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ノアスエリシュア第二部最終章三部作・Ⅲ最終話“希望”
暗闇に覆われていた世界が、ゆっくりと変わり始めていた。
邪神ネクロディアスは、ノアスエリシュアの放った「シャインスパーク(原型)」によって大きなダメージを受けた。しかし、それでも邪神は滅びず、その圧倒的な闇の力が周囲の空間を侵食していく。
空には黒い霧が漂い、大地には腐敗と絶望が広がっていた。ノアスエリシュアは力を使い果たし、膝をつきながら双星を杖代わりにして立っていた。
「くっ…これでも倒れないなんて…!」希が苦しそうに息を吐きながら呟く。
「私たちの力が、まだ足りないの…?」明日香も疲弊した声で続けた。
その時、邪神の身体が黒い霧に包まれ、傷ついた肉体がゆっくりと再生し始めた。その不気味な姿に、二人の顔には焦りと絶望が浮かぶ。
「これ以上…戦えるのかな…」希は力なく呟き、地面に倒れ込みそうになる。
「希…負けちゃダメだよ!ここで終わるわけにはいかない…!」明日香が声を上げるが、彼女の体もまた限界を迎えていた。
走馬灯のように蘇る記憶
その時、二人の頭の中に過去の記憶がフラッシュバックのように蘇り始めた。
孤独だった希の過去。
「私は一人で戦わなきゃいけない…誰にも頼れない…」
孤独を抱え、誰にも心を開けなかった希。だが、そんな彼女に寄り添ってくれたのが、明日香だった。
「一人じゃないよ、希。私がいる。」
明日香の言葉が、希の胸に温かく響く。
迷いを抱えていた明日香の過去。
「私は…希みたいに強くなれない。いつも足を引っ張るだけ…」
自分の弱さに苦しんでいた明日香。そんな彼女を支えてくれたのは、希の強さと優しさだった。
「明日香がいるから私は強くなれるんだよ。」
希の言葉が、明日香の心に光を灯す。
二人の間に築かれた絆と、これまで支えてきた友情が、心の中で鮮やかに蘇る。そして、これまでの歩みが確かなものとして胸に刻まれた。
支えてくれた人たちの声
さらに、これまで二人を支えてきた人々の声が、どこからともなく聞こえてきた。
「最後まで諦めるな!」
麻姫と月姫の優しい声が響く。
「ここで倒れたら何の意味もないぞ!お前たちには未来があるんだからな!」
焔と灼の力強い言葉が背中を押す。
「希望を胸に抱きなさい。それがノアスエリシュアの力そのものなのだから。」
天城玲奈の厳しくも温かい声が二人を包み込む。
「この世界を救えるのは君たちだけだ。自分を信じなさい!」
大門剛志の頼もしい言葉が心に響く。
その声に支えられ、二人はゆっくりと顔を上げた。
昇華するシャインスパーク(真シャインスパーク)
「明日香…」希が涙を拭いながら双星を握り直す。
「うん、希…もう一度立とう。私たちならできる。」明日香も笑顔を浮かべながら立ち上がる。
その瞬間、ノアスエリシュアの身体が再び光を放ち始めた。その光はこれまで以上に眩しく、邪神の闇をも飲み込むほどの輝きだった。
「これが…私たちの、本当の力…!」希が叫ぶ。
「もう一度、希望を灯すんだ…!」明日香が力強く言った。
二人の心が完全に一つに重なった瞬間、ノアスエリシュアの双星が眩い光を放ち、空に向かって翼のように広がった。
「真!シャイン…スパーク…!」
その光は邪神ネクロディアスを包み込み、闇を完全に浄化する力となった。邪神は断末魔の咆哮を上げ、その巨大な身体が崩れ落ち、ついには完全に消滅した。
空は澄み渡る青空に変わり、暗闇に覆われていた世界は、希望の光に満たされた。
別れの時
力を使い果たしたノアスエリシュアは、希と明日香の姿に戻った。二人はその場に座り込み、空を見上げた。すると、彼女たちの身体から光が溢れ、ノアスエリシュアが再び具現化された。
ノアスエリシュアは二人に歩み寄り、優しく微笑む。
「希、明日香…貴女達はもう大丈夫ね。でもね、私はもっともっと力になりたいと思う人達に手を差し伸べてあげたい…だから私は…」
その言葉に、希が涙ながらに叫ぶ。
「嫌だよ!私はもっと貴女と一緒にいたい!」
「そうだよ!私も…貴女に救われたい!」明日香も同じように訴える。
ノアスエリシュアは二人を見つめ、首を横に振った。
「ううん…貴女達は私がいなくても大丈夫。それにね、私にはやる事があるの。貴女達みたいな子達に救いの手をもっと差し伸べてあげたいの。」
彼女は優しく二人の頬を撫で、続けた。
「貴女達のことは決して忘れない…きっとそのコアクリスタルが導いてくれるはずよ。」
明星の空へと旅立つ
ノアスエリシュアは玲奈に向き直り、深々と頭を下げた。
「長、これまで支えてくださり、本当にありがとうございました。」
玲奈は目を伏せ、涙をこらえながら静かに答える。
「ノア、貴女は私たちの誇りよ。どうか、貴女の道を進んで。」
ノアスエリシュアは微笑みながら頷き、明星の輝く空へと光の粒になって旅立っていった。
その光が完全に空へ消えるまで、二人と仲間たちはずっと見守り続けていた。
新たな希望
「行っちゃったね…」希が静かに呟く。
「でも、彼女はずっと私たちの中にいるよ。」明日香が優しく微笑みながら答える。
遠くから見守る仲間たちもまた、その空を見上げていた。これからの未来は、希と明日香の手に委ねられた。彼女たちの戦いは終わったが、新たな光が世界を照らし始める。
物語は、ノアスエリシュアとの別れを経て、新たな未来への希望を描いて幕を閉じる。