2020年に開催した個展のタイトルに込めたこと。日本語のおくゆかしさ。
絵描きの一瀬大智です。
2020年は緊急事態宣言や予期せぬことが多くあったなか、個展を5回ほど開催しました。
毎回うんうんと考えながら決めるタイトル。
「どういう意味があるの?」ともよく聞かれたので、
こんかいは、個展のタイトルについてのことを書き記しておきます。
5回の個展、どんなタイトルつけた?
2020年の個展タイトルは以下のとおり
・あおのつれづれ
・ひびのふきぬけ
・いみのなけなし
・くうきはうかぶよ
・つまりはあかに
場所はギャラリーからカフェ、古民家など
バラバラ違う場で行いました。
ここからはタイトル1つずつのイメージについてつらつらと。
タイトルのイメージについて
明確に意味があるわけではなく言葉のニュアンスで大方は決まっています。
①「あおのつれづれ」
あお は(緑)のイメージ。つれづれは退屈、変化のないという意味なので、
2020年大きな変化があったなかでも、人間以外からすればなにも変わらないんじゃないかと。日常的・変化のないイメージをタイトルに。
②ひびのふきぬけ
日々がするすると抜け落ちるイメージをタイトルとして表したかったので、
自身とは遠いところで大きなことが起こっていても、生活自体は大きく代わり映えすることは少ない。
気づけば終わっているような、日々が溜まることなくふきぬけていく感じを言葉にして。
③いみのなけなし
これは言葉どおり意味がない、とてもわずかな・ちっぽけなを表したもの。
②番の ひびのふきぬけ が緊急事態宣言で中止を余儀なくされるなかで、絵を見てもらったり描くことは何なんだろうとおもっていたこともリンクしています。
なにかと意味を求められるし説明せよと迫られることが多いし、自身も求めることが多いけど、そんなに意味なんてあるもんじゃない。と思うことも多々なのでそういった気持ちも含めて。
④くうきはうかぶよ
空気は浮かんでいるという、考えれば当たり前の言葉をあえてつけました。
この個展は愛媛県での開催ということもあり、当初は瀬戸内や島あたりの海の上にある空気感をイメージして。
一定期間現地で滞在制作するということで
その土地に住んでいる人からすると何気ない、いつも見えるものや近すぎて知らない風景をモチーフにしたので、
当初の海がモチーフではなくとも「当たり前を写す」ところは変わらず。
⑤つまりはあかに
12月の展示会ということもあり1つの終わりを意識したものにしたかった。
また、②番の一度中止になった場所での開催ということも影響がありましたね。
つまり、は結果をあらわす言葉で
あかは赤の他人などにつかわれる赤。
あきらかに・まったくなどの意味で使われるので転じて終わりや、これまでの強調としてこのタイトルに。
①と⑤のあおとあかの「色」について
①あおのつれづれ
はじまりは青くさい、青春といったはじまりを意識する青に。
⑤つまりはあかに
1年の終わりは赤の他人や真っ赤な嘘など、あきらか・強調の意味でつかわれる赤を最後に。
また、最初がBlau katze(青い猫)というギャラリーで開催、
最後がイチゴをデザートに使った、Sweetscafe gallery ℃での個展ということもイメージにつながってます。
ひらがなのこと
2020年は作品のタイトルにも個展タイトルにも ひらがな を意識的に使ってました。
漢字ではなくひらがなを使ったのは、意味を固定させたくなかったから。
ひらがなの曖昧さや、一見すると意味のわからなさ、複数の意味を感じることができる点からひらがな表記に。
漢字であればイメージが固定されるが、
読み手のイメージによって印象が変わる、言い切らなさが良い。
タイトルに共通するイメージ
5つのイメージや作風に共通しているのは以下のような
何気なさ・当たり前・いつもある・なにもない
変わらないと思われているものにおきる、
少しの変化やそれに影響されておこる感情や感傷的なものをすくいとりたい。
古くから日本人が持ってきた、無常観や「もののあはれ」のような感覚を、
現代に住む私たちも持っていて、そういった切なさや哀愁を絵や言葉という形で置き換えていますね。
2020年開催した5つの個展タイトルに関して振り返ってきて
1年を通してのタイトルに関してのことや通底しているイメージを語る場がなかったので、個人的にも振り返る機会となりました。
noteでは作品に関することや振り返りをしたためていきますので。
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