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ノアスエリシュア 第二部第二話“献身”

湖に迫る危機

風鏡市の湖は、不気味な静けさに包まれていた。封印が破壊されたことで霊的な力が失われ、代わりに瘴気が漂う危険な場所と化している。湖の水面は微かに揺れ、まるで内部から何かが目覚めようとしているかのようだった。

「ここが、封印があった場所か…」
光咲希(ひかりさき のぞみ)は、湖を見つめながら呟いた。

「もう封印は解けてる。このままじゃ、この湖も街も…」
隣に立つ結城明日香(ゆうき あすか)は険しい表情を浮かべながら言葉を続ける。

その時だった。水面が不自然に波打ち、中心から異様なオーラが立ち上った。希と明日香は緊張感を覚え、すぐに構えを取る。

焔と灼の登場

「ようやく来たわね。」
冷ややかな声が湖面に響いた。黒い衣を纏った二人の女性が水中から姿を現した。焔(ほむら)と灼(しゃく)。かつて巫女として封印を守っていたはずの二人は、今や邪悪な力に取り込まれ、異様なオーラを放っている。

「私たちが封印を守っていた頃の話なんてもう過去のことよ。」
焔が嘲笑を浮かべながら言う。

「この湖も、封印も、今は私たちのもの。それを壊そうなんて、おこがましいわね。」
灼が冷たい声で言葉を続けた。

「そんなことさせない!」
希は一歩前に踏み出し叫ぶ。「この湖も、風鏡市も、私たちが守る!」

焔はその言葉に小さく鼻で笑った。
「守る?そんな力があるなら試してみなさい!」

変身「コア…クロス!」

咲希と明日香は互いに頷き合い、変身の構えを取った。

「ここで止めるしかない…!」
咲希の声に合わせ、二人は叫んだ。

「コア…クロス!」

青白い風が咲希を包み、軽やかで鋭い戦士の姿へと変わる。一方で、明日香は黄金の雷に包まれ、雷の力を宿した強力な姿へと変貌した。

戦闘開始

「その程度で私たちに勝てると思った?」
焔が炎を練り上げ、巨大な火球を湖面に生み出した。それをノアスエリシュアに向かって放つ。

「くっ!」
ノアスエリシュアは風の刃を纏わせた双剣を構え、火球に向かって突進した。その一撃で炎の勢いを削ぎ落としながらも、焔に攻撃の隙を与えない。

一方で灼は、雷を纏った槍を構え、高速で明日香に迫った。槍の鋭い突きをノアスエリシュアは雷の盾で受け止める。
「私も雷を扱える。簡単にはやらせない!」
明日香は力強く言い放つと、雷を込めた拳で灼に攻撃を仕掛けた。

「ふん、そんな力じゃ私たちには届かないわ!」
灼は冷笑を浮かべ、さらに強烈な雷を放つ。

双星閃光の失敗

戦いが激化する中、咲希と明日香は連携技「双星閃光」を繰り出すことを決めた。ノアスエリシュアは一瞬で敵の動きを封じ、炎をまとった強力な一撃を放つ。

「双星…閃光っ!」

炎が融合した火球が焔と灼に向かって放たれる。しかし、焔と灼の体にまとわりつく炎がその攻撃を無力化した。

「無駄よ。私たちには火の攻撃なんて通用しない。」
焔が冷たく言い放ち、再び攻撃態勢に入る。

迷いの兆し

戦闘はさらに激しさを増していったが、ノアスエリシュアは粘り強い攻撃が功を奏し、焔と灼の動きに次第に迷いが見え始める。

「こんなことをして…私たちは何を守っているんだ?」
灼が小さく呟いた。焔も一瞬手を止め、視線を湖に向ける。

「あなたたちは巫女だったはず。この湖と街を守りたかったんじゃないの?」
ノアスエリシュアが叫ぶと、焔と灼は微かに動揺した。その一瞬の隙が、二人の心の奥底に隠れていた良心を揺さぶった。

第二部第二話: 「献身」(後半)

ツインブリザードの発動

焔と灼の動揺を見逃さず、咲希と明日香は最後の力を振り絞る。

「火に耐性があるなら…新しい技で決めるしかない!」
咲希が叫び、明日香と目を合わせる。

「私たちならできる。ここで決める!」
明日香も力強く頷いた。二人は同時に構えを取り、エネルギーを練り上げる。

「咲希、いくよ!」
「うん、明日香!」

二人は拳を突き出し、掛け声を合わせた。

「コア…クロス!」

咲希の風と明日香の氷が交わり、冷気を纏った巨大な竜巻が生み出される。吹雪のように強烈な冷気が湖全体を包み込み、焔と灼をその中心に閉じ込めた。

「ツインブリザード!」

冷気と風の融合した一撃が焔と灼に直撃し、二人を打ち倒した。氷の結晶が舞い散る中、邪悪なオーラが完全に消え去る。

改心の瞬間

冷気が晴れると、焔と灼は地面に膝をついていた。先ほどまでの邪悪な気配は跡形もなく、瞳には後悔と涙が浮かんでいた。

「私たちは…何をしていたんだ…。」
灼が震える声で呟く。

「守るはずだった湖も街も、全てを壊そうとしていたなんて…」
焔の声も掠れている。

ノアスエリシュアの変身を解いた希と明日香は戦闘で傷ついた二人に駆け寄り、静かに語りかけた。
「焔さん、灼さん!まだ遅くない。私たちと一緒に、この湖を守ろうよ!」

焔と灼は顔を上げ、涙を流しながら小さく首を振る。
「希さん、明日香さん…私達には、もう時間がない。この湖を守るには、私達が人柱になるしかないの。」

永遠の巫女として

「そんなこと、やめて!」
希と明日香が声を荒げるが、焔は優しく微笑む。

「これは…私たちの罪を償う最後の役目。あなたたちには、まだ未来がある。」
灼も静かに続ける。「だから、私たちの想いを受け継いで。」

二人はお互いの手を取り、咲希と明日香に向かって最後の力を解放した。風と雷のエネルギーが二人の体に流れ込む。

「これが、私たちの全て――『風嵐地獄』私達の運命を弄んだ、邪悪を未来永劫地獄に突き落として!」
焔と灼の声が静かに響き渡る。二人の力が咲希と明日香に継承されたその瞬間、焔と灼の体は光の粒子となり、湖へと溶け込んでいく。

湖の水面は不思議な静寂に包まれ、氾濫の兆候は完全に消え去った。

涙の決意

希と明日香は、膝をついて涙を流した。
「焔さん…灼さん…!」
彼女たちの犠牲が、二人の胸に深く刻まれる。

「この力を無駄にはしない。必ず守る…!」
咲希は拳を握りしめ、決意を固める。

「次は私たちの番だ。二人の想いを背負って…絶対に負けない!」
明日香も力強く頷いた。

新たな旅立ち

こうして焔と灼の犠牲によって湖は守られ、風鏡市は一時的に安定を取り戻した。しかし、三つの封印が破壊され、邪神の復活は確実に近づいている。咲希と明日香はその責任を胸に抱え、次なる封印を守る戦いへと進む。

二人の新たな決意を乗せて、物語は新たな局面を迎えようとしていた。

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