アーチ✕る▷Vendy Methodosさん アーティストトーク
今と昔、文化と文化、ひととひとの間に
アーチをかける(✕る)できごとをレポート📝
ARTlST TALK / Vendy Mothodos
2024.01.07.
@ Art Center Ongoing(吉祥寺)
インドネシアのジョグジャカルタから来日し、浜松を中心に2週間滞在したVendy Methodosさん。その締めくくりとなるアーティストトークが、吉祥寺にあるArt Center Ongoingで行われました。
内容は、
①Vendyさんの活動や作品について
②Vendyさんもアートディレクターを務めた2023年の第17回ジョグジャカルタ・ビエンナーレについて
③ジョグジャカルタで盛り上がるアート・コレクティブについて
④2週間の日本滞在中の活動について
でした。
ウォールアートから現代アートへ
Vendyさんのアーティスト活動は、2006年、ウォールアートから始まりました。
活動当初の名前はVendy Stalker。その後アーティスト活動を休止し、よく行く本屋で開いた歴史の本で目に止まったギリシャ語のMethodos(手法、方法の意)という言葉を受けて、2011年からVendy Methodosという名前で活動を再開しました。
当初アパレルブランド展開を志すも、オーストラリアでの2点の作品制作をきっかけに現代アートに開眼。フランスやカタールなど、国内外での展覧会参加の傍らで、2017年にVendyさん含む5人のメンバーでアート・コレクティブGegerboyoを立ち上げ。Gegerboyoとして2022年瀬戸内芸術祭参加や、2023年ジョグジャカルタ・ビエンナーレのアート・ディレクターなど、注目度の高い実績を多数重ねてきました。
現在に至るまでの活躍の節目ごとに、「コレクティブ」のお陰で、必要なサポート、活動の機会、仲間たちに恵まれてきたようです。
コレクティブとは
コレクティブとは、コミュニティよりも少人数の(主に)アーティストたちの集まりのことで、ともに発展するために、アイディアをシェアし、様々な手法・メディアを学び合うもの、というのがVendyさんによる定義。アート畑でない人たちにも分かりやすく説明してくれました。
そんなジョグジャカルタのコレクティブはじめ、東南アジアのアート・コレクティブを2016年にリサーチした、Ongoingの小川希さんがトークの聞き手役でした。
小川さんは東南アジアで知ったコレクティブという緩やかな運動体の在り方に触れて、同じことが日本でできないか、と、Ongoingを立ち上げたそう。いまや60人ほどのメンバーを抱えているけれど、忙しくて余裕のない東京での暮らし、東京という都市の広さ(地理的な遠さ)など、一筋縄ではいかない東京でのコレクティブ活動について、Vendyさんとの興味深いやり取りがありました。
逆にジョグジャカルタでは、暮らしが東京よりゆったりしていて、元々仲間で集まる文化がある(東京より)小さな街なので、物理的制約で活動が立ち行かなくなることはあまりないのだそう。むしろ、考え方や目指す方向性が徐々に合わなくなったり、個人の活動にもっと力を注ぎたくなったりという理由で、メンバーの離脱などが起きているとか。コレクティブも、音楽バンドのように、メンバーが抜けたり入ったりしながら流動的に続いていくものと捉えられているようです。Vendyさん自身も、2023年のジョグジャカルタ・ビエンナーレ終了後、Gegerboyoから離脱して自身の活動に専念しています。
アーチ✕る作品と人びと
浜松や名古屋で、驚くほどたくさんのウォールアートを描いたVendyさん。彼が日本で産み出した作品には、日本とインドネシアの文化的・地理的な共通項から想像を膨らませ、「Vendy節」で描き出される、グロテスクだけどどこか愛らしい、ユニークな生き物などが登場します。
インドネシアと日本、ジョグジャカルタと浜松との間で羽ばたいたVendyさんのインスピレーションが、人と人との交流をたくさん巻き起こし、風景を変えました。これからも多くの人を引き付けたり、会話の種となったり、欠かせない町の風景であり続けることでしょう。
羽ばたいたといえば…子ども向けの凧作りワークショップ&凧あげも行われました。
2023年のジョグジャ・ビエンナーレも、アートと無縁な村を会場に加えたことで、たくさんの苦労があったはず。
彼の作品や活動は、アートと括られる狭くなりがちな領域を、軽やかにはみ出し続けているように感じます。専門的な教育を受けてこなかったというバックグラウンドだけでなく、彼自身の人柄に負うところが大きいのかもしれません。
彼の作品に惚れ込んで来日を企画したファブラボ浜松テイクスペースの竹村真人さんも、技術畑の方。テクノロジーの世界からアートと繋がろうとする推進力と行動力が、ありとあらゆるバリアを突破して、ものすごいスピードでVendyさんの来日を実現しました。
残念ながら日本(の主に都市部)は、文化芸術が日々の暮らしとかなり乖離している社会です。それを少しずつ変えていけるとしたら、竹村さんやVendyさんのような人たち・作品のお陰でなのかもしれない…と、未来の可能性を感じるできごとでした。
【参考リンク】
2023年第17回ジョグジャカルタ・ビエンナーレ
➡ 竹村真人さんによるNote記事
2016年東南アジアのアート・コレクティブ情報
➡ 小川希さんによる『新装改訂版 東南アジアリサーチ紀行―東南アジア9カ国・83カ所のアートスペースを巡る』