機械工学の4力学について
理工系(機械工学)を学んだ経験がある人であれば、聞いたことがあるはず。タイトルにある「4力学」について、今回は話をしようと思う。
大学や高専(工業高等専門学校)の「機械工学」に関する学科であれば、必ず履修する科目だ。機械工学と聞くと、製図や設計など実地的な内容を想像しがちだが、4力学はその基礎となる重要な科目である。
4力学を項目で説明しておくと「機械力学・熱力学・流体力学・材料力学」の4つで構成される。それぞれについては後に詳しく説明する。
4力学の目的と用途
先に説明した通り、4力学は基礎学問という位置付けである。高校で習う物理学に近いイメージだが、その内容は高校の時とは全然違う。
その最たる理由が、高度な数学の知識を使うところである。大学では4力学と同時並行で数学についても学習する。微分方程式に線形代数、ベクトル解析など高校の頃より高度な内容に触れることになる。
この大学で習う数学の知識を駆使して4力学の理解を深めていく。実は高校の物理学で習う範囲も多少被るのだが、その背景にあるのが大学レベルの数学の内容であることも多い。そのため、高校の範囲をより本質的に知ることにもなる。
大学や高専では4力学の知識をベースとして、電気工学や制御工学、情報工学など応用科目を履修する。実習科目においても、この知識をもとに高度な問題にチャレンジすることになる。
また、卒業研究ではこの4力学を自身の専門分野とした上で、より現実的な課題に取り組むこともある(私は4力学の中の材料力学を専攻していた)。
4力学その1 〜機械力学〜
ここからは、4力学(機械力学・熱力学・流体力学・材料力学)のそれぞれについて見てみる。
機械力学は、ニュートンの力学で言うところの「剛体力学」の話題が中心である。変形しないもの(剛体)の運動を扱う。
機械動作はカムやリンク、歯車などの機械要素からなる力の伝達を扱う機構学、センサーやアクチュエータなどを扱う自動制御学など幅広い分野があり、機械力学はその基礎(土台)とも言える。
また、4力学の中では最も高校の物理学と被る分野である。高校で習う物理学と微分積分(微分方程式)を足した感じだと捉えて頂ければ良い。
4力学その2 〜熱力学〜
気体や液体の持つエネルギーを扱う。高校の化学で学習する分子量や物質量の話も登場する。微分積分(微分方程式)やエンタルピー・エントロピーの話を除けば、高校の物理学とそう大差はない。
昔に使われていた蒸気機関車を説明すると、蒸気機関車は石炭や重油の燃焼により水を沸騰させ蒸気を作る。そして、作られた蒸気の力を利用して動力を生み出している。要するに、この熱が持つエネルギーによって、蒸気機関車は仕事をするということだ。
このサイクルを理解する上で必要なのが「熱力学」である。4力学の中でも原子・分子レベルのマクロな挙動を扱うことになる。
4力学その3 〜流体力学〜
気体や液体の流れ(流体)について扱う。後に説明する材料力学を含めて「連続体力学」と呼ばれる分野の一翼を担う。
私たちの身近にあるところでは、商用電力である水力・火力・原子力・風力発電については、流体のエネルギーを機械的なエネルギーに変換させている。また、航空機が上昇する際に必要不可欠な「揚力」についても流体力学の範囲である。
流体力学では多くの近似法を学ぶことになる。現実にはコンピューターシミュレーションが用いられるので、この近似法の知識は役立つ場面としては微妙だが、数値計算を知る上では欠かせない。
4力学その4 〜材料力学〜
弾性力学(=フックの法則)や塑性変形(永久変形とも言う)など、固体の変形を対象としている。
設計者の立場では材料力学の知識は必須である。なぜなら、壊れない機械や製品を設計すること、設計した機械や製品の変形挙動を予測することに繋がるからだ。
流体力学と同様に多くの近似が含まれており、実際にはコンピュータシミュレーションを使うことが多い。その代表格と言えるのが有限要素法である(私も学生時代に研究でお世話になった)。
前にも書いたが、流体力学と材料力学を合わせて「連続体力学」と称する時もある。
おわりに
今回は、機械工学において重要な「4力学」について紹介した。
実際に必要になる人は限られるものの、モノづくりの分野では必要不可欠な知識でもある。今後このような分野を目指される人には、ぜひ心に留めてもらえて損の無い話である。
個人的には4力学の勉強は物理学の延長で、結構楽めたと思う。だからこそ現在の仕事に就いているのだが、未だに勉強不足のところもある奥深い分野なので、引き続き楽しみながら勉強を積み重ねていきたい。
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最後まで読んでいただき、ありがとうございました。実際は非定期ですが、毎日更新する気持ちで取り組んでいます。あなたの人生の新たな1ページに添えるように頑張ります。何卒よろしくお願いいたします。
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