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epilogue“それぞれの未来”

エピローグ『暁の影(シャドウ)』

1. それぞれの未来

「戦いが終わって、みんな新しい道を歩み始めた。」

「天城玲奈——私のおばあちゃん。天星学園大学の学長に復帰して、未来の才能を育てる道へ戻った。学問の場で、彼女の知識と経験は多くの人たちの指針となるんだろうね。」

「柚木桐子——彼女は長年務めた警察庁・長官官房審議官を退官した。そして、おばあちゃんから孤児院の運営を継承したんだって。過去に救えなかったものを、今度こそ守るために。」

「大門龍星——科学者としての道を貫いた。列義尾山で見つけた花の研究に没頭しているらしいよ。彼なりに、未来のためにできることを探しているんだろうね。」

「丹部栄角——かつてこの国を支配しようとした男。警察病院で治療を受けていたけれど、結局……そこで人生を終えた。野望の果てに待っていたのは、誰にも知られず消えゆく運命だったのかもしれない。」

「戸倉源治・浅倉京子——二人とも裁判にかけられ、実刑判決を受けた。今頃、刑務所の中で過去の罪を振り返っているはず。」

「そして——私は。」

2. 母への報告

静かな風が吹く墓地の一角。

日向紗月は、母・美桜の墓の前にそっと立っていた。
穏やかだが、どこか切ない表情で、そっと目を閉じる。

「お母さん…やっと、お母さんの無実が証明されたよ。」

空は夕焼けに染まり、風がそっと彼女の髪を撫でるように吹く。

「お母さんが残してくれたかけがえのない宝物、私はずっと大事にしていくから。」

彼女は懐から赤いスカーフを取り出し、軽く握る。

「怪盗セレナは、悪のはびこる街の義賊。正義の泥棒さん、だからね!」

その時——

「セレナぁ!待ちなさい!アンタを逮捕だぁ、逮捕!」

背後から響く、聞き慣れた声。

ゆっくりと振り返ると、そこには息を切らした藤堂凛の姿があった。

「やれやれ…お母さんに手を合わせる時間くらいくれないの?警部って心狭すぎ!」

「言い訳は聞かない!さあ、大人しく……!」

しかし、凛の言葉が終わる前に、セレナの姿は風のように消え去った。

3. 夕陽の中の誓い

凛は静かに美桜の墓前に向き直る。

「紗月のお母さん……貴女は、私たち警察の問題までも解決してくださったのですね……感謝しています。」

ゆっくりと手を合わせ、目を閉じる。

だが、すぐに再び叫び声が響いた。

「待てぇ!怪盗セレナぁ!逮捕する!」

夕焼けの中を駆け抜ける影、追う者の影——。
空には美しい暁が広がり、物語は新たな幕を開けるように終わりを迎えた。

✨ 『暁の影(シャドウ)』 完結 ✨

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