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暁の影(シャドウ)最終話・終章“運命の決戦、未来への選択”

装置の暴走

丹部栄角の体が、眩い光に包まれる。
装置が起動し、秘宝のエネルギーが研究所内に溢れ出していた。

「う…ぐぅああああっ!!」

丹部は装置の中心で苦しみ、身をよじらせる。
その姿はまるで、暴走する力に飲み込まれていくかのようだった。

「なんだ…これは…!?儂は…神になれるはず…なのに…!」

だが、秘宝の力は制御を超えていた。
装置は丹部の意志を拒むように暴れ出し、研究所内の電磁波が狂い始める。

「このままでは…!」

セレナは眉をひそめた。

その時――

「セレナ!」

大門龍星が叫んだ。

「あの護符を出せ!あれは君のお爺さん――日向光太郎が、装置が暴走した際に強制制御するために作ったものなんだ!早く!」

セレナは護符を握りしめたまま、立ち尽くす。

「……私は、この男を許せない…このまま永遠に…!」

丹部は、美桜を冤罪で死に追いやり、秘宝を利用して自分の権力を強化しようとした。
多くの人々を犠牲にし、彼のために命を落とした者もいる。

ここで装置が彼を呑み込み、すべてを終わらせるのも…悪くない。

「セレナ!」

今度は凛の声が響く。

「このままでは丹部は……アイツには罪を償わせなきゃいけないのよ!このままだと、貴女を捕まえなければならなくなる……!」

セレナの目が揺れる。

「……っ。」

凛が言っていることは、正しい。
私刑ではなく、法の下で罰を受けさせなければならない。

「……くそっ!」

セレナは護符を取り出し、大門に差し出した。

「これで…なんとかなるんでしょうね?」

「なるさ!絶対に!」

緊急制御と新たな危機

護符が装置に近づくと、突然、機械音声が響いた。

“ピピッ…制御システムが作動しました。緊急停止を行います……”

ホール全体が一瞬だけ静寂に包まれる。
機械が制御を取り戻し、秘宝の光が落ち着きを見せた――しかし。

“緊急消去装置が作動しました。全職員は直ちに外へ避難してください…繰り返します、全職員は直ちに……”

「な、なんだと!?」

大門の顔が青ざめる。

「こ、こんなはずは…!緊急停止じゃなくて、施設ごと消去する仕組みになってるのか!?僕でも制御できない!」

研究所全体に、激しい振動が走る。
天井が崩れ始め、床には無数の亀裂が入る。

「あと15分しかない!逃げるぞ!」

警報音が鳴り響き、警告ライトが赤く点滅する。
セレナ、凛、大門、そして研究所の職員たちは、一斉に出口へと駆け出した。

崩壊する研究所

外へ出た瞬間、轟音と共に研究所の建物が揺れる。

「急げ!もう持たないぞ!」

全員が脱出した瞬間――

ズンッ、ゴゴゴ……!!

凄まじい爆発音が響き渡り、研究所の建物が一気に崩れ落ちた。
まるで大地が抉れるかのように、研究所のあった場所は巨大なクレーターと化した。

舞い上がる煙と塵の中、セレナと凛は肩で息をしながら、その光景を見つめる。

「……終わった?」

凛が呟く。

大門が崩落した跡を見つめ、肩をすくめた。

「……いや、まだだ。」

丹部栄角の最期

煙の中から、一つの影が現れた。

ボロボロになりながらも、丹部栄角は地面に這いつくばっていた。
衣服は破れ、顔には血が滲み、もはや権力者としての威厳など微塵もない。

「……ぐ……うぅ……」

立ち上がろうとするが、力が入らず膝をつく。

凛は静かに歩み寄り、手錠を取り出した。

「丹部栄角、貴方を国家転覆罪・職権乱用罪・殺人教唆罪・収賄罪・殺人罪の容疑で逮捕する。」

「……ふ、ふざけるな……!儂が…こんな…こんなところで……」

「もう終わりよ。観念しなさい。」

セレナは冷たい眼差しで彼を見下ろす。

「貴方はこの国を支配しようとした。でも、結局、秘宝の力は貴方を拒絶したのよ。」

「ぐぅ……」

丹部は崩れ落ち、もう抵抗する気力すらなかった。

未来への選択

夜明けが訪れようとしていた。

セレナと凛は、並んでクレーターを見つめる。

「……これで、本当に終わったのね。」

凛が静かに呟く。

「……ああ。」

セレナもまた、小さく頷く。

「貴女はどうするの?怪盗セレナ。」

凛がセレナを見つめる。

セレナは一瞬黙り込んだ後、ふっと微笑んだ。

「……どうしようかしらね。」

そう言って、彼女は夜明けに向かって歩き出した――。

『暁の影(シャドウ)』完

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