暁の影(シャドウ)第四話“追う者の信念”
プロローグ:指令と疑念
月光市警察署。凛はデスクに座り、先日発見した名簿をじっと見つめていた。そこに記された名前の中には、彼女が信頼していた上司や同僚の名前が並んでいる。
「…本当にこの人たちが…?」凛は頭を抱え込みそうになる。
その時、署内放送が響いた。「藤堂警部、至急会議室へお越しください。」
会議室の扉を開けた凛の目に飛び込んできたのは、見慣れない女性の姿。
整然としたスーツに身を包んだ彼女は、冷静かつ鋭い目つきで凛を見つめていた。
女性は一歩前に進み、周囲の警官たちに向かって話し始める。
「本日付で市警に配属になった柚木桐子です。これからは貴女の上司として、事件解決の指揮を取ります。宜しくお願いしますね、藤堂警部。」
冷静で威厳のある声が場を支配する。
凛は一瞬戸惑いながらも直立し、きちんと敬礼をする。「あ、貴女が噂の…警察庁長官官房審議官の!柚木警視正、失礼しました!」
「話が早くて助かるわ。」桐子は淡々と頷き、データを凛に手渡した。「さて、これが今回の任務に関する情報よ。」
「風鏡市の廃工場…?」凛はデータを手に取り、眉をひそめる。
「そこが今回の捜査対象。武器密造に関与している拠点である可能性が高いわ。」桐子の言葉は鋭く、重い。
「了解しました。私に任せてください。」凛は再び背筋を伸ばし、桐子に敬礼を送った。
風鏡市の廃工場:孤独な捜査と罠
夜の風鏡市。凛は廃工場の敷地に足を踏み入れた。薄暗い建物の中は不気味なほど静かで、かすかな機械音が遠くから聞こえてくる。
「…ここに本当に証拠があるの?」銃を構えながら、慎重に奥へと進む。
しかし、工場の奥にたどり着いた瞬間、警報が鳴り響き、鉄扉が閉まり脱出経路が断たれた。さらに、廊下の奥から足音が近づいてくる。
「誰!」凛が声を張り上げると、現れたのは、彼女が信頼していた署の同僚だった。
「…あなたがここにいるなんて。どうして?」凛の目に動揺が浮かぶ。
同僚は冷笑を浮かべ、「凛、お前には知る必要がないことだってあるんだよ。」と静かに言った。
「どういうこと!?あなたたちが何をしているのか、全て話して!」
「お前の正義なんて幻想だ。警察組織の中にも闇がある。それを見て見ぬふりしてきたのは、あんたたち自身だろう?」
桐子の登場:正義の葛藤
同僚と凛が対峙していると、工場の奥から桐子が現れる。
「その通りね。でも私は、その闇を見過ごすつもりはない。」桐子の冷静な声が響く。
「柚木警視正!?どうしてここに…?」凛は驚きのあまり声を上げる。
「君一人では危険すぎると判断した。それに、この現場には私自身が確認すべき情報があるの。」桐子はそう言いながら、同僚を鋭い目で見つめた。
「あなたのような者が、この組織を腐らせている。それを止めるのが、私の役目よ。」
同僚は薄く笑い、「警察が腐敗してるのは昔からだろう?あんたがいくら正義を語っても、組織全体は変えられないさ。」と挑発する。
凛はその言葉に動揺するが、桐子の毅然とした態度に心を奪われる。
セレナの介入と共闘
さらに工場の別の入り口から、軽快な足音が響く。セレナが現れ、薄暗い空間に軽やかな声が響く。
「おやおや、ずいぶん賑やかな場所ね。」セレナは凛を見て笑う。
「あなたまで…どうしてここに?」凛は驚きの声を上げる。
「さぁ?ただ、あなたが危ない状況にいるのを見て放っておけなかっただけよ。」セレナは軽い口調で言いながら、手際よくセキュリティを解除し始める。
桐子も協力し、三人で敵を制圧。工場の奥で「青の秘宝」と武器密造の証拠を発見する。
エンディング:揺れる信念
工場を脱出した後、凛は夜空を見上げながら小さく呟く。「正義って、一体何なんだろう。」
桐子が静かに答える。「それを定義するのは簡単じゃない。でも迷い続けることが、君の正義の証よ。」
セレナは軽く微笑みながら立ち上がる。「迷ってる警部さんはきっと正しい道に進めるわ。じゃあ、また追いかけっこしましょう。」
「待ちなさい!」凛はセレナを呼び止めるが、セレナはすでに闇の中に消えていた。
「私の正義…か。」凛は名簿を握りしめながら、自分の信念を確かめるように呟いた。
次回予告
突如現れた柚木桐子。彼女の目的は何か?彼女の正体が明らかになっていく。