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名画に学ぶストレスに強い心をつくる方法ーフェリックス・フェネオンの肖像編

私は”自分の心を整える”ということに関心があり、美術を通して自分の内面とどう繋がっていくのかを考えてきました。

もっと見ていたい・なぜか気になると惹きつけられる作品と出会ったらどうしてこの作品なんだろうと考えてみる。そうやって客観的に見つめることで自分の理解が少し深まります。

そんな中見つけたのが、アート鑑賞と心を整えるという本。
「はじめてのマインドフルネス 心を鍛える瞑想」
クリストファ・アンドレ著


この本ではマインドフルネスのトレーニングについて、フランスの精神科医師が26枚の絵画を使って紹介してくれてます。12カ国語で翻訳されフランスでもベストセラーになった本です。

今を意識して、歪めずにありのままに受け入れるという大切なメッセージを、絵画の中に見出して伝えるという内容に、絵は本当に自由に見ていいんだな!と発見もできる本でもあります。

今日は、ここに書かれている”大切なことのための時間を作る”ことを、私の体験談と一緒に、紹介されているポール・シニャックの絵とともにお届けします。さらに、本には書かれていない絵の背景を知ることで、著者がなぜこの作品を選んだのかが見えてもきます。

大切なことのための時間とは?

『作品番号217、尺度と角度、色調と色相のある、つややかでリズミカルな背景のフェリックス・フェネオンの肖像』

Opus 217. Against the Enamel of a Background Rhythmic with Beats and Angles, Tones, and Tints, Portrait of M. Félix Fénéon

ポール・シニャック(1863-1935年)1890年ニューヨーク近代美術館
画像はwikipediaより

ちょっと不思議な絵ですが、こちらは肖像画です。
不思議だと感じるのは背景の色鮮やかさや派手さ。そのため意識が手前の男性よりも背景に目が向いてしまうからかもしれません。

男性をよく見てみると、都会のネオンのような、張り巡らされている目に見えない電波のような、喧騒のようなチカチカする背景に全く無関心のようです。右手に持っている白い花に意識を向けています。

今から出かけるように、シルクハット、手袋とステッキも持つ左手に対して、右手は小さな花一本。まるで誰かに差し出すように出して、丁寧に持っています。

男性と白い花のように、忙しい普段の生活の中に”大切なことのための時間”を意識していますか?

それは自分のために使う時間

大切なことのための時間とは何でしょうか?

先日友人と食事に出かけました。ここ数年会っていなかったのでかなり久しぶりに色々と話すことが出来ました。

私が長年勤めた会社を辞めた理由などを聞きたかったようです。”何かこれといったきっかけや理由があったのか?”と。

私は今に行き着くまでの、ちょっとした違和感や気づきが大きくなってきたこと。そんな状況を変えたくて色々とやってみたこと。その中で葛藤もたくさんあって悩んだり苦しんだりしたこと。結構赤裸々に話しました。

しんどかったけど、自分が何を感じているのか?どう考えているのか?を客観視するためにノートに頭に浮かんだことを書き出してみる時間は大切だったことも話しました。

これが自分のために使う、大切なことのための時間でした。

友人は日常に忙殺されて”自分のための時間”を全然取っていないということに気がついたようです。休憩と言ってスマホを見たり、テレビを見たり。それが自分のための時間のように過ごしてしまっていたけれど違うよねと。

無意識の行動が多くなると自分との時間が不足する

「はじめてのマインドフルネス」に書かれているのは、現代社会はスピードと変化に満ちていて、注意があちこちに散るせいで、無意識の動作が増えているのではないか?という問いかけです。

私たちの心は気になったものにすぐ勝手に反応して、そこから自動的に思考を作り出す。常に何かを考えている状態は、行動が急かされて、無意識の動作を繰り返してしまうというのです。

私もついつい何かしながらyoutubeやvoicyを聞いたりする時間を取ってしまいます。もちろん勉強になることもたくさんあるのですが、自分とつながる感度が鈍るなと感じることもあります。

流れてくる情報、目に入ってくる情報が早くて大量なので、そこで何か感じてもそのことに意識を向けてみたり、考えを深めることができにくいから。

にぎやかで楽しい気晴らし、そして自分の好みに合った情報が流れてくるアルゴリズムによって、止めることが難しなったりするのも

だからこそ少しでもいいから1日の中に、複数のことをいっぺんにやろうとしない、一つのことを丁寧に行う自分だけの時間を作ってみることが大切。

本の中ではその時に気をつけたいことはこの3つと書かれています。
・ゆっくりと行うこと
・静けさを求めること
・中断しないで続けること

そうしていくうちに、自分の中で何が大切なのかということが見分けられるようになる。つまり自分の感度が上がることになるのだということ。

今日やったら明日すぐに変わるものではないけれど、日々の積み重ねが大きな違いになっていくものです。

ポール・シニャックとフェリックス・フェネオン

紹介した本は美術本ではないので、絵について詳しい説明はありません。でもこの絵の背景を知ると、なぜ著者がこちらのトピックにシニャックの肖像画を選んだのかが見えてくるように感じます。

描いたのは、フランスの画家ポール・シニャック(1863-1935)。

シニャックが描いたのは、友人でもありパトロンでも合ったフェリックス・フェネオン(1861-1944)。フェネオンは、編集者、翻訳者、アートディーラー、そしてアナキスト活動家と言われています。アナキストとは、国家や権威、従来の社会規範に対して反抗をして社会の変革を目指す、創造的で理想主義的な存在として、政治的、文化的な運動に関連した人です。

具体的にどんなことをしていたかというと、ジョルジュ・スーラ、ポール・シニャック、ピエール・ボナール、アンリ・マティス、アメデオ・モディリアーニなど、芸術家たちを支援してました。特にスーラとシニャックが採用した点描画法の作品を、第8回印象派展でNeo-Impressionism(日本語では新印象派)と名づけた人なのです!ただの支援者ではなくて、芸術家たちとの知的なパートナー関係として繋がっていました。

放射状に伸びるとても特徴的な背景は、シニャックが色々な取り組みをして完成した結果です。

持っていた日本の着物パターンを描いた本からインスピレーションを受けて採用されました。強い動きやエネルギー感を与える放射線状デザインです。

さらにカラフルな色の組み合わせは補色の異なるパターンが使われています。例えば、紫と黄色のアラベスク、オレンジとブルーのストライプや青には黄色の星模様。

小さな長方形で、パターンや形によってブラシの向きが色々な方向に向けられています。遠くから見ると目で色が混じり合い輝きが増す効果があります。

新しい色彩科学の理論を絵画に採用した革新的な画家たちを、世間の批判から守り支えていたフェネオン。一般的な枠組みから離れて、新しいアートスタイルや文化を受け入れ紹介する。それは人を楽しませることでもあり啓発することでも合ったのかなと感じるのです。

混沌とした背景の前に立って集中しているように見えるフェネオンの姿は、そんな彼の生き方を表しているようです。

自分の心の声に耳を傾け、日常の無意識ルーチンから一歩離れて自己発見と成長を追求することが、行動や選択に意味を見出し、新しい道を探求することにつながる。それが人生に豊かさや活力をもたらすのでないでしょうか。
この絵の色彩と強いエネルギーのように。

この絵をじっくりみたい方へ

ここまで読んでくださってありがとうございます。

▼もう少し絵をじっくりと細部まで見てみたいという方は、こちらから美術館のサイトへ

絵をクリックすると画面いっぱいに絵が表示されます。

https://www.moma.org/collection/works/78734


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