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VTS(対話型鑑賞)とは/やり方や効果は?

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こちらの記事は私が運営している
BLOG「絵.cocoro」の記事の内容を
転載したものです。

元ページはコチラ



VTS(対話型鑑賞)という
アート鑑賞法があります。

VTSの特徴を簡潔にいうと↓

  • 知識に頼らない

  • 作品をよくみる/考える

  • 洞察力や思考力が鍛えられる

このような鑑賞法になります。

対話型というくらいですから、
この鑑賞法はファシリテーターと
いわれる進行役のもと、
1人以上の鑑賞者がいて互いに
鑑賞/対話することで成り立ちます。

現在ではオンラインでも開催され、
体験できる場が広がっています。

そこでこの記事では
対話型鑑賞のメソッドをもとにして、
鑑賞する際のポイントを解説します。




VTSとは?

VTS(Visual Thinking Strategy)は
1980年代にニューヨーク近代美術館
で開発されました。

VTSでは作品を見て気づいたこと、
なぜそう思ったのか、といった対話を
繰り返すことで思考力を高めます。

本来は複数人で行うものですが、
ポイントを押さえれば1人で鑑賞する時にも
応用させることができます。

また、VTSには前提として
(作品の)知識に頼らないこと
が挙げられます。

作者の意図や時代背景などを
知ることも鑑賞を深める上で
とても大切なことですが、
VTSでは知識を必要としません。

それはVTSが、
作品と鑑賞者とのやりとりを
重視しているからです。

2通りの鑑賞法

アートを鑑賞する上で
実は2通りの見方があるのを
ご存知でしょうか?

まず1つ目は
(作品の)背景とのやりとりです。


引用:DIAMOND online

絵画は見るものではなく読むもの

という言葉もあるくらい、
見ただけではよくわからない作品も
制作者の意図や背景を知ったとたんに
「見えてくるもの」が存在します。

美術は当時の政治・宗教・経済が
絡んでいることがほとんどなので、
美術を知ることはそれらの情報を
知ることにもつながります。

作品を通した背景と鑑賞者のやりとりは
鑑賞者の教養を高めることにもなり、
人気のある鑑賞法の1つです。


引用:DIAMOND online

2つ目が作品とのやりとりです。

制作者が作品に対して込めた意図や
想いが上図の緑色の矢印だとすると、
それとは別に鑑賞者がその作品から
なにを感じたのかなど、
純粋な作品とのやりとりが
オレンジの矢印です。

作品とのやりとりでは
制作者の意図などは関係ありません。

大切なのは作品と鑑賞者との間で
やりとりができているかどうかです。

鑑賞者にとってその作品をどう感じたのか、
イメージなどを言語化することで
(鑑賞者の)ものの見方や価値観に気付き、
他人の感想と比べることで更なる
自己理解や他者理解にもつながる鑑賞法です。

1人VTSを行うポイント

ここからは1人で
VTSを行うポイントを解説します。

そのポイントは以下のとおり↓

  • 作品をしっかり見る

  • 作品からどんなイメージが
    得られたかを言葉にする

  • イメージの原因を作品から探し出す

順に解説します。

①作品を見る

最初のポイントですが、
ここが最大の難関といっても
過言ではありません。

見るだけじゃないか、簡単だろ
と思った人もいるかもしれません。

ところが現代では
1つのものをしっかり見る機会が
かなり減っているのです。

しっかり見るのが難しい

現代の人が最も苦手とするのが
よくみることだとされています。

そんなわけがないと思いますよね。
人は常に目を使っていますから。

しかしこんな話があります。

MOMAで行われた調査によると、
来館者が1つの作品を鑑賞するのに
費やす平均時間は10秒前後
いう結果がでました。

また、同じくMOMAで行われた
ギャラリートーク参加者の調査では、
参加者はプログラム終了後ですら
その内容をあまり覚えていなかったそうです。

この調査から、来館者のほとんどが
見たつもりでも(実は)見ていない、
知ったつもりでも(実は)覚えていない
ことが示唆されたのです。

視覚の情報からの話

もう1つ興味深い話があります。

ある研究によると、
人間が五感で受け取る外部の情報量は
1秒間に約1100万bitとわかりました。

そして、その内の約1000万bitを
視覚から受け取っています。

しかし、人間が1秒間に認識できる
情報量は1~16bitといわれています。

つまり、受け取る情報量に対し
認識できる量は僅かであるということです。

これを先ほどの調査と合わせると、
人が作品を10秒程度眺めただけでは
(作品から)ほとんど情報を
得られていないという仮説を立てる
こともできるでしょう。


VTSでは1作品につき10分以上の鑑賞
推奨されています。

少し長いと感じてしまうかもしれませんが、
意識してじっくり鑑賞してみましょう。

もし美術館などで行うなら、
キャプションや作品名は
見ないようにしましょう。

②作品からどんなイメージが得られたか

作品をしっかりみた後は
作品から得られたイメージを
言葉にしていきます。

まずは1度、
こちらの作品をみて下さい↓
(実際に10分鑑賞してみても◎)


いかがでしょう?
この作品からどんなイメージが
湧きあがりましたか?

もしくは、
この絵は何を描いたものだと
思いますか?

ファシリテーターのいる
対話型鑑賞をする場合、
作品によってファシリテーターは
「何が起きていますか?」とか
「何が描かれていますか?」など
質問を変えたりします。

でも1人の場合はざっくりと
「どんなイメージが湧いてくるか」
という質問で統一しても良いかと思います。


例の作品の場合、
人によっては
「なんか怖い」
「混沌としてる感じ」
「争ってる感じ」
など端的に表現する人もいれば、

「中央の赤いものと黒いものが
衝突し合っている感じがする。
互いにぶつかり合う度にエネルギーが
四方八方に飛び散っている」
など、作中のものをなにかに見立てて
ストーリーを作る人もいます。

これはどちらでも構いません。

大切なのは自身に湧きあがった
イメージを言語化することにあります。


ちなみに↑のように
なにが描かれているか
わかりやすい作品など、
作品によっても
「なんか端的にしか表現できない」
「これはストーリーがありそうだ」など、
鑑賞者によって相性があると思うので、
まずは色んな作品で試してみて下さい。


ちなみに西洋の宗教画や風景画は
VTSに適さないことが多いとされています

③イメージの原因を作品から探し出す

次は思考を深掘りするプロセスです。

ここではなぜそう感じたのか?を
追求していきます。

その際にポイントとなるのが
事実と解釈です。

事実

事実とは、
他の誰が見てもそう判断できること
を指します。


この作品で誰が見てもそうだと
判断できるのは、

  • 色が何色も使われている

  • 作品中央左側に赤、右側に黒

  • 赤と黒は隣り合って配色されている

  • 全体的に直線ではなく曲線的

このような部分ですね。
これをVTSでは事実と考えます。

解釈

次に解釈とは、
鑑賞者によって捉え方が違うもの
を指します。


先ほど②の章で

「中央の赤いものと黒いものが
衝突し合っている感じがする。
互いにぶつかり合う度にエネルギーが
四方八方に飛び散っている」

こういった意見がありましたね。
では、この意見での解釈にあたる部分は
どこでしょうか?


正解は、

衝突し合っている感じがする。
互いにぶつかり合う度にエネルギーが
四方八方に飛び散っている

の部分ですね。

この部分はあくまで
意見を述べた鑑賞者が感じたことで
皆同じように捉えられる部分ではありません。

事実と解釈をわける練習

最後に事実と解釈をわける練習を
してみましょう。

これからある作品に対する意見を
あげていくので、その意見が事実なのか、
解釈なのかに分別してみましょう。


作品はコチラ↓

作品に対する意見・感想↓


  1. 登場人物は4人

  2. 左端の人が悪いことをしている

  3. 右端の人は若く見える

  4. 中央の人が目でサインを送っている

  5. 左端の人が背中のカードを触っている

  6. 飲み物を持っている人も怪しい

  7. 右端の人はお金持ち

  8. 右端の人の前にコインがたくさんある

  9. なんか机が小さくみえる


分別できましたか?

正解はコチラです↓

  • 事実の意見
    ⇒①、⑤、⑧

  • 解釈の意見
    ⇒②、③、④、⑥、⑦、⑨


このように1人VTSをする場合は
事実と解釈にわけて鑑賞を行うことで、
1つの作品から得られた情報や感情を
より細分化できるのでオススメです。

対話型鑑賞の効果

対話型鑑賞のような
見方や考え方を実践することで、
観察力批判的思考力言語能力など
が鍛えられることが実証されています。

また、誰が見てもそうだとわかる事実と
自分だけのものの見方である解釈とを
区別することで、
自分自身の価値観と向き合う
きっかけにもなります。



最後に、
私はココナラでオンラインVTSを
出品しています。

もしVTSに興味があって、
体験してみたい方はご相談ください!

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