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暁の影(シャドウ)第二話 “秘宝の行方”

ミス・レディとの通信

夜の旭丘銀行。鋭利な外壁が無機質な輝きを放つ。その建物は、まるで巨大な要塞のように街に聳え立っていた。セレナは近くのビルの屋上から銀行を見下ろし、小型デバイスを耳元に当てた。

「貸金庫の中に秘宝がある。それも、私が探しているものの一つよ。」

通信機からミス・レディの冷静な声が響く。セレナは視線を銀行に向けながら答えた。

「でも、それだけじゃないんでしょ?この銀行、ただの金庫じゃない気がする。」

「その通り。この銀行は、議員や要人たちの隠し財産を管理している。そして、その事実を知った弁護士が頭取を買収し、銀行を支配しているわ。貸金庫のセキュリティも強化されていて、普通の方法では突破できない。」

セレナは苦笑いを浮かべる。

「なるほどね。それじゃ私の出番ってわけだ。」

「気をつけて。彼らは秘宝を守っているわけじゃない。それを利用しようとしている。今回の秘宝は、これまで以上に慎重に扱う必要があるわ。」

セレナは通信を切り、赤いスカーフを手で整えた。

「了解。それじゃ、お邪魔させてもらうよ。」

麻姫との霊的な接触

屋上から銀行に向かおうとしたその瞬間、ひんやりとした風が頬を撫でた。振り返ると、淡い光に包まれた霊体の麻姫が現れた。

「麻姫…?」

「この銀行はただの銀行ではない。この地には、人々の汚れた気が蔓延しとる!その力が、秘宝に影響しとるようじゃな。」

セレナは少し驚きながら、眉をひそめて聞き返した。

「汚れた気…ですか?それって、どういうことですか?」

「欲望、嫉妬、憎悪…そういった負の感情が、この場に溜まり、この空間を覆い尽くしておる。それが秘宝を蝕み、本来の力を封じておるのじゃ。このままでは、真の力は得られぬ。」

セレナは微妙に敬語を崩しつつ言った。

「秘宝を取り戻せば、この汚れた感情も浄化できるってことですか?」

麻姫は少し険しい表情で答えた。

「ただ取り戻すだけでは足りぬ。汝の覚悟と行動が、この地を浄化する鍵となるのじゃ。お前の力を見せてみい。」

「分かりましたよ、麻姫様。でも、言葉が厳しすぎしゃない?言うのは簡単だけどさ…」

麻姫はふっと目を細め、微笑んだかと思うと、急に厳しい口調に戻った。

「セレナ、私は年上じゃぞ!もっと敬え!」

セレナは軽く笑い、スカーフを整えながら屋上を飛び降りた。

「はいはい、気をつけまーす!」

電子要塞のセキュリティ突破

銀行内部は、まさに電子要塞だった。赤いレーザーセンサーが複雑に張り巡らされ、監視ドローンが空中を巡回している。

「なるほど…これは歓迎されてるってことかな。」

その瞬間、警報音が鳴り響き、複数のドローンが一斉に向かってきた。

「ちょっと、これじゃ歓迎が手厚すぎるって!」

セレナは深呼吸をして指先に雷エネルギーを溜め込む。周囲に風が巻き起こり、彼女の赤いスカーフが大きく揺れた。

「風嵐地獄――一人でもやれるってところ、見せてあげます!」

青白い光が彼女を包み込み、竜巻のような風の刃がドローンを巻き込み始めた。雷エネルギーがドローンの動きを鈍らせ、次々と切り裂かれる。最後の一機が地面に落下すると、セレナは深く息をついた。

「ふぅ…ちょっと力を使いすぎたかな。」

その時、麻姫の声が頭に響いた。

「力の無駄遣いは禁物じゃ。この先にも罠が待ち受けておるかもしれぬぞ。」

貸金庫への到達と発見

セレナは貸金庫エリアに到達し、厳重な電子ロックの前に立った。

「麻姫様…どうすれば…?」

霊体の麻姫が静かに現れ、指をさすように言った。

「雷を使いすぎると、このエリア全体に影響が出る恐れがある。慎重になされよ。」

セレナは微量の雷エネルギーを指先から放ち、ロックを一瞬だけ停止させ、素早く貸金庫の扉を開けた。

中には、オレンジ色に輝く「橙の秘宝」が鎮座していた。その周囲には、議員や要人の汚職を証明するデータチップとリストが並べられている。

「これが…母さんが守ろうとした真実…?」

秘宝を手にしたセレナに、麻姫が再び語りかける。

「秘宝を取り戻しただけでは終わりではない。この地に渦巻く負の気を完全に浄化するには、さらに試練が待ち受けておる。気を抜くでないぞ。」

セレナは深く息をつき、小さく笑った。

「分かりました。次もきっちりやってみせますよ。」

しかし背後には…

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