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『旅人は旅の終わりを』第12話
建造物のあった場所からどんどん離れていく。
もうどれくらい歩いただろうか、空が少し明るんできていた。
時々案内人と言葉を交わしながら、長く白い真っさらな砂浜にただひたすらいくつもの足跡をつけていく。
まるで箒星になったみたいだ。
ふと足跡の行列を見ていると、白い砂のキャンバスに描かれる跡が一列だということに気がついた。
でもなぜそうなのかとか、どうなってるのかとか、そんなことは全く気にならなかった。
出会った時も、大きな建物の扉を一生懸命引いていた時も、ボクを襲おうというのなら幾らでも機会はあったはずだ。
案内人はボクを襲おうと企んでいる賊のようなものとは違う。
それに時々感じる愁いを帯びた声。
ボクはどこか懐かしく聞いたことのあるような気さえした。
案内人に向けてあなたは一体何者なのかと聞こうとしたが、やっぱりその言葉を口にする前に
「案内人だよ」
と案内人は言った。
「やっぱりね」
「ん?何がだい?」
ボクはいや別にと言うと何だかおかしくなってクツクツと笑い声をもらした。
「ボクはね、さっきなんだか箒星になったような気がしたんだ」
「箒星?」
「ああ、そうさ」
そう言ったボクはその瞬間から白い宇宙に黒い軌跡をつける箒星になった。
星から星へと長い尾を伸ばしながら今も旅をしている。
色々なものを見て色々なことを知った。
大切なものを失ったりもした。
でも箒星は戻らない。
たどり着く場所なんてわからず、身を削って出た尾をキラキラと輝かせながら前へ前へと進む。
「さて見えてきたよ、この旅の終わりが」
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