【百合小説】第3話 アイデア①
ドッドッドッドッドッドっドトトトット
スマホをしまい足早に実験室に向かうと床を蹴る音が走った後の脈よりも早く近づいてきた。
「さっちーーーーーー」
「あ、嘉陽田さん」
「ちょっ・・・っとギブ……肩貸して」
走り疲れたのか私の右肩に寄りかかる。
学系は言っていないはずだがなぜ居場所がわかったのだろうか。
「なんでわかったんです?」
「愛だよ」
出会って半日で愛を持ち出された、冗談だとしても尻軽女だと思ってしまったことを恥じる。女性同士のスキンシップとはとはこういうものなのか?不思議ちゃんとは言えない程人に執着があるのか、それとも万人に対してそうなのかは分からない。
「これ私の漁っていいから…私のバック」
バックを前に持ってきて、漁るように促す。ペンケースが欲しいだけなのに何か別の魂胆がある気がする。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「ぷぇー」
手を出さないと、ふてぶてしい表情を顔に出しながら嘉陽田さんはバックを漁り、私のペンケースを取り出す。
「これ、筆箱」
「あありがとうございます…私これから生物実験室なので…」
「私も行くよ」
「いまなんて」
「私も行く、ほら、遅れたの私のせいじゃん?だから一緒に謝れば遅刻免れるかもよ〜」
今声に出してたのか、返事を返された。何か考えながら話すように、たどたどしくそれっぽい理屈を並べてくる。
「大丈夫ですよ」
「私生物実験室場所分からないんだよねぇ〜」
国際の人は用事がないのか、場所を知らないらしい。確かに理系学系の校舎にあるし、他学系の人が使っているのかは分からない。
2人足を揃えて階段を降りる。
「今日何するの?」
「アザラシの解剖」
「アザ…豚じゃなくて?え、やだやだよゴマちゃん…」
「なにそれ」
この高校のためと、近隣の水族館や動物園から、授業で役に立つ様にと動物の死骸を頂く。
生物学系か美術学系が解剖して、メモを取ったり骨格標本を作ったりする。解剖が終わり解体が終わると、その肉を使い大学のカレーサークルがその肉を使ってカレーを作ったりする。
「えちょっとやめようかな」
「私行くね」
「やーだーいっしょにいたいー」
「」
贅沢な子だねぇ、なんて言える程の仲なのか、名前を奪ってしまうところだった
「ブフォ」
「さっちゃん?」
どこかで見たネタを思い出し思わず吹いてしまった。確かバババーバ・バーババとか
「いやっっ…ぶはっ…ごめんちょっ…腹」
敬語とタメ口が混じってる気がする。距離感が未だ掴めない。
「え……大丈夫?」
嘉陽田さんが私の心配しつつ、私のお腹を摩り始めた。何故だ。
「元気に産まれてきてねぇ」
「誰の子」
「私の?」
何を言ってるんだなんで…おかげで冷静を保てるようになった。
「子供の名前さ、ゆずちゃん可愛くない???」
「可愛いですけども…」
恥じたことを後悔する。本当に尻軽女なのかもしれない。
階段を降り、生物実験室に着いた。ガラス張りで中が見えるが、先に着いてる人達は円で何かを囲み先生の話を聞いている。
私よりも先に、嘉陽田さんは躊躇なくドアを開けた。