見出し画像

暁の影(シャドウ)第六話“天霊島の影、共闘の嵐”

天霊島の探索

月明かりが静かに波間を照らす中、小型ボートが静かに天霊島の岸辺へ滑り込んだ。セレナは軽く身を翻してボートを降りると、古びた地図を手に廃墟と化した神殿を目指した。
「ここが……ノア一族の島か。」

長い間、人の手が入らず荒れ果てた島は静寂に包まれ、不気味な雰囲気を漂わせている。それでも、セレナの足取りに迷いはなかった。
地図が示す通り、島の中央には古びた神殿がそびえ立っていた。崩れかけた石柱や苔むした壁は、ノア一族の歴史の長さを物語っている。

セレナは神殿の奥へ進み、中央に設置された台座を見つけた。そこには、黄色く輝く秘宝が鎮座していた。
「見つけた……!」
セレナは息を飲みながら慎重に歩み寄り、手を伸ばそうとした。だが――

一発の銃声が響いた。

「……っ!」セレナは反射的に身を屈め、振り返った。銃口をこちらに向けた男が、不敵な笑みを浮かべて立っている。
「怪盗セレナ、私の秘宝に手を出すとはな。」

セレナはゆっくりと立ち上がり、男を冷静に見据えた。
「……貴方が戸倉源治ね。」

戸倉は笑みを浮かべたまま、小型の装置を取り出して手にした。
「その通りだ。秘宝は私がいただく。お前に渡すつもりはない。」

セレナは構えを取りながら冷たく言い返した。
「悪いけど、それは無理。さあ、やってみなさい。」

戸倉との対決

セレナは風のような素早い動きで間合いを詰め、「風嵐地獄」を発動。竜巻が戸倉に向かって渦を巻きながら迫った。
だが、戸倉は装置を起動させ、強力なエネルギーシールドを展開。その竜巻を完全に防ぎ切った。

「その程度の技では私には通じない。」戸倉は冷笑を浮かべると、秘宝の力を利用してセレナに反撃を仕掛けた。
地面が揺れ、罠が作動する音が響く。壁から飛び出す刃、床を這うように放たれるエネルギー波――セレナはそれをかいくぐりながら攻撃を続けたが、徐々に追い詰められていった。

「くっ……!」防戦一方となったセレナは苦悶の表情を浮かべる。

凛の登場

その時――突如として風が唸りを上げ、竜巻が戸倉の頬をかすめた。戸倉は驚きとともに叫ぶ。
「だ、誰だ!」

神殿の入り口から、一人の女性が現れる。
「怪盗セレナって聞いてたけど……随分苦戦してるわね。」

藤堂凛が皮肉めいた言葉を投げかけた。セレナはその声に振り返り、驚いたように叫ぶ。
「警部が……!?どうしてここに?」

凛は冷たい微笑を浮かべながら答える。
「玲奈さんに言われたのよ。『無茶をする子がいる』ってね。」
凛はセレナの横に立ち、戸倉を鋭い目で見据えた。
「戸倉源治、あなたを逮捕する。」

共闘の始まり

凛とセレナは無言で目を合わせると、自然と連携して行動を開始した。
セレナが戸倉の注意を引きつける間に、凛が背後から的確に攻撃を加える。その息の合った動きに、戸倉の余裕は徐々に消えていった。

「セレナ、今だ!」凛の合図で、セレナは再び「風嵐地獄」を発動。だが、それでも戸倉のシールドは完全には破れなかった。

「この技だけじゃ足りない……!」セレナが焦りを滲ませる中、凛が前に出た。
「私も使う。」
「え……!?なんであなたが……」セレナは驚くが、凛は冷静に言い放つ。
「風嵐地獄は、一人では完成しない技。二人でこそ真の力を発揮する。」

二人は息を合わせ、同時に技を発動した。「風嵐地獄」が融合し、巨大な竜巻となって戸倉を飲み込む。
「ぐっ……!」戸倉は吹き飛ばされ、完全に力を失った。

戸倉の逮捕

凛は戸倉に近づき、冷静な声で告げた。
「戸倉源治、あなたを殺人未遂及び公務執行妨害で逮捕する。」
彼女は戸倉に手錠をかけ、その身を拘束する。

「くっ……私を捕まえたところで……真実には辿り着けないぞ……!」
「それでも、あなたを逮捕することで真実への第一歩になる。」凛の言葉は揺るぎない正義を表していた。

セレナは少し距離を置いてその様子を見つめながら、静かに笑った。
「やるじゃない、警部さん。」

エピローグ

外の夜空の下、セレナは凛に問いかけた。
「どうして、あなたが風嵐地獄を……?」
凛は一瞬ため息をつき、小さく微笑むと語り始めた。
「実は私、孤児だったのよ。玲奈先生が経営する孤児院育った私を彼女は我が娘のように育ててくれた…でもね、私が一人で生きていけるようにで玲奈先生にこの技を教わったのよ。“この技の残りの半分を使いこなす人が現れる。その人と力を合わせて真実を導く鍵となる”って。」

セレナは凛の言葉を胸に刻み、静かに手を差し出した。
「なら、これからも協力してくれる?」
「もちろん!でもね私の最終目標は怪盗セレナの逮捕だからね!」凛は笑みを浮かべてその手を取った。

こうして二人の絆が生まれ、新たな戦いへの道が開かれた。

いいなと思ったら応援しよう!