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百合小説【第13話】友達でいたかった

「ん…………?」
スマホの時計は13時と書いている。昨日のことは鮮明に覚えている。体に触れられた時の感触が今たまに残っていてむず痒くなる。脱ぎ捨てられた制服にはシワがたまり、嘉陽田さんのベッドで1人裸体のまま寝ていた。
「おはよう、ココアいる」
「あの」
「?」
平然とした顔で嘉陽田さんが声をかけてこちらに来た。
「なんでそんな顔していられるんですか?」
「あれが私の気持ち」
毅然とした態度でこちらの目を見てそう話す。私の初めては、男の子ではなく女の子だった。それも不本意に奪われた。気味の悪さはあるがそれを全て否定はできないし、実際昨日?今日のそれはノッていたところがある。彼女の気持ちに応えたら嘉陽田さん貴方は救われると思う。私の事が好きだと、そう真っ直ぐに伝えられた。ただ気持ちの整理はつかないまま頭にモヤがかかる。少しの沈黙を後に口を開いた。
「少し落ち着かせてください」
「ここ置いとくね」
私の分のココアがテーブルの上に置かれる。その温かさだけを手で奪い、口につけることなく嘉陽田さんがトイレでいなくなるタイミングを見計らいその場を立ち去った。
課題は無事に終わったが、授業内には出せずに学校にも行く気にはならず、向かっていたはずの学校を引き返し、神楽坂の人気の少ない所で宛先もないままふらつき歩いた。家族にLINEを入れた途端、直ぐパパが電話をかけてきた。
『もし…』
『小百合!お前どこで遊んでんだ!昨日どれだけお前のこと心配してたかわかってんのか?』
『無事なんだよなあ』
『ごめんなさい…』
『無事なんだな?で、学校は』
『休んだ』
『そうか、んで友達の名前は』
『…』
『本当に友達なのか?友達なら名前くらいは言えるだろう?』
『……』
『はぁ…それで?今日はどうするんだ?』
『その…ちょっと1人になりたくて』
『そうか、お父さん家今日仕事休みだから、帰ったらゆっくり聞かせてくれ。』
『うん』
高圧的な言動だが、何も連絡せずに帰らなかった私が悪い。学校には休むことをメールで伝え、課題は次先生と会う時出すと約束した。

誰かに相談したい、5ちゃんや知恵袋でそのような事例を探しても納得いく答えはなかった。
友達にL〇NEで話そうとしたが、今はどうしてか誰かの声が聞きたかったのだろう。電話をかけてみた。
『どうしたのさっちゃん珍しいね』
『あのね…』
『ん?どしたよ』
『話したいことがあってね、今日の夜空いてる?』
『大丈夫だよ!…さっちゃん元気ないね』
『ごめんね』
『謝らないで…今でもいいよ?』
『予備校は』
『別に1回や2回大したことないって!そういうのは早い方がいいって!うち…あぁサボってるの知ったら怒られるしなぁ…御茶ノ水来れる?』
『いいよ』
『よし決まり!着いたら連絡してねー』
電話を切り、瑞稀のいる御茶ノ水に向かった。


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