【『リトル・マーメイド(2023)』感想】ディズニーが貫く、夢与えるスタンス。(後半ネタバレあり)
こんばんは見て聞く映画マガジンアルテミシネマ(note版)へようこそ、Séaです。今回は最新作『リトル・マーメイド』実写版の感想!
動画版はYouTubeにアップしていますので、ラジオ感覚で聞き流したい方はぜひそちらも併せてどうぞ!
後半は警告後にネタバレパートに入り、そこでも山ほど語りたい事がありますが、まずはネタバレなしの感想をキャストと音楽について簡単に話させていただきます。
キャストについて
まずキャスト。
アリエル役のハリー・ベイリーの歌声が最高なのは予告や先日のコンサートでも明らかですが、大画面で聴く彼女の声はよりいっそう圧倒的です。彼女や人魚達のキャスティングについてはネタバレ編で長く語るのでここでは置いておきますが、通称"ハリエル"と言われているハリー・ベイリーによるアリエル、最高でした。
繊細な演技が印象的なハビエル・バルデムが演じたトリトン王は、威厳と心の奥底の迷いの両方を感じさせる素晴らしい配役でした。
エリックはこれまでそこまで目立った役ではなかったジョナ・ハウアー・キングが演じましたが、爽やかな美貌と人間臭さを兼ね備えた、庶民派冒険家プリンスにふさわしい雰囲気で、すぐ彼のエリックに馴染むことができました。
セバスチャンやフランダーのルックスが披露された時は"ただのカニ・魚じゃん…!"と笑ってしまいましたが、自然に動いて喋っている様子を観ていたらすぐに慣れ、"Under the Sea"を歌う頃にはもう見慣れていました。可愛かったです。
スカットルを演じたのは色々な映画で引っ張りだこのオークワフィナ。彼女の演技がまた最高で、物語のいいアクセントになっていたので、これから観る方はお楽しみに。
そしてアースラ。これまでも多くの映画で楽しい役を演じてきたメリッサ・マッカーシーが演じたのですが、彼女のパワフルかつコミカルな演技はまさにアースラを体現していました。
どの役も違和感なく、話にスッと入れるキャスティングが今回とても良かったですね。
黄金コンビによる音楽
そして音楽。キャストの歌がいいだけでなく、既存曲のアレンジや、今回追加されたアニメになかった曲も楽しい見どころになっています。音楽を手掛けたのは"Part of Your World"や"Under the Sea"、全追加曲を作ったディズニー音楽の神アラン・メンケン。
既存曲にたまに挟まる新しい歌詞に加え、すべての追加曲の歌詞を書いたのは『ミラベルと魔法だらけの家』『イン・ザ・ハイツ』のリン=マヌエル・ミランダ。黄金コンビによる素晴らしい音楽は、観終わった後もサントラアルバムを聴きたくなる魅力でした。
内容はアニメ版に忠実ながらいい具合に肉付けされて味わい深くなっていて、ネタバレ編で詳しくお話しますが、ディズニーの新たなメッセージも感じられる部分も増えています。まだの方はぜひ、美しい映像と迫力の音響と一緒に映画館でお楽しみください!
ということで、ネタバレなしの感想はここまで!
ここからは【ネタバレあり】の感想になりますので、まだ観ていない方は一旦観るのを中断することをオススメします!ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
ネタバレ編
ではネタバレ編になりますが、
まずエリックの人物像がアリエルと波長が合うことがしっかり分かるくらいに肉付けされていたのは話の流れが分かりやすくて良かったし、トリトンの葛藤と、最後に寂しさをふと呟く親心な切なさ、アースラが抱える怒りなどなど、それぞれのキャラに深みが増していたところが好きでした。
元々人魚のアリエルが人間の服がずぶ濡れでも一切気にしない描写があったり、それぞれのキャラの仕草などにも徹底されたこだわりを感じてました。
"人魚には涙がないから余計に辛い"という小説の引用から始まった今作で、アリエルが最後の最後に涙を流す、伏線回収的な粋な演出が素敵だったし、その後トリトンが涙を出しているようにも濡れているだけとも取れる目元の雫が映るというこれまた粋な映し方が印象に残りましたね。
そして何よりラストの、大量の人魚集結シーン。今回アリエルをハリー・ベ
夢を与える、ディズニーのスタンス
イリーが演じたことや、7姉妹の人種・ルーツがバラバラだったことにも繋がるのですが、ラストは性別も年齢も人種も関係なく色々な人々がマーメイドを演じ、"その先"への旅立ちシーンに繋がる。その流れには、ディズニーの今作の製作を通じて伝えたいメッセージを強く感じました。
実在の人物を誰かの演技で映画化するなら、ある程度見た目が似ていることが求められるかもしれない。でも架空のキャラ、ましてや人魚を、どんな人物が演じたっていいし、誰もがそれになることを夢見ていい。斜に構えたスタンスの人に綺麗事だとか言われても、時には真っ直ぐ綺麗な夢を描いてくれる存在が必要だし、それを誰より得意として、夢や希望をマジカルな形で人々に提示しながら世界に君臨してきたのがディズニー。ディズニーはこれでいい、ディズニーはこれがいい。そう思います。
もしかしたら今回アリエルの外見がアニメと似ていない事でがっかりした人がいるかもしれないけど、これまで憧れの人魚姫が自分に似ていないこと、ポピュラーなキャラクターに自分に似た人魚姫が並んでいないことにがっかりしてきた子供だって数えきれないほどたくさんいるはずです。
グッズの売上などで人気のある主要ディズニープリンセスを並べて実写化チャンスの数を数えたら、これまで既にオーロラ、シンデレラ、ベル、ジャスミンが実写化され、白雪姫のキャストは確定済。既に3人のプリンセスを白人が演じ、2人を半白人が演じるなら、そろそろ他の子供に夢を与えてもいいじゃないか。そのチャンスにふさわしいのが、架空の存在で誰が演じても一番自然になりやすい人魚姫アリエルだったんだと思います。
一つ、この類の話へのよくある反論として、じゃあ新規のキャラクターを作れとか、『プリンセスと魔法のキス』のティアナが黒人だからいいだろうとか、そういう言葉も目にするのですが、個人的にはそれはある意味リスキーな賭けで、そもそも『プリンセスと魔法のキス』自体の人気度が主要プリンセス達が出ている作品には到底届かないこと、これから作る作品ではどれくらい成功するかが分からないことから、もしかしたら"有色人種のプリンセス映画を作ったけど大失敗でした"という結果だけが残るかもしれないのです。それは人種のせいに限らず、物語、新曲もろもろの要素もあって成功が担保されていないからです。
それで失敗だけが結果として残り、人気作品としてヒットしないとなると、その映画では多くの人に夢を与えられるとは言えません。
その点、リトルマーメイドは実績から、物語、音楽、キャラクターに一定の成功を保証されていますし、事実今の時点でかなり業績もいいです。夢を多くの人に与えるチャンスを、より確実な作品のリメイクで行う。その選択が間違っていたとは全く思いません。
まして、アリエルをハリー・ベイリーが演じたことでブラックの人々に夢を与えられた、なんてシンプルな結論ではなく、ディズニーは今作の7姉妹やラストの大集合を通して、誰でも人魚姫を夢見ていいと伝えてくれました。どんどん名作アニメ映画を実写化する中で、このメッセージを盛り込むのに最適すぎるこの『リトル・マーメイド』で見事に世界にスタンスを発信したディズニーに、私は拍手を贈りたいです。
ツッコむなら?
ツッコむとしたら、トリトンの消滅からの復活辺りの展開がざっくりすぎたとか、エリックの歌があまり印象に残る曲じゃなかったとかになってくるかもしれませんが…。
全体としてかなり完成度の高い実写化で、ぜひまた観たいと思える内容でした!
終わりに
ということで今回はここまで!
今後も"アルテミシネマ"では皆さんの映画ライフがより楽しく充実したものになるような様々な記事・動画を投稿していきますので、今後ともよろしくお願いします!
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