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39arts|恵比寿映像祭2023

東京都写真美術館(TOP)が主催する、国際的な映像作品の祭典「恵比寿映像祭2023」に行ってきました! 通称エビゾウ!

毎年テーマに沿った作家・作品が選ばれ、TOPを中心に、恵比寿ガーデンプレイスセンター広場、日仏会館などの地域連携施設にて展示・上映会を行なっています。一部の上映・イベントは有料ですが、展示は無料! 開催期間は約2週間と短いですが、お祭り気分でフラッと訪れてほしいイベントです。

エビゾウを楽しむアイテム

展示は無料ですが、当日TOPの受付にてQRコード付きのチケットをもらってください。webketで日時予約(無料)した方は、そのまま各階の展示室へ。
展示をめぐる前に、以下のアイテムをゲットしておきましょう!

・公式ガイドブック
・星占いでガイダンス
・nya-eyes(ニァイズ)

全作品の解説や展示場所、タイムテーブルや会場地図が掲載されている公式ガイドブックは必須! 固い表紙の冊子なので躊躇しますが、こちらも無料で配布しています。TOP受付や各会場からいただいてください。

「全部は見られないしオススメは?」「どの展示が自分に合うか、わからない」という方は、占星術研究家の鏡リュウジさん監修「星占いでガイダンス」をTOPのロビーなどで入手! 星座別に基本性格やキーワード、オススメの作品を教えてくれます。

マンガ家のカレー沢薫さんがフィクションを織り交ぜてTOPを紹介する「ニァイズ」を読めば、エビゾウの概要をするっと理解できるでしょう。
こちらはTOP以外の美術館、アトレ恵比寿の本屋さんなどでも入手できます。

その他、「やさしい日本語」によるガイドや手話通訳付きのオンラインプログラムもあるので、自分にあった方法で楽しみましょう。

今年の見どころ

今回のテーマは「テクノロジー?」、日々進歩していく映像技術により、35mm・8mmフィルムからビデオテープ、DVD・BDと記録媒体は小さくなり、4K・8Kといった肉眼以上に高精細な映像撮影が実現しました。そうしたテクノロジーが映し出すのは何でしょうか? テクノロジーの可能性を追求した作品が揃います。

今回初の試みとなる「コミッション・プロジェクト」では、日本を拠点に活動する新進アーティストに制作委嘱した4名の作品を展示、国内外の有識者が審査員となり作品を審査します。見事、特別賞を受賞したアーティストは、次年度のエビゾウで特別展示・上映を実施できます。

オススメ5選

1日あれば大方回れる規模感なのですが、午後に予定があったため一部しか鑑賞できませんでした。今回は、気になった作品を掻い摘んでご紹介します!

荒木悠《仮面の正体(海賊盤)》

映画監督を名乗りながらも、映画撮影の正式なトレーニングを受けていない荒木さんは、ニセモノに惹かれると言います。
本作は「KISS」のコピーバンド「WISS」(ウィッス)に取材したドキュメンタリー作品。ライブ音声は一切流れず、素顔のメンバーによるインタビュー映像の音声のみが聞こえてきます。作品が伝えるのは、KISS流のメイクから滲み出る「彼ららしさ」です。

このスクリーン、床から天井まであるんだぜ?

葉山嶺《Hollow-Hare-Wallaby》

巨大なスクリーンにいは、絶滅したワラビーの剥製のCGが映し出されています。カメラはぐるりと剥製の全体像を見せた後、お腹の袋にダイブ。体内をゆっくりと巡り、頭部に至ると、眼球のあった二つの穴から光が差し込みます。
剥製づくりの手伝いをしている時、動物の頭部を内側から見て「人間でないもの」の世界は人間の世界とは違うのではないかと感じた葉山さん。絶滅動物の見た世界は、どんなものだったのでしょうか。

以上の2点と金仁淑(キム・インスク)《Eye to Eye》大木裕之《meta dramatic 劇的》がコミッション・プロジェクトの作品です。

Houxo QUE〈Death by Proxy〉

鉄パイプで貫かれたディスプレイが、断末魔の如く点滅しています。「テクノロジー!?」ってなりますよね。ディスプレイに浮かび上がるイメージに目がいきがちですが、映像とは何か、テクノロジーとは何か、見るものに問いかけます。

絵画の歴史では、リアルなハエや布を描き込んで高い技量を示した古代ギリシアの逸話やルネサンスの作品がありましたが、19世紀に写真が登場したことで、写実という特権が剥奪され、絵画ならではの表現の模索が始まります。

本作は、カンヴァスを切り裂いたルチオ・フォンタナを彷彿とさせます。

iPhoneもこうなるらしいと聞きました
壁もぶち抜きます

細倉真弓〈digitalis〉

人物、ペットボトルやプラカップ、貝や植物の写真がゆっくりと右から左へ移動していきます。隣り合ったモニターに映る写真には、人工物/自然物、硬いもの/柔らかいもの、生物/無生物が混在していますが、グレースケールに統一されているためか、異なる質感であるはずのモチーフは違和感なく混じり合います。

ルー・ヤン〈DOKU(ルー・ヤンのデジタル転生)〉

モデリング技術によって作家本人を「デジタル転生」させたアバター・DOKUが主人公のシリーズ。FFのようなビジュアルにクセの強い作品を想像します。

DOKUは飛行機事故や人類の滅亡といった世紀末的な出来事を経験するなかで、自己とは、生とは何か、思いを巡らします。DOKUは失った片腕がまだあるかのような幻肢覚を感じ、宇宙空間に吸い寄せられるように飛んでいくと、次々に体が結晶化して砕け散り、最後に残った脳と神経系も粉々になります。

DOKUのほかにも、ゲームキャラクターのような人物やデコラファッションに身を包んだ人物が登場します。彼らは六道(ろくどう、衆生がその業の結果として輪廻転生する6種の世界)の擬人化であり、天道は水や緑の豊かな楽園のような場所、畜生道は陸海空の生物が飼育されるスペースシャトルの内部のような場所と、それぞれの世界をバックにダンスを繰り広げます。

とんでもないストーリーですが、ベースには仏教の死生観、脳科学や神経科学の考えがある真面目な作品(作家さんは皆真面目につくられていると存じていますよ!)。マンガやアニメ、ゲームも個々につくられた「世界観」のなかで展開するものですから、テーマとビジュアルのマッチングには納得です。

思い思いの楽しみ方で!

会期の短さと映像作品への馴染みのなさもあってか、知る人ぞ知るイベントとなっている恵比寿映像祭
実は「テーマがわかりやすい作品」「とっつきやすいビジュアルの作品」もたくさんあり、ショートアニメーションの上映もあり、冊子やリーフレット、オンラインによるガイドといった丁寧な導入も用意されています。

ビーズソファに座って眺めているだけでも映像は展開していくので、あなたは何もしなくていい。(もちろん、よくみたり考えたり解説を読むと、もっと作品を味わえます)
何より無料なので、全部鑑賞しなくてもいいですし、自宅や職場が近い方はちょこちょこ覗きにきてもいい。(もちろん、各会場を回ってたくさん作品をみてほしい)

ガチのアートファンではなくても、デートがてら、観光や買い物ついでに、もう本当に暇で暇でどうしようもないけど行く当てがないときに、気軽に訪れてほしいです。



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