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アンドレ・ブルトン André Breton (1896年-1966年) の誕生日 (2月19日) 仏 詩人・シュルレアリスム運動のリーダー

アンドレ・ブルトン André Breton (1896年2月19日-1966年9月28日)  フランスの詩人・文学者・医師。「シュルレアリスム」運動のリーダー。

実は「シュルレアリスム」という単語自体は、
ブルトンとは別人のギヨーム・アポリネール Guillaume Apollinaire (1880年8月-1918年11月) が作ったとのことですが [※1]、

ブルトンは、その単語をより世間に定着し得る形に深めたという自負があったのでしょう、
1924年に「シュルレアリスム宣言・溶ける魚」Manifeste du surréalisme / Poisson soluble を発表し、
そこでブルトンなりのシュルレアリスムの定義を記して
この書物がシュルレアリスムを語る時の古典となっています。

(私は岩波文庫版が出た時に購入して読みました。)

一方、アポリネールが自らの「シュルレアリスム」を示したとされる
戯曲「ティレジアスの乳房」Les Mamelles de Tirésias (1917年) の近年の上演を、たしかNHKのEテレで見たことがあります。

コミカルな前衛劇という印象ですが、
ブルトンのごとき心理の奥底をつかみ出す面は感じませんでした。

ただ、アポリネールの他の小説、
「オノレ・シュブラックの消滅」 La Disparition d'Honoré Subrac  (1910年) などは
幻想的かつ詩的であり、ブルトン派のシュルレアリストが書いていても不思議でない印象も持ちますが。

ブルトン自身は「幻想小説」は書いていないでしょうか。
「シュルレアリスム宣言」に接続する形でシュルレアリスムの作品例として示されている「溶ける魚」はシュルレアリストの「自動記述」に即した「詩」の集成であり、
そこではストーリーとなり得る「意味」が排除されていて
「幻想小説」とは異なる印象です。

ブルトンの代表作として辞書にも載る「ナジャ」NADJA (1928年 [1963年 著者による全面改訂版]) も岩波文庫で読みましたが、
ブルトン自身の体験から取材した記録文学的な作品です。
エンディングは、後世の日本のアニメから感じるような切なさ、悲哀感が
大胆に感覚をすくい取った筆致で表されている一方、
作品全体には日常の中に「キッチュ」でアバンギャルドなファクターを見出していく面白さが有りました。


※1
アポリネールが「シュルレアリスム」sur-réalisme という単語を初めて公に記したのは、
1917年5月初演のジャン・コクトー台本のバレエ「パラード」Parade のプログラム序文だといわれます。
アポリネールが書いた同年6月初演の戯曲「ティレジアスの乳房」は副題が「シュルレアリスム演劇」 drame surréaliste となっています。 



先日ネットで「シュルレアリスム」は「シュル」と「レアリスム」の複合語で無く、「シュルレエル」という語の変化形だという説明を読んで驚きました。

 「シュルレエル=超現実」は
現実を「超える」との意味で無く、
「とても」現実的である、という意味だそうで

その方が芸術的に深いですかね。

数十年前
「シュルレアリスムとは自分の目で描くことだ」と書いて
「お前はどんな目なんだ」と言われたのを想い出しました。

(「超」「現実主義」と区切らずに)
「シュルレエル=超現実」(に至ろうとする「主義」)  
と区切ると
その「とても」の意味であるということでしょうか。



一方、上のアポリネールの1917年「パラード」の表記ではsurとréalismeの間にハイフンがあるので (sur-réalisme ) 、
アポリネールにとってはsurとréalismeの複合語としての度合いが強い感じがします。

「シュルレエル」説は、アポリネールとの違いを出そうとした
ブルトンのほうの考え方かもしれません。



元来、「超」という接頭語は、正反対の二つの意味が有りますよね。

(そのかかる対象を)「超える」という意味と、「とても [そうである]」という意味との。

それぞれ「現実」にかかった場合、
「現実を超える=現実的で無い」という意味にも読めますし
 [「超論理的」という言葉が、そういう「論理的で無い」という意味で多く使われますね。 ]

逆に「とても現実的である」という意味
[写真のように精密な絵画「スーパーリアリズム」がそれでしょう。]
にも読めます。

私は「超現実主義」というと、その二つの意味が何となく矛盾したまま、言わば弁証法的に
「現実的で無いものが、現実の真相をあらわしている」という風な理解ですませていました。



関連  🔍 ウィキペディア「ギヨーム・アポリネール」


📖 ブログ内関連記事 (8月)

 

🔍 巖谷國士さん (「シュルレアリスム宣言」等の翻訳者) のTweet. 



(19日,8月,22年7月 更新)



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