File.15 村上藍さん(ピアノ)インタビュー
――現在の活動内容を教えてください。
ピアノの演奏活動をしながら、東京都でピアノ講師の仕事もしています。
――音楽活動を始めたきっかけを教えてください。
現在の音楽活動の中心は、アンサンブルになります。目指したきっかけは、確か中学校のときに聴きに行った室内楽のコンサートだったかと思います。ソロではなく、違う楽器と一緒に演奏するピアノに魅力を感じました。それから、室内楽にいつか挑戦したいという気持ちを秘めて、中学2年のころピアノを本格的に学び始めました。小学校のころからオペレッタなどの声楽を学んだり、リコーダーの部活にも入ったりしていたのでアンサンブルは小さいころから好きだったのかも知れません。
――表現の中で大切にしていることはありますか?
テクニックに集中してしまうと、表現することがおざなりになってしまうので、テクニックのためのテクニックにならないよう、“自分が表現したい音楽をするためのテクニック”と捉えるようにしています。普段の練習も、テクニックを磨くものではなく、自分のやりたい音楽を表現するために練習しています。
――「自分のやりたい音楽の表現」とはどういったものでしょうか?
歌うような表現といったところでしょうか。というのも、他の楽器に比べてピアノは、表現がしにくい楽器なんです。管弦楽器や声楽は、音を奏でた後に抑揚をつけることができますが、ピアノは指で鍵盤をたたいたその瞬間が一番音が大きく、その後自然に音は小さくなっていくため抑揚がつけにくいんです。表現のしにくさはピアノの短所であり特性ともいえるかもしれませんね。その特性を活かすために、何か別の楽器からヒントを得て表現を豊かにしたいと思いました。私にとってその楽器とは、幼いころから身近にしていた「うた」です。表現に迷ったら、「どんな風に歌おうか?」と自分に問いかけます。具体的には、こっそりとピアノの旋律を歌ってみるんです。すると音楽は、ピアノで弾いたときとは違った印象を見せてくれます。それに近づけるように、あとは試行錯誤をします。
――村上さんの音楽を聴く人に、どんなことを感じてほしいですか?
“こう感じてほしい”という思いはありません。同じ曲でも演奏者が変わると、全く違う音楽に聴こえるし、聴く人が変われば聴こえている音楽も人それぞれ違うと思います。その自由さが音楽の良さだと思うので、特に拘りはありません。
――「長野県ゆかりのアーティスト コンサート・ライブペインティング」では、どんな発見がありましたか?
今回は、音楽アーティストと画家アーティストが協同で、とある女性の恋の一生を描きました。既にきちんとした筋書きのある音楽の物語に、画家のアーティストさんが、更に物語を追記してくれました。これには驚きましたし、普段クラシックの中に留まっていると中々思いつかないような、柔軟な発想を感じましたね。これまでの演奏では気づかなかった側面が、絵で表現されていましたし。この曲を知っている方は新しい発見を見出せ、曲を知らない方は絵があるので音楽の世界に入りやすい舞台になったかなと思っています。
――next登録アーティストとしての音楽活動はどうですか?
nextには、4~5年ほど前のキッセイ文化ホールの主催公演に出演したときに登録しました。今回の舞台のように、芸術という大きな枠の中で、違う分野の人と活動できることは、とても貴重な機会だと思っています。このような大掛かりなことはアーティスト個人では中々できないので、きっかけがあることは嬉しいですね。
あとは、今回は先に演奏する音楽が決まっていた中でのスタートだったので、実はパワーバランス的には音楽の方が強かったんです。ですので、もしも次回があるなら、曲を決める段階から、音楽家と画家が協力してできると、また違った面白いものになるかもしれません。
――これからの目標を教えてください。
演奏活動とピアノ講師の仕事をしっかりと邁進していきたいと思っています。
また最近は、演奏会の台本の執筆や司会など、音楽の舞台を演出することにも挑戦しています。今回の演奏のように、音楽家が演奏するだけではなく、一人の表現者として音楽にどう向き合うのかを考え続けたいですね。
私にとって音楽は、自分の気持ちを表現するときに言語で語るのが難しくても音楽があればそれが表現できるように、自己表現のツールの一つでもあるんです。また今回の舞台で音楽家と画家が結びついたように、音楽は人と触れ合う方法の一つでもあると思います。
音楽には、人と人とを結びつける力があると感じています。
(取材:「信州art walk repo」取材部 水科汐華・町田弘行・藤原亨)