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File.05 小林夏実さん(ピアノ)インタビュー

5歳のときから片ときもピアノを離れなかったと話す小林さん。人の縁を大切にしながら、今日、プロとして活動するに至るまでの歩みを伺いました。

―― 現在の活動を教えてください。

長野市内の楽器店でピアノ講師をする傍ら、フルートやヴァイオリン、サックス等の楽器とのアンサンブル、市内の合唱団のピアニストとして活動しております。また最近では、中学校や高校の吹奏楽のソロコンテストや合唱の伴奏もさせていただき、年間を通して様々な場所で演奏の機会をいただいております。
2021年2月には長野市芸術館のランチタイムピアノコンサートにも出演させていただきました。

小林夏実.写真候補⑫

―― ピアノを始めたきっかけはなんですか?

母が昔、ピアノを習っていたこともあり、幼稚園のときに「ピアノをやってみたら?」と薦められ「じゃあやってみる!!」というのが始めたきっかけです。
当時の母は厳しく、幼稚園のピアノ教室で出された宿題を見てもらっていたのですが、練習をしないと友達と遊びに行かせてもらえませんでした。それも毎日(笑)
その後、中学に入学して部活動で音楽をやりたいと思い、合唱部か吹奏楽部のどちらにしようか迷っていました。結果、吹奏楽部に入部したのですが、部活動見学時の先輩たちの演奏が華やかでとても素敵だったのが理由です。楽器はトランペットを担当していました。その楽器を選んだ理由は、楽器がキラキラ輝いていて「カッコイイ!」と思ったからです。その後、音が出せるようになるまでがとても大変でした。
最近わかったのですが、どうやら唇が薄い人の方がトランペットに向いているそうです。「だからなかなか音が出なかったのか!」と納得しました。
中学2年生の終わりに部活動を辞めて、ピアノに専念することになりました。その時、やっぱり私はピアノが好きなんだなと改めて思いました。

―― 他の楽器に目移りせずに、ピアノ一筋になれた理由を教えてください。

あまりそのことを考えたことはありませんが、あえて言うならば子どもの頃から一番身近にあったということと、鍵盤を押せば誰でも簡単に音が出せるというところでしょうか。
ピアノは、誰でも簡単に音が出る一方で感情豊かな音色も出せる楽器です。そんな奥が深いところにも魅力を感じています。

―― 一日にどのくらい練習をされるのでしょうか。

仕事の時間が日によって違うので決まっていませんが、時間があれば練習するようにしています。子どものころから負けず嫌いで、レッスンで曲の合格をもらえないと悔しくてひたすら練習していました。
また、新しい曲をもらったら次のレッスンまでに弾けるようにしていくのが好きだったので、一生懸命練習していました。弾けずにイライラすることもあって、譜面をグチャグチャにしたことが何度もあります(笑)
ピアノを辞めたいと思ったこともあります。小さい頃ですと発表会で思うように弾けなかったりして泣きながら辞めたいと思うのですが、不思議と何日か経つとその気持ちがおさまるんです。
中学1年生のときに発表会で難しい曲を弾いたご褒美に両親がグランドピアノを、祖父が練習室を作ってくれ、それが嬉しくて沢山練習しました。今もそこで練習やレッスンをしています。
たまに弾きたくない日もありますが、そのような日でも指慣らしだけはするようにしています。

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―― 演奏するうえで大事にしていることはありますか。

まずは曲の時代背景を考えます。当時の社会情勢や、その頃に流行っていた音楽や物、作曲家本人の恋愛事情なども曲に影響していたりするので、それらを調べてなるべく音にするようにしています。
あとは、楽譜にp(ピアノ)やf(フォルテ)など記号が書いてありますが、それらにはただ弱いや強いだけでなくいろいろな意味があるので、どのような場面なのかを感じ、作曲家の意図を汲み取るようにしています。
先ほど申し上げましたが、ピアノという楽器は他の楽器と違い、鍵盤を押すだけで簡単に音が出る楽器です。ですが、指の使い方や腕の使い方、鍵盤への体重のかけ方で音が変わってきます。曲それぞれの表情に合わせて表現するようにしています。

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―― nextに登録したきっかけを教えてください。

10年ほど前、若手演奏家を対象にnextができることを知人から聞き、ちょうど演奏活動をしたいと思っていた時期でもありましたので登録しました。
ただ、ピアニストの登録が多く、埋もれてしまっているのではないかというのが怖いところです。演奏のご依頼、お待ちしております(笑)

―― nextに登録して良かったと思うことはありますか。

ピアノはソロでの演奏のイメージが強く、それだけで成立してしまうと思われがちですがアンサンブルにおいても重要な役割を担う楽器でもあります。私はアンサンブルや室内楽も好きなので、nextに登録してからそのような機会をいただけるようになったので嬉しく思っています。

―― 今後、nextにどのようなことを期待されますか。

コロナ禍の影響で演奏の機会が激減してしまったので、以前と同じようにはいかないまでも、演奏ができる場を多く作っていただけたらと思います。
また、様々な楽器や歌の方との共演する機会をいただけたら嬉しいです。

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―― コロナ禍によって活動にどのような変化がありましたか。

先ほど申し上げましたが、コンサートやコンクールの延期・中止が相次ぎ、演奏する機会がかなり減ってしまいました。その一方で、オンラインでの演奏が急速に普及したことで、クラシックを聴くことへのハードルが下がり、気軽に聴けるようになったのは大きな変化だと思います。私自身も投稿することがありますし、感想をダイレクトにいただけるので励みになります。それがきっかけで興味を持ち、実際に演奏会へ足を運んでくださる方もいるのが嬉しいです。
また、オンラインレッスンを希望する方もいらっしゃいます。ただ、オンラインレッスンはタイムラグがあり、音が電子的になってしまうため、伝えたいことが上手く伝わらず歯がゆい思いをすることもありました。
現在は対面レッスンができるようになったので、嬉しく思っています。

―― レッスンは主にどのような方を対象にしているのですか。

未就学児から大人の方まで幅広い世代の方がいらっしゃいます。
大人の方には、子どもの頃に習っていて仕事や子育てがひと段落着いたから再開したいと言って始める方や、最近のストリートピアノの流行により「○○さんみたいにピアノが弾けるようになりたい!」という初心者の方もいらっしゃいます。大人の方は「この曲が弾きたい!」という思いで来られるせいか、とても吸収が早く驚いています。

―― 幅広い層の皆さんから出演オファーがおありですが、なにか意識されているのですか。

特に意識はしていません。
例えば、高校の合唱の伴奏は私がピアニストをさせていただいている合唱団の団員の方からお声がけいただいたのがきっかけですし、その合唱団もピアノの恩師と、あるイベントに同行した際にご依頼をいただきました。不思議といろいろな方との繋がりで今までやってくることができました。

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―― リサイタルを行う際、会場を選ぶにあたりどのような点を気にされますか。

まずは会場の大きさです。「ホクト文化ホール」の中ホール(984席)の響きがとても好きですが、客席数が多く、埋められなかったらと思うと怯んでしまいます(笑)
なので「ホクト文化ホール」の小ホールくらいの大きさ(300席)が理想です。
会場費も気になりますが、ホールの響きが大きなポイントです。先ほどの「ホクト文化ホール」の中ホールや「長野市芸術館」のメインホール、リサイタルホール、「松代文化ホール」、少し離れますが飯山市の「飯山市文化交流館なちゅら」の響きが好きです。とは申しましたものの、大小関わらずいろいろなホールで演奏したいというのが本音です。

―― 2022年はどのような活動スケジュールでしょうか。

2022年4月下旬と10月に「松代文化ホール」でワンコインコンサートをさせていただきます。4月はサックスとヴァイオリンとのアンサンブル、10月はソロです。未就学児もお入りいただけますし無料ですので、お気軽に足をお運びいただけたらと思います。
この他にもお子さんや大人の方などのレッスンを行いながら各所でコンサートを行っていく予定です。

―― 今後の目標を教えてください。

3年前に初めてリサイタルを開催させていただきました。開催時期は未定ですが2回目のリサイタルを開くことを目標にしており、そのための準備をしています。

<略歴>
長野市出身
桐朋学園大学音楽学部附属「子供のための音楽教室」長野教室を経て、2008年桐朋学園大学音楽学部演奏学科ピアノ専攻卒業
<受賞歴>
第17回長野県ピアノコンクール大賞受賞
第38回国際芸術連盟新人オーディションにて奨励賞受賞
第16回・17回日本クラシック音楽コンクール全国大会入選
第12回JILA音楽コンクールピアノ部門第2位

小林夏実.写真候補⑪

(取材:「信州art walk repo」取材部 西村歩・香山羊一・伊藤羊子)

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