43arts|ボンクリ・フェス2023(東京芸術劇場)
毎年、東京芸術劇場で開催される「ボンクリ・フェス2023」に行ってきました!
ボンクリ・フェスは、アーティスティック・ディレクターに作曲家の藤倉大さんを迎えて、クラシックのアンサンブルや雅楽から電子音楽まで、さまざまなジャンルの「新しい音」ばかりを集めた、音楽フェスティバルです。
今年の特徴
昨年より夏の開催となり、さらに今回はメインのスペシャル・コンサートがA面・B面と内容の異なる2公演に分けての実施となりました!
過去2回のレポートはこちらです↓
ボンクリの全体像
ボンクリは2日間、東京芸術劇場の全体を使って、さまざまな場所で音楽公演が行われます。全通も可能なのですが、各公演別チケットなので「午後のコンサートだけ」「途中買い物してからまた来ようかな」と自由にカスタマイズできます。
私は、午前に1公演、お昼休憩や池袋散策を挟みつつ、午後のスペシャルコンサートに備えるように、赤マルに参加しました。
ワークショップ・コンサート
影絵と音楽の部屋~マレーシア ラーマ王子の伝説~-Far East Sounds
インドネシアの伝統的な人形芝居「ワヤン・クリ」とピアノ・バイオリン・打楽器のコラボレーションで、ヒンドゥー教の聖典「ラーマーヤナ」にあるラーマ王子の伝説を語ります。
ワヤン・クリの人形は、水牛の革をなめしたものに水牛の角の持ち手をつけたもので、関節も動くようになっています。髪の毛や衣装には透かし彫りと彩色が施されて、幕越しにうっすら色が透けて見えます。
東京国立博物館が所蔵しているので、展示の機会があったらぜひ東洋館(門を入って右側)を覗いてみてくださいね。
ラーマ王子が攫われた恋人シータ姫を救い出すストーリーを、影絵師のパク・デインが物語ります。(アシスタントさんは人形を受け渡していました)
人形は、前後に動かすことで像が大きくなったり小さくなったり、戦いのシーンでは幕に叩きつけたりと、激しい動きをみせます。一人で複数の人形を操るので、動きのない人形は、床の辺りにザクっと刺して固定していました。
まるで炉端焼きのよう。
しばらく鑑賞していると、アップライトピアノの上部どころか前面が剥き出しになっているのに気づきました。こんなふうに弦が収納され、ハンマーで打たれているのかと見ていると、ピアニストが突如、弦を指で引っ掻きはじめます。
そうだ、これはボンクリだった。ただの東西コラボで終わるはずがなかった。
トーンマイスター石丸の部屋
いつもスペシャル・コンサート+ワークショップ・コンサートの2公演で済ませようと思いながら、ついつい当日券を買ってしまう石丸さんの部屋。
東京芸術劇場のサウンドディレクターを務める石丸さんが、スチームパンク風の出立ちでおもしろ楽器を紹介、実際に体験もできる、小さなお子様も楽しめるプログラムです。
今回はスペシャル・コンサートで演奏される、セルビアの作曲家ヤスナ・ヴェリチュコヴィッチの「リモート・ミー~2つのリモコンと3つのコイルのための音楽~」に使われる楽器の仕組みを説明するとのこと。その楽器とは、なんとリモコン。
ぜひ「Jasna Veličković REMOTE ME」で検索して動画をみてほしいのですが、3つのコイルの上にリモコンをかざすと、シュンシュンと音を発します。どうやらエレキギターと同じ電磁石の要領で音が鳴るそうなのです。
セルビアのヤスナさん、すごい!
無料プログラム
アトリウム・コンサート
1階のチケット売り場の上で複数開催され、各1組のアーティストが1曲演奏します。東京芸術劇場の地下は池袋駅と直結していて、アトリウムも出入り自由なので、通りがけに演奏を聴くこともできました。
PLANKTONの部屋/電子音楽の部屋
こちらは生の演奏ではなく、11:00〜19:00まで、スピーカーから絶えず音楽が流れる、出入り自由のプログラムです。
PLANKTONの部屋は、今年3月に亡くなられた坂本龍一さんの音楽を聴くことができました。2016年の「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2016」で発表されたインスタレーション(空間を使った美術作品)のための音楽です。
水の滴る洞窟を彷徨うような環境音に、時折プーッと電子音が流れる、体全体を耳にして聴き入ってしまう作品でした。
電子音楽の部屋では、「共産国(時代)の電子音楽」をキーワードに、プロの作曲家や学生の作品、ほかの仕事をしながら創作活動をする日曜作曲家の作品がピックアップされていました。
音楽製作ソフト「VOCALOID(ボーカロイド)」の例もあるように、音楽大学出身でなくても参入しやすい、特別な機材や防音の部屋がなくても演奏技術がなくても作曲できるのが、電子音楽の強みかもしれません。
スペシャル・コンサートB面
A面は映像と音楽というボンクリ初の試み、B面はいつも通りのスペシャル・コンサートです。「A面&B面セット券」もあったのですが、チケット代が大変なことになるので、リモコンとヤン・バングの演奏を聴くためにB面を選びました。
トップバッターは、石丸さんの部屋で予習した①。演奏といっても3つのコイルの上でリモコンを振るだけで、こじんまりしてしまわないのでしょうか。一応モニターで手元が見えるようにはしているけれど、場が持つのでしょうか。
そんな心配は杞憂でした。風を切るようなリモコンの音(リモコンの音?)がコンサートホールに響き渡ります。
②・④は、ノマド・キッズと呼ばれる子どもたちが参加する曲目。これまではリズムを刻む打楽器を中心に演奏していたのですが、今回は小学生くらいのメンバーがバイオリンでメロディーも演奏していて、成長を感じました。
② のアレックス・パクストンは元幼稚園の先生で、子どもたちも演奏しやすい曲を多く作曲しているのだそう。
どちらも多彩な楽器/楽器?の音が混じり合う、元気の出る作品でした。
③は、まずレベッカ・ヘラーさんのアー写(宣材写真)がめちゃくちゃかっこいい! ファゴットが機関銃に見える! スペシャル・コンサートでも、派手なジャンプスーツに身を包み登場しました。
2020年に演奏されるはずだった、コロナ禍で3年熟成された一曲は、重奏的で深みのある音色でした。レベッカさんが自身のインスタに動画を投稿しているので、聴いてみてください。
トリを飾る⑤は、大友さんが作曲した④の演奏を録音してリミックスする即興演奏。まさに出来立てほやほや、材料を混ぜてこねて、寝かせずにすぐ焼いちゃう!
あたたかいエネルギーの塊のような演奏が、じんわりと沁みる滋味深い音楽の温泉になりました。
レポートはどうしても事後になってしまうので、次回はオススメの楽しみ方をご紹介できたらなと思います。
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