、辺りを包み込む夜の帳を押し退け、なおも明るい。荷馬車に揺られていた時と打って変わって、依頼者は静かだ。炎を眺める老年の姿は、皺を色濃く描き出されて漸く年相応の姿に戻ったようだった。
……、……。
夜が更けていく。
アラタケ : …(釣った魚に塩を振り焼いていく…)
エーミール
「火の番は交代で。
 依頼主だからとお気遣いなく。
 貴方には万が一の戦闘をお願いするのですから」
アラタケ : …よろしいのですか?では…必要ならばいつでもお声がけください
細く撓る月が頭上を横切る。
今宵は下弦の月だ。
受け皿に真っ暗な夜空を湛える銀色。
風が吹き、二人で挟む篝火から火の粉が飛ぶ。
依頼者の瞳を、明るい橙が横切った。
……、……。
そうして、記憶にも残らないほどとりとめのない会話を数度重ねて、

朝を迎えた。
エーミール
「おはようございます。今日もよろしくお願いしますね」
アラタケ : おはようございます。ええ…お任せください
焚火の跡をしっかりと崩し、進路を目的地へと取った。
アラタケ : (しっかりと火種を残さず土や水で消し…)
野営を挟みながら、森と丘を越える。
穏やかな風景。他と変わらない長閑な光景。
点在する村と街の間を縫って進む。
依頼者は年齢を感じさせない。冒険者の足取りに難無くついて来る。
どれ程歩いただろうか。
領の境を越え、さらに数日。
冒険者たちは目的の場所に辿り着いた。
辺り一帯が、薄暗い。
アラタケ : …ここですか
死者の国、という表現で申し分ないだろう。
近付くにつれ、草木が枯れ、大地が異様な色に染まっていく。
"染まる"というよりは、"色を失くした"の方が正しいか。
立ち枯れた樹木も奇妙にねじ曲がり、灰色の空からは陽光が射さない。
国と言っても、極一部の地域で発生した異常な現象。こういった人の住めない地域は他にもあるらしいが……
アラタケ : …なるほど、文字通りですね
その道に秀でた人々の力をもってしても百年近くこのままということは、瘴気をばら撒く原因が何処か深くに埋まっているのではないだろうか。いつかこの地域を浚う力を人々が得られる日が来れば、冒険者の力を求められることがあるかもしれない。……それも、今の仕事には関係の無いことだが。
死人の膚のように涸れて罅割れた大地の上に、動物の骨が点々と転がっている。人間の骨が含まれていてもおかしくないが、風化が激しい。見分けるのは困難だ。
アラタケ : (…このような場所に本当に…蝶が生息している…?)
途中、ぽつねんと佇む崩れかけの墓石のような痕跡も見掛けた。
他にめぼしいものもなく、何者かが誰かひとりのために作ったものだったのかもしれない。近くには、朽ちて動かなくなった骨の塊が落ちていた。錆びた金属塊と共に。何であったか調べるには、やはり風化が激しい。
アラタケ : ……
アラタケ : (手を合わせる…もはや、その意味がある場所ですらないかもしれないが)
瘴気というものがこれだけの悪影響を及ぼすのなら、自分達も危ういのではないか。
そういった懸念は……
アラタケ : (…「あの地」の事もありますし想定はしてましたが…これは中々】
冒険者たるもの、己自身で対処する術は持ち合わせている。
聖なる加護、恩寵、己の技術、様々な形で。
アラタケ : (多少値段は張りましたが、加護付きのマントとアミュレットを用意しておいてよかった…)
老年は、乾いた大地を吹き抜ける冷たい風に煽られ、ばさばさと音を立てる外套を掻き集め、首元で押さえていた。
砂埃が入らぬよう細めた目は、目的となる地平の小さな凹凸を見据えている。
数十年以上前に放棄された街の跡だ。
エーミール
「もう少し……です。
 もう少し……
 あの廃墟の中に、大きな共同墓地が……」
アラタケ : …ええ、わかりました
エーミール
「そこで群れを成していると聞いています……
 真っ赤な、迸る血のような――……」
アラタケ : …エーミールさん?大丈夫ですか?
風が強くなってきた。
依頼者は口を外套の襟元で覆っている。
風の音と相まって、声が聞き取り辛い。
冒険者にとっては少し荒れた道を往くだけの感覚だが、やはり老年は老年だ。
アラタケは何も入力しませんでした。
あなたは……

▼△▼△▼△▼△
アラタケ : …
アラタケ : (依頼者の前に立ち…風避けになる)
歩幅を合わせ、依頼者の前に立って先導する。あなたが前に立つと、吹き付ける風は幾分か和らいだ。
あなたの背に、依頼者の視線と細い声が投げられる。
エーミール
「……ありがとう……」
アラタケ : …いえ、無理はせずに…
いた。
街に入るや否や、モノクロームの色彩に一点の紅が灯った。
アラタケ : …あれが
長い間 放置された建物は、石造りの原型だけを留めている。
死人の指のように黒く曲がった手指を伸ばし、並ぶ木々は辛うじてかつての並木の様相を見せていた。
その街路樹の成れの果てに、花が咲いている。
花ではない。
蝶だ。
アラタケ : …
街の中心へ向かえば向かうほど、視界を掠める紅色は増えて行く。
依頼者の言っていた通り、鮮烈な赤と、それを際立てる夜色の混じり合う翅が、人の呼吸とよく似たテンポで開かれては畳まれる。花が咲いては萎む。
白黒の世界に、点々と。
アラタケ : …すごいですね…本当に…
まだ進む。まだ視界の蝶は増える。
かつての路など残っていない。
崩れかけた遺跡を跨ぎ、更に奥へと向かおうとしたところで、あなたは背後から呼び止められた。
アラタケ : …どうかしましたか?
エーミール
「ここでもう、結構です。
 僕の目的は群れではなく、一羽の採集ですから」
アラタケ : …ああ、そうでしたね。
エーミール
「ほら、見て下さい。手の届くところにこんなにいます。
 ……どれかな」
貴方が振り返ると、半ば崩れた教会跡の中で壁を見上げる依頼者がいた。元々は壁画があったであろう壁には黒く変色した茨が這っている。その上に、蝶たちが葡萄の房にも似た密度でびっしりと身を寄せ合っている。壁を滴り落ちる血もかくやの、凄絶な光景。
アラタケ : …っ…(息を呑む)
依頼者は魅入られたように見上げている。
街に入ってからは荒野を吹き抜ける風が遮られ、抑えられていた。目の乾きを忘れて歓喜に見開いた碧眼が、赤い滴りに釘付けになっている。
伸ばした手が、骨張った指が、宙を掻く。
エーミール
「……、……!」
心配したあなたの声にか、あなたが蹴った石の音にか、はたまた珍しく吹き抜けた風の音で、か。依頼者はふと、あなたへと首を巡らせ、凍り付く。慌てて懐に手を伸ばし、捕虫網と道具一式を入れているのだという鞄を漁り始めた。
エーミール
「待ってください、待って、待ってくださいね、
 あああ、待って……」
アラタケ : …あの…?
彼の視線が己の背後を見ていたような気がして、あなたは背後を振り返る。そこには、一羽だけではぐれた蝶がいた。
群れに加わろうとしているのか、あなたの脇を擦り抜けていく。ふわふわと、宙を泳いで、
捕虫網が見事な軌道で蝶を捉えた。
アラタケ : …っと
エーミール
「は、……ッハ…………
 ぁ、はは……、やった……」
アラタケ : …お見事、これで目的は達成でしょうか
咄嗟に集中して気力を使い切ったのか、いつのまにか隣に来ていた依頼者は息を切らしている。捕虫網の中を傷つけぬよう、かつ逃がさぬようにしっかりと口を閉じる手は震えていた。
その様子を、壁に滴る蝶たちは音も無く見下ろしている。
エーミール
「あ、……ありがとう、ございました……
 これで、目的……達成……」
段々と落ち着き始めた呼吸。その場にへたり込みながら、依頼者は懐から小瓶を取り出す。
エーミール
「問題無いとは思いますが、僕が加工するまで見張りを頼んでもいいでしょうか……この付近でゾンビが見られたことはないそうですが」
アラタケ : …ええ、もちろんです ごゆっくり
エーミール
「お願いします……」
護衛のあなたに指示を出しながら、てきぱきと敷物を広げ、道具を地面に並べていく。風の吹かなくなった場所だからこそできることだ。細い針やいかにも繊細そうなガラス瓶がこの旅路で無事だったことは、驚きに値する。
アラタケ : …(どこまで本気だった…あのお歳で凄いですね…)
瓶をひとつ取り出すと、依頼者は捕虫網をそっと持ち上げ、瓶の口に添えた。中の蝶をその瓶の中へと追いやりたいらしい。鱗粉が落ちぬよう、できる限り網を広げて誘い込もうと必死だ。慎重な作業なのだろう、蟀谷に汗が滲む。
エーミール
「虫を――標本にする際、幾つかの手段があります」
エーミール
「蝶はやや特殊で、他と違って胸を圧して殺す事も出来る。
 他にも、揮発させた毒であったり、直接注射したり、色は損なわれますが餓死させる方法も――」
エーミール
「――貴方は、どの方法なら一番苦しませずに殺せると思いますか?」

▼△▼△▼△▼△
アラタケ : …苦しまずに…ですか
アラタケ : ……注射?
エーミール
「眠るように逝けていると信じたいものです」
アラタケ : …正直、どれも難しいでしょうが…
話している間にも、依頼者は蝶を瓶に移し終え、薬剤を染み込ませた小さなコットンを押し込んだ。
揮発させた毒とはこのことだろう。瓶の中で暴れることも無く、段々と蝶の動きが鈍くなっていく。
エーミール
「綺麗な姿を留め置くために、こうして既にある命を奪うのは心苦しいことですね」
動きの鈍くなった蝶は、傾けた瓶からよろよろと歩み出る。飛ぶ力は残っていない。老人の皺に塗れた手は、翅の模様を傷つけない繊細さと素早さを伴い、蝶を摘み上げる。
アラタケ : …それもまた、標本という趣味に必要な事なのかもしれませんね。
もう片方の手には、この場に辿り着くまで厳重に包まれていた注射器があった。蝶を持ち上げるや否や、華奢な躰に通した針から透明な液体がすかさず注がれる。
エーミール
「……、……これで」
エーミール
「やっと……」
若々しかった老人の笑顔は今や草臥れ、周囲の大地のように表情が乾いていた。あなたを座り込む位置から見上げ、億劫そうに笑顔で潤す。
アラタケ : …大丈夫ですか?(この旅で何度もした問いかけを…)
エーミール
「少々お待ちください。
 作業は手早く終わらせますから――……」
あなたは……

▼△▼△▼△▼△
アラタケ : …
あなたは、老人の集中の妨げとならぬよう一歩退いた。
アンデッドは、街に近付くにつれ姿を見掛けなくなっている。心配はないはずだが、周囲に気配はないか探ろう。

……、……。
アラタケ : …(気配や音はしない…おそらくは大丈夫…)
アラタケ : ………?
エーミール
「終わりました」
アラタケ : …っと、了解です
宙を彷徨っていた手の平よりやや小さな血色の蝶は、今や翅を広げ、白い褥を背にして額の中で眠っている。珍しい蝶なのは間違いないだろう。老人が興奮するのも無理はない。
死んだ街で、群れて暮らす蝶。アンデッドたちを遠ざけるようにして。
――だが、啜る腐肉も花も無いのに、なぜこれだけの数が生きているのだろうか?
アラタケ : …(考えてみれば…)
エーミール
「良かった」
エーミール
「本当に良かった」
エーミール
「ありがとうございます」
エーミール
「貴方のおかげで妻を捕まえることができました」

▼△▼△▼△▼△
アラタケ : …え?
エーミール
「ずっと追いかけていたのです、あの日から」
エーミール
「やっと捕まえた、僕のてんし」
あなたがこの時どのような感情を抱いたか、老人をどのような目で見たか、定かではないが。
少なくとも、彼は役割を終えた道具を放り出し、跪き、理性の宿る緑の目で、涙し、笑っていた。
胸には、完成したばかりの標本を大事そうに抱えている。
アラタケ : ……それは…どういう…?
エーミール
「プシュケには、もうひとつ意味があるんです。
 "息"という意味が」
老人はあなたに笑い掛ける。
エーミール
「息。
 これは妻です。妻の吐いた最期の吐息。妻の魂。これは僕の妻」
エーミール
「僕には分かる。これはきっと妻だ」
エーミール
「嗚呼、ありがとうございます、冒険者さん……」
老人の咽喉から、ヒュウと風の抜ける音がした。
嗚咽を漏らし、壁に貼り付く大量の蝶たちの視線から守るように標本を抱え込む。
エーミール
「これは」
エーミール
「僕のだ……」
嗚咽に震えていた肩は、まだ震えている。
いまや、勝利に震え、笑っている。
標本をしっかりと抱え込んだまま老人は懐を漁り、貴方の足元へと貨幣袋を放った。
アラタケ : ……エーミールさん?
エーミール
「報酬です。受け取ってください。
 中には息子への手紙も入っています。
 もう屋敷には戻らないと、そう書きました」
アラタケ : …
エーミール
「僕が蝶になる日まで、妻と二人きりでいたいんです」
あなたは……

▼△▼△▼△▼△
アラタケ : …
拾い上げた。
仕事は仕事だ。
達成したと依頼者が言うのなら、そうなのだ。
アラタケ : …わかりました。
アラタケ : 確かに、お伝えしましょう。
エーミール
「冒険者さん」
エーミール
「貴方の最後の吐息は、どんな蝶になるのでしょうね」
老人は囁く。
蝶を捕らえる旅に同行してくれたあなたへ、蝶を追い求めた者からの、紛れも無い好意として。
それをあなたがどう受け取ったかは――
アラタケ : …その時が来るまでわかりませんが…
アラタケ : 愛する人と最期を共にしたいと言う貴方の答えは…少しだけ理解できましたよ。
依頼者は、もう用が無いとばかりに道具をそのままに立ち上がる。風が吹けば瓶が割れ、細い針は罅割れた地面に消えてしまうだろう。

▼△▼△▼△▼△
アラタケ : …
あなたの声か、道具の行く末を気にした仕草か。
気付いた老人の口元は柔和に弧を描く。
エーミール
「……お古で良ければ差し上げますよ」
アラタケ : …では、ありがたく。
あなたが頷くなら、
老人は丁寧に片付け標本作りのための一式を手渡す。
直前までの様相は、鳴りを潜めて。
振る舞いは、酷く穏やかだ。
エーミール
「先にお帰り下さい、冒険者さん。危険の少ない進路は把握できましたし、行きよりは簡単でしょう。
 一人で大丈夫ですから」
エーミール
「……この場所のことは、ご内密に。
 どうかお願いします」
アラタケ : …ええ。
穏やかな笑みだ。先程までの疲弊は影も形も無い。
標本箱を抱き締める手の甲。
浮き出る関節が白く浮いている。
縫い止められた蝶。
硝子越し、角度を変えて輝きを変えるそれは、
悲しいかな、今の冒険者が立つ位置からでは、真っ暗に翳って見える。
壁に貼り付く蝶たちは、呼吸のテンポで翼を開閉しながら静かにあなたたちを見下ろしている。
あなたは……

▼△▼△▼△▼△
アラタケ : …
あなたはどんな顔をしていただろうか。
依頼者の笑顔を前に、背を向ける。
報酬は、どんな形であれ支払われた。
依頼主と雇われた護衛の関係はこれでおしまいだ。
アラタケ : ……ありがとうございました。
アラタケ : (礼をし…一人背を向ける)
アンデッドの影は何度か見掛けたものの、運が良ければ一度も出会わずに帰ることができるだろう。
運が、良ければ。
エーミール
「お願いします、どうか。
 振り返らないでください。
 僕は、妻以外の目に、もう僕を見られたくない」
その言葉に、あなたは……

▼△▼△▼△▼△
振り返らない。仕事は終わった。
この寒々しい景色の広がる土地から、緑の溢れる道を戻り、宿に帰ろう。
彼自身、そう望んでいるのだから。
アラタケ : (背を向けながら頷き…)
あなたは元来た道を辿る。
まだ、視界には赤い翅がちらついている。
――あの群には、
あなたの知る存在も含まれていたのかもしれない。
語られざる語り部
「斯くして、蝶を追う物語は幕を閉じる」
語られざる語り部
「報酬をああして出したってこたぁ、あの時点でお役御免だからな。
 なあ、冒険者よ」
語られざる語り部
「あの後、お前が何をどうしたかについては語るまい」
語られざる語り部
「……お前の口からなら構わんぞ? ん?
 ここは告解室みたいなもんだ。
 言いたいことがあるなら吐き棄てていけ! わはは!」
語られざる語り部
「……、……」
アラタケ : …それが彼の望んだ事です。
アラタケ : 正解も間違いも…彼が決めた事でしょう
アラタケ : ……ならば自分は、それを咎める事も止めることもできませんよ。
語られざる語り部
「あ~~……エフン」
語られざる語り部
「俺が出ると締まらんのだ。まったく面倒な賽子だ。
 まったくな。
 ……締め括るぞ」
あなたは、その依頼で何を手に入れただろうか?
形あるもの、無いもの、どちらにせよ。
あなたが蝶になるのは、まだ先のことだ。
語られざる語り部
「素晴らしき今生に乾杯。
 いつか蛹から解き放たれる、その時まで」
語られざる語り部
「ピリオド。これにて読了とする」
アラタケ : お疲れ様でした
[報酬袋] を手に入れた。

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