絵を“言葉で説明する”とわかる! コミュニケーションの落とし穴と本質
当社の対話型アート鑑賞研修の中には、一人だけ絵を見て、それを言葉で説明するプログラムがあります。それを聞く参加者は、説明したもらったことを元に、正確に描けるかどうかをチャレンジします。
実は、この視覚情報を言語化するプロセスで、コミュニケーションの落とし穴がハッキリと浮き彫りになります。
*以下の画像は実際にプログラム使用しているものではありません。本記事の説明用に入手したものです。
さて、では上の絵を事例として、説明する側の傾向をみてみましょう。
大まかざっくり説明タイプ
猫が三匹、立っています。
顔はみんな楽しそうかな。
この猫が立っていると言っても、両手両足を伸ばして立っているもあるし、前脚は浮かして、お手のような状態もありますよね。
同じ立っていると言っても、説明する側と説明される側とは、それぞれ違う状態を思い浮かべる可能性があります。
ここでのコミュニケーションの落とし穴は、説明する側は、自分自身の前提の元に伝えようとしてしまっていることです。
几帳面な説明タイプ
まずA4の画用紙を横に置いて、横幅を四等分にしたところ、そこから上に3センチほど行ったところを中心に、楕円を書きます。それから、その楕円の中心から放射線状に45度ずつ線を書きます。それから....
このように正確に伝えるために、まるで機械のように伝えようとする方もいます。
ただ、説明される側は、果たして何を描いているのだろうかと不安になってきます。本当に際限なく細かく説明がなければ、ペンを動かすことができなくなってきます。
やはり曖昧でも良いので、最初に何を目指しているのか(例えば動物なのか? 景色なのか?)を提示した方が、互いの目標が共有できてスムーズです。
ここでのコミュニケーションの落とし穴は、マイクロマネジメント(事細かく指示をすること)に陥ってしまうこと。説明される側は、自分が機械になったような気持ちになり、モチベーションが生まれません。
印象のみを伝えてしまうタイプ
かしまし三姉妹のような猫たちです。軽くダンスしている感じもして、3匹はきっと仲良しなんだと思います。尻尾も楽しげな感じで、三匹を見ていてと、とても愉快な感じがします。
この「・・な感じ」などの曖昧な表現だと、説明される側は、どう描いたら良いか戸惑ってしまいますよね。判断に悩み、結局、ペンが進みません。
ここでのコミュニケーションの落とし穴は、互いが理解しあえる客観情報が必要だということ。
さて、聞く方が正確に描けるためには、どのように説明すれば良いのでしょう。
実は、上記3つ、全て必要なのです。
(1)大まかな説明は、完成イメージを示すことになります。
(2)緻密な説明は、具体的な描き方を伝えることになります。
(3)印象の説明は、自分自身の主観を共有することで、抽象的な絵のタッチなどを伝えることができます。
この3つをうまく組み合わせて説明することが大切です。さて、これをコミュニケーションに置き換えるとこうなります。
(1)大まかな説明は、向かうべき方向性を示すことになります。
(2)緻密な説明は、具体的なアクションを伝えることになります。
(3)印象の説明は、自分自身の主観を共有することで、他者に新たな視点を提供できます。
視覚情報という絵を言葉で伝える。このとてもシンプルなプログラムには、とても多様な気づきが得られるパワフルさがあるのです。
本プログラムは、チームビルディング向け「アートでおしゃべり」には含まれておりませんが、リクエストには随時お応えしますので、お気軽におしゃってください。
記事:フクフクプラス アートファシリテーター 磯村歩
対話ができるチームをつくる テレワーク時代の組織づくり
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