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懐かしき駅へ。

AM4:20。
蒸し暑さで目が覚めて、さっきまで見た夢を思い出していた。

僕は真夜中に、(駅らしき場所)にいた。横には、中学時代の剣道部の友達、ズシくんがいた。彼はこう言った。「ここはどこだろう、不安だよ」。
僕は彼の肩を取り、周りの仲間たちに向かってこう伝えた。
「もうすぐ朝が明ける。そうしたらこの場所がどこかわかるはずだ。きっと僕らにとって幸せなところだよ」。

ゆっくりと、金色の朝日が三角屋根の隙間から差し込んできた。その光の角度によって、実際の天井まで高くなっていく。
少しずつあたりを照らす。すると、カチカチと切符を切る駅員さん、古い窓口、大きな時計が見えてきた。

「ああ、ここは昔の西鹿児島駅だねぇ」。

西鹿児島駅(通称・西駅)は、今は鹿児島中央駅に改装され、新幹線も止まる大きな駅になった。しかしその外観は黒づくめで、薩摩の黒を意識したのかもしれないが、僕にとっては風の谷のナウシカに出てくる、巨悪の根源の『ドルグの墓所』を思い起こさせた(誰も知るまい・・笑)。

ナウシカの最後の対決の場所

僕らの知る西駅が、夢に美しく再現されている。夢の中の僕自身も、これは現実ではないことを知っている。

朝日に照らされてオレンジ色に変化した木漏れ日を、僕らはしばらくみていた。すると、どこからともなく駅員が現れて、大学の講義のように机と椅子が並べだした。そして次々に子供たちが着席する。
どうやら僕は、これから絵画教室を始めるようだ。しかし何の準備もしていないし、何を教えるのかも決まっていない。
子供たちは期待に満ちた目で準備をしていた。ズシくんは小声で「大丈夫なのかい?」と心配していた。僕は「まぁ、なんとかなるよ。今までだって、なんとかなってきた」。と答えた。

神経を集中して、何を伝えるべきか「声」を待った。すると、お調子者のマルピ君の携帯音が鳴り出した。せっかくの静寂が掻き乱される。しかし僕に動揺はない。さらに深く心の中は静まっていた。
子供たちを見ると、見覚えがある顔もあった。その昔、学級文集の1ページで、クラス対抗リレーでアンカーになった僕がゴールテープを切るところを絵に書いてくれた女の子がいた。あの時にお礼を言えなかった。
今教えている生徒さんの面影を持つ子供たちも何人かいた。中学時代の同級生もいた。

僕はみんなに向けてこう話した。「それでは、花を描いてみよう。好きな色で描いていいよ」。わぁ!と声が上がり、思い思いに絵の具を取る子供たち。西駅はいつのまにか、美術館のような空間になっていた。奥の方からピアニカの演奏が聞こえる。

「手を叩きましょう♫トントントン、トントントン・・♫」。

僕はまたみんなに伝える。
「このリズムに乗って絵を描こう」。手拍子をして、周りを回りながら、一人一人の絵に感想を伝える。みんな夢中で描いている。

ーーー
そして、目が覚めた。真っ暗闇だった。蒸し暑くて息苦しい。しかし思わず笑い出していた。
(やれやれ、昨日の悪夢とは大違いじゃないか)。

現実を変えれば夢が変わり、夢が変われば現実が変わる。そして、本当にやりたいことが見えてくる。

不思議な朝だった。
再び寝て、覚えてなければそれいいと思った。しかし、今でもはっきりと覚えている。あの西駅に差し込んだ光を。ズシ君の安堵を。

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画家・ペーの日記
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