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アダプト伝説神話シール第二弾 開発裏話


このページでは「アダプト伝説神話シール:第二弾」の開発エピソードを紹介します。半年以上をかけて気合十分で作ったので長いですが、お好きな部分からお読みください!
※コスモテックさんの箔押しシールは「No12:原水神カヌン」になります。(シール番号No1~6の第一弾はこちらです)

No7:セクターNT

ノーマル、銀グリッター箔押し、ゴールド箔押しレア

セクメト(ライオン)の神。アダプト伝説はストーリー的に第一弾の「アダプト・ラー」から和の要素を意識して入れているため、このキャラクターもそうなっています。

リスペクトしたのはもちろん「マスターP」です。印刷費のかかるグリッター箔を利用して完成形になりましたが、そこに行き着くまでに失敗の印刷を何度も繰り返しています。

没になった印刷たち(下)

入手できた際はぜひお手元のマスターPと比較してみてください!

ゴールド箔押しレア

レアの金箔押しは今まで細かい箔ばかり作ってきたので、肌の部分に大胆に広い金箔を使う挑戦をしたところ、これはこれで豪華なシールになりました。シール全体を取り囲む神殿のような模様は、オートマンさんのような派手な枠の演出をしたくて作りました。

背景が緑なのはストーリー的に意味があります。前作で緑背景だったのは…?

No8:丞相トウコ

ノーマル、銀プリズム(青)、ゴールドレア

クールなメガネお姉さん。第一弾に登場したアイシスの同級生です。

アートタック、銀プリズム(青)、ゴールドレアの3種は第一弾と同じ印刷形態です。第二弾は特殊印刷チャレンジがとても増えてしまったので、この形式が逆に珍しくなりました。

ゴールドレアだけブラックライトに反応します

ゴールドレアは第一弾と同じく、ブラックライトに反応させて楽しむこともできます。

No9:暴神セトカ

シルバー箔押しレア、ノーマル、銀プリズム(紫)

獣の姿をした暴力の神。
銀プリズム版は珍しい紫色を採用。

手元に注目

箔押しレア版は、必殺技ファングボルテージの攻撃時に獣の姿のオーラで手の周りの空間がぼけて見える演出を採用。実際のシールを見ていただくと、何か上に透明シールが張ってあるような、不思議な演出になっています。
名前の「セ」の文字の中には角度によって獣の姿が映り込むチェンジングっぽい遊びを仕込みました。

No10:ゴーストNT

ノーマル、銀プリズム(群青)、アニメーションゴールドレア

「マスターP」リスペクトの「セクターNT」ができるのならば「金エンボスでゴーストアリババが要るだろう」と思いストーリー上も名前を絡ませてキャラクターを制作しました。

ところが、グリッター箔を使わない状態ではどうしても金エンボスの再現性に難があり納得の行く仕上がりにならず…

そこでいったん開発をリセットし、ゴーストNTは全く違う方向性のトリックシールとして作成することに。

エフェクト制作中の画面と、ハンターウエハース

ヒントになったのは「にふぉるめーしょん HUNTER×HUNTER シール×ウエハース」の背景エフェクトや、イシールさんのキタカゼ&タイヨウ。

見る角度によってギラギラとシール全体が変化して見えるようなエフェクトを背景、本体の両方に設定し、

最終的にこちらのツイート動画のように、光の当て方によって背景がアニメーションするトリッキーな豪華シールになりました。

完成まで半年以上かかる産みの苦しみが大きいキャラクターでしたが、とても所有満足感のあるいいシールに仕上がったと思います。

No11:母神ハトホルス

ゴールホログラム箔レア、銀プリズム(ピンク)、ゴールド箔押し

ゴールドホログラム箔、銀プリズム、金箔押しの三種。迷路の中に迷い込んだ牛神のモチーフなので、迷路模様を利用した一番トリッキーな箔押しを実験しました。

ホログラム箔は第一弾の姫神アイシスと似た処理ですが、今回白版を完全な白ではなく、白黒を半分ずつ並べたドット絵風に作成。攻め箔ならぬ「攻め白版」のようなデータです。結果、白なのに下のプリズムが透けてうっすら虹色が見える、という面白い処理になりました。(下部ツイートの動画参照)
AGAWAさんの亜乃恋姫ももしかしたら似た処理をしていたのかも…?とあとから気づきました。

金箔はこれまでで最も入り組んだものになりました。本体部分のアクセサリーは第一弾の財金ラー・アメンと同じように作りましたが、背景の迷路をホロ箔よりもかなり細かい迷路で作成したため、「角度によって金箔のなかに虹色が浮かび上がる」というあまり見たことのない演出になっています。(下部ツイートの動画参照)

また、ハトホルスはアートタックが存在せず、全て銀プリズム以上のシールになっています。第一弾をランダム販売する時に、「アートタック3枚」だとハズレに感じる人がいるかもな…と思い、この銀プリズムはアートタックの中に当たり枠として時々混ざっている形になりました。

ランダム方式は「想像より上のものが当たった時にすごくうれしい」のがキモだと思っており、第二弾ではアートタックにも当たりがある形です。荒木町ナイトさんのアートタックに当たりが入っている施策も参考にさせていただきました。

No12:原水神カヌン

ノーマル、銀プリズム(青)、コスモテック4重箔2種(ツヤ青)(色変化)

気まぐれな水の女神で第二弾の目玉キャラ。

第一弾で一番人気だった攻め箔「財金ラー・アメン」を超えるべく制作したコスモテックさんの4重箔シールですが、制作はこれまでのシールでダントツの大変さでした。

さすらいネキ

キャラのポーズはtiktokで話題だった「さすらいダンス」を参考にしたため、他キャラより若干頭身が高くなっています。

今回の4色箔は他の大勢の作家さんと発売時期がかぶるため、差別化のために5つの挑戦をしました。

左から青木さん、前田さん

自分は2月にコスモテックさんの工場見学に行って青木さんと名刺交換&「財金ラー・アメン」をお渡ししていたのもあり、とてもスムーズに案件を進めることができました。

■1つ目の挑戦は「疑似8色の使用」です。

スクリーントーンやゲームボーイのような網掛けを利用することで背景以外の「3つの箔で8色を表現する」データを作成しました。

4色で表現しているゲームボーイの網掛け(引用元:gigazine

網点が超絶細かくなったため「これは再現が無理かもしれない…」と思いながら提出したのですが、

コスモテックさんからは「どこまでこの繊細さを押し切れるのか未知数ですが、前のめりで挑戦させて下さい。」とのお返事をいただき、無事、超絶技術でバッチリ実現することができました。すごい…。

金属板の網掛け部分の繊細さがすごい


■2つ目の挑戦は「背景の錯視エフェクト」です。

ゴーストNTでは「光を当てると動くシール」という方向性で紙メディアながら動きを追求しましたが、他に何か動きをつけられないか考える中で「そういえば、静止画なのに動いて見える錯視があったな…」と思いつき、

ちょうど3色で作れることがわかりイラレでデータ作成。完成データが細かすぎるため、コスモテック前田さんが位置合わせをしやすいよううまく配慮しながら配置しました。「大丈夫でしょうか…」と相談しながら進める形になりましたが心強いお返事をいただき、全くズレのないエフェクトが完成しました。
コスモテックさん自身も「箔の押し位置や精度は、針穴に糸を通すような感覚がありました。」とツイートされていました。本当にありがとうございました。

キャラクターが大きく描かれているので有名な錯視のように派手に動いて見えるか?というとそうでもないのですが、あくまでチャレンジ要素とお考えください。

■3つ目の挑戦はカラーチェンジ箔の使用です。(埋め込みツイートに動画あり)

2月にコスモテックさんの工場を見学した時に見せていただいた数十種類の箔の中で2023年11月に発売された新製品「ピンク→グリーンにダイナミック変化をするトラストカラー箔」がとても印象に残りました。(見学で使用済みの箔の欠片を持ち帰れたのですが、迷わずトラスト箔を持ち帰り、これをシールに使えないかなぁ、と家で何度も見ました)

その時持ち帰った使用済み欠片の写真(上)を添付しつつ「お任せ箔なので難しいとは思いますが、この箔を使ったりできますか…?」とお尋ねしたところ、使用していただくことができました。商品が届いて開封後、トラストカラー箔だった時はとてもうれしかったです。

トラストカラー箔(コスモテックInstagramより)

色の変化は上の写真がわかりやすいです。正面から見ると「紫~ピンク」、角度がつくと「黄色~緑」とダイナミックに色変化していますね。

また、これに加えて完成品ではコスモテックさん独自の判断でトラストカラーのKURZ社が2021年に生産を終了した貴重な「ポーラライト箔(!)」を使っていただきました。

既に廃盤のポーラライト箔(コスモテック様ブログより

ポーラライトは"メタリック調の光が見る角度によって、グリーン・スカイブルー・パープルのように変化して見える唯一無二の不思議な箔(上記ブログより)"です。

なんと、今回の原水神カヌンはカラーチェンジ箔を2つも利用した、非常に特殊で豪華なシールに仕上がったのです。

使用部分は主線の周り部分。トラストの「ピンク→グリーン」に目が行ってしまいがちですが、輪郭の「スカイブルー→パープル」という高級感のある色変化も楽しんでみてください。ポーラライトはもう永久に手に入らないものだと思っていたので本当に驚きました。

自分はものづくりこだわりが若干強いため、どうしても思い描いた理想形を形にしようとしてしまいますが、お任せ箔は「考えていた理想形を超えてくることがあるんだな…」と、とてもうれしかったです。


■4つ目の挑戦は「もし可能なら、裏面をド派手なレインボーにしたい」というものです。

(左)T1-N79レインボー、(右)LASER SELECT/385(ゴールドホログラム)

仕様が繊細すぎる表面では使いにくかったレインボー箔を裏面では大胆に使用できています。2種どちらも違う形で楽しめる仕上がりになりました。

■最後5つ目の挑戦は「豪華な台紙の制作」です。

OKACの309kg台紙(シルバーレインボー箔)

OKACの309kgという分厚い紙に、シルバーレインボー箔で箔押ししています。(こちらはコスモテックさんの箔押しではありません)
アダプト伝説神話シールはランダム販売なので、開封前の手触りでも「なんか違うな」→「当たりだ!」の喜びを味わえるよう、別途費用はかかりますが台紙付きにしてみました。単独で飾るときにも使えます。

ちなみに、全力を出し切りたいという異常なこだわりが出てしまい、台紙は3種の微妙なバリエーションがあります…。おそらくこの「原水神カヌン」は、僕が過去40年間で作ってきたものの中でも、最も複雑な作品の一つになったと思います。この年で全力が出せるのは恵まれている…。

まとめ

ということで、長くなってしまいましたが「アダプト伝説神話シール第二弾」のご紹介でした。さん家祭り2024(8月11日)で販売後、在庫をbooth通販で販売予定です。

最後に、今回は第一弾と比べて印刷費が大幅増になってしまい、
(第一弾からの増加分:箔押しシールの倍増(2種→4種)、グリッター箔、コスモテック様4重箔×2、シルバーレインボー箔台紙×3)

「500円+税」での提供がどうしても難しい状況になってしまいました…。
大変申し訳無いのですが、600円(さん家祭り)、600円+税(booth)で販売できればと思っています。オフラインイベントなのにお釣りが出る端数の価格で申し訳無いです…

まずは「さん家祭り」でみなさまにお会いできるのを楽しみにしています!

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