アラビアンコーストのアラビア語と周縁言語のBGS②
今回はアラビアンコーストで新しい発見があったり、以前の記事で言及していたシンドバッドの最後のシーンの写真を入手することができたので少しアラビアンコーストの考察を加えていこうと思います。
カスバ・フードコートのアリ王子
カスバ・フードコートには、映画アラジンに登場する、アリ王子の名前のようなものが書かれています。それがこのカウンターの奥にあるタイルです。
下の以前の記事では、このタイルがアラビア語の「Square Kufic」という書体に見える、というふんわりとした記述をしていたのですが、よく見てみると明らかに「Ali」と書かれていることに気付きました。
下にあるのが拡大した写真です。目を凝らして見ると、右上、右下、左下、左上と同じ模様が繰り返されているのが判るかと思います。
これが「Square Kufic」と呼ばれる書体です。
そして上のチャートと照らし合わせると、9段目の「ع」、「L」に当たる「ل」、「Y」に該当する「ي」が、アラビアンコーストのタイルにも書かれていることが判ります。そして、これらを繋げて書くと「علي(Alī)」となるため、アリ王子指している可能性もあると考えられます。
そして、このタイルで使われている文様は実際にイランの、「Sheikh Bastami Mosque」というモスクで確認することができます。
シンドバッド・ストーリーブック・ヴォヤッジ
前回の記事でシンドバッドについてはかなり考察したので、最後のシーン以外は軽めの解説です。下の記事からの続きとなっているので、シンドバッドの部分だけでも読んでもらえると理解が進むと思います。
まずは以下のシーンについて。左の旗「Sindbad!」、右の旗の「Sailing」についての解説は上のリンクの記事に解説を譲り、「Happy」の書体についてです。この「p」 の角度がアラビア文字で英語の「M」と同じ発音をする「م」を彷彿とさせ、また反転させると前回の記事の「a」の部分でも触れた「ء」という記号を連想させます。
またこちらの幕「Good Luck」の「G」についても、前回の記事で解説した「S, M, y, B, W, Y」同様、アラビア文字の「ي」や「ى」を連想させるかのような書体となっています。
最後の考察は真ん中の人物です。右の人物が持った宝箱の中身を見ながら書いていることから、シンドバッドが持ってきた財宝の目録でも書いているのでしょうか。
そしてこれが彼の手元をズームした写真です。
巻物なので、我々ゲストは当然逆さまにして読む必要があります。
この巻物は一見アラビア語に見えるかも知れませんが、これは明らかにアラビア語ではなく未知の言語です。確かにアラビア文字に酷似した文字も交ざっていますが、それ以外のいくつかの中東の言語で使われている文字なども交ざっています。そして何よりもアラビア語であれば文字が繋がって書かれるところが、ばらばらに書かれています。
いくつか例を挙げると、1番上の段の4つ目の文字「ک」は、アラビア語では用いられず、ペルシア語で使われる文字です。また4段落目の6行目、最後から2番目の文字は英語の「B」の音を示す、シリア語の「ܒ」(シリア語の中でも、特に西方で用いられたセルトー体)に似ていると個人的に感じました。
このようにこの巻物はアラビア語では書かれていないものの、アラビア語をベースに、アラビアンコーストのモデルの地域であるアラビアで使われている文字らしく表現されていると考えられます。
次回はパークの宇宙観か、ビッグサンダーマウンテンの恐竜についての記事を書こうかと考えています。