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アールヌーボーの画家・スタンランという人

こんにちは、小さな美術館館長です。
猫スタッフが、ミュージアムショップのリングノート2種類
について書いてくれました。
アールヌーボーの画家・スタンランの
「ア・ラ・ボディニエール」シリーズです。

今日は、この19世紀末に活躍したスタンランについて、
少しお話ししようと思います。
「小さな美術館」のレギュラー展示は、
スタンランの5点のリトグラフ。全て猫です。

スタンランが大変猫好きであることは、猫の版画やスケッチなどを
多く描いたこと、彫刻では猫しか制作しなかったことからもわかります。
また、多くの地域猫への餌やりもしていたようです。

猫は自由の象徴でした。自由な暮らしを志向するボヘミアン女性のメタファーでもありました。パリでブルジョワに飼われていた猫たちが、
モンマルトルで貧しい人々と共に自由に生きているその姿は、
自由の象徴とされ、そんな猫を愛していたのです。

スタンランはスイス生まれです。スイスの大学でデザインを学び、普通の職についていましたが、画家として活躍することを目指し、パリのモンマルトルにやって来ました。

そして芸術家の仲間入りをし、画家・ロートレックらと交流を深めました。芸術家が集った、パリで最初の近代的なキャバレー「ル・シャ・ノワール」のポスターは、彼の代表作です。その後はフランスに帰化して一生モンマルトルで暮らしました。

そのモンマルトルで猫以外に彼が多く描いたものに、
モンマルトルの貧しい暮らしをする人々の姿や、
戦争に苦しめられる民衆の姿がありました。

「悲惨と栄光」


「栄光」

スタンランが若い頃のフランスでは、報道の自由のための法律が成立し、
検閲が廃止されました。それにより人々は、社会の権力態勢を批判する、文学的な作品や芸術的な冊子などを、盛んに発行するようになりました。

社会主義者で、労働者の権利を主張していたスタンランは、
それらの出版物に、多くのイラストや版画を無償で提供しました。
指導者的に意見を言うより、作品で庶民の姿を描いて訴える事こそ
自分の武器だと考え、そうやって政治の矛盾や悲劇を社会に訴えたのです。
そうしてやがては、多くの出版物で知られていくようになりました。


先述の、スタンランがイベントポスターを手がけた店
「ル・シャ・ノワール」では、
知識の共有の為の文芸的・芸術的な討論や出版など、
盛んに文化的活動が行われていました。

音楽家たちも大勢出入りしており、
この店の専属ピアニストには、
有名なエリック・サティの名もあります。

音楽家たちはコンサートを開いたり、歌を作ったり、
それを「ル・シャ・ノワールの歌」として
楽譜を出版したり音楽活動も盛んにおこなっていました。

スタンランは、そんな音楽家たちの楽譜出版作品の、
表紙や挿絵の版画もたくさん制作し、版画集の出版もしています。

それらを9月の企画展示「音楽とスタンラン」として
紹介しています。


スタンランのストーリー、いかがでしたか。
彼のエネルギッシュな活動、社会へ向けるまなざし、猫への愛情、
それらを知ることで、私はよりスタンランの作品に魅了されました。

館長としてはやはり、
ミュージアムショップも是非のぞいてみてくださいと
最後に言わずにはおれません。

スタンランのスピリットを生活の一コマに取り入れられる
ミュージアムグッズを、あなたのお傍においてみてはいかがでしょうか。








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