劇場版クドわふたーを見に行った話
こんにちは。Twitterその他で弓川と名乗っている者です。
本稿では2021年7月16日に公開された映画「劇場版『クドわふたー』」を観てきた事による感想等を書こうと思います。本当はこういう感じで文章を書くつもりは無かったのですが、観てきた結果色々と書かずにはいられない衝動が走ったのでその衝動が落ち着かない内に文章化したいと思います。
というわけでいつもの前置き。
記事の性質上当該映像作品及び「クドわふたー」のネタバレ全開ですので、未視聴未履修の方はブラウザバックを強く推奨します。ブラバしろ(脅迫)
というか公開日明けてすぐにこういうの書くのは自分でも流石にどうかと思うので1、2週間くらいほっといて下さい。ネタバレは悪である。
・基礎情報
「クドわふたー」はKeyより2010年にリリースされた18禁恋愛ADVゲームであり、後に全年齢版がCS機にてリリースされた。同ブランドが2007年にリリースした「リトルバスターズ!」(リトバス)に登場するヒロイン「能美クドリャフカ」を主役においたスピンオフ作品でもある。略称は「クドわふ」本稿で取り扱う映画作品はその「クドわふたー」の劇場版であり、元々はリトバス10周年記念企画の一環で行われた「クドわふ20分OVA化クラウドファンディング」が始まりであった。結果、支援金は当初の予定の2.6倍である約7800万円が集まり、50分の劇場アニメを公開するに至った。尚、公開初日の2021年7月16日時点では公開されているのは北海道(札幌)、東京(新宿)、愛知(名古屋)、大阪(梅田)、福岡(博多)の大都市で各1劇場の5劇場のみであり、2020年より世界を混乱させている某パンデミックの影響もあって都会勢も田舎勢も本作品の視聴にはそれなりの覚悟が必要である。
・余談 ※自分語り
弓川は四国の民でして、かつ就いている職種的に迂闊なことをすると特に色々とマズかったんですが、クドわふ映画以外にもう一つ別のオタク的イベントが大阪の梅田で行われることもあってハイリスクを承知で大阪行きを決行しました。
結果として勉強になる一日にはなりましたが、これを書いている時は明日以降職場に迷惑がかからないか不安で仕方がなくなってます。だってクドわふ映画ももいっこの方もこの機会逃したら一生もう体験出来なさそうだったんですもの…
皆さんは見に行くにしてもどうかお気を付けて。リターンよりもリスクの方を重要視して下さい。
(ここまで文字数稼ぎ)(だってネタバレする前提で書いてるんだからここを読んでるのはクドわふまでやるような鍵民くらいで、その鍵民にクドわふのあれこれを書いても仕方ないでしょうに)
・「クドわふ」について
そんなこんなで直前に書いたことをガン無視してクドわふのおさらいをしましょう。ザックリとした流れとしては「バス事故が起こらなかった世界の夏休みで、リトバスメンバーがいない寮で理樹とクドが同棲同衾イチャコラわんわんする話」「氷室さんや有月姉の事情、クド母にまつわる事件を描いた話」という二面性を持つ物語でした。
私はクドわふをCS版でプレイしたので詳しくはないのですが、初期の18禁版では「Wafter編」と呼ばれる日常パートで前者が、それをクリアした後に解禁される「After編」で後者が…と、分けて描写されたようです。どこかで見ましたね。CS版では統合されており、おおよそ一本道の作品になってました。なんでも"わふたー" → "Wafter" → "W after(ダブルアフター)"の言葉遊びで、リトバスから見て2ルートのアフターストーリーが描かれる…といったものだったんだとか。
それはそれとして、クドわふ世界線ではバス事故が起きなかったため理樹や佳奈多の性格が少々違います。特に理樹は顕著でしたね、リトバス本編で強さを得た彼というよりはクドの事が大好きな面白兄ちゃんでした。佳奈多はクドの事が大好きな面白お姉さんです。
山あり谷あり失意あり輝きあり。クドわふたーは全体を通して「Keyらしい」といえばそう言ってしまえるのかもしれません。(婉曲表現)
・映画について
やってくれたな!!!なんでこんなことをした!!正気か畜生!!!!!
魁のオッサンのバーカ!そんなだからいつまで経ってもサマポケ18禁版蒼アフターがリリースされないんですよバーカバーカ!!(ジョーク)
そんなだから都乃河さんも退社しt…口が滑りました。これはジョークにしてはいけませんね、VAやご両人に失礼でした。そんなことを言いそうになるくらい思うところがあるということで一つ。なんでそのまま映画化しなかったんですか?????。
劇場版クドわふたーは単純に原作クドわふたーを映像化したもの…ではありませんでした。ぶっちゃけどちらかというとリトバスのクド√の完全に新しいifを映画化した感じです。公式サイト見た時に本来クドわふ世界線に登場するはずのないリトバスの面々がいる時点でおかしな予感はしてましたが、ガッッツリ新ルートでした。W-afterどころではなく第3のafterです。
劇場版クドわふたーの物語。それは「バス事故が起き、クドは虚構世界の構築には参加した(理樹の助けになりたかった)が、自身の生存や未練の解消は放棄しており、夢の中で幸せな時間を過ごして命を終えることを選んだ」という世界でした。
この世界では原作クドわふたーの物語は虚構でしかありません。氷室さんの憂いも有月姉の未練も、有月妹の母への想いも直枝架夜の存在も…夢のまた夢にあるものでしかありません。クドわふ世界線でそれらが存在したことはこれからも揺るぎませんが、少なくともこの世界にそれらは無いのです。
貴重な50分のうちのある程度の割合を使ってダイジェストでわふたー編ライクな楽しい夏の記憶をファンサービス的な感覚で見せられたり、転にあたるクドが一人きりになった空間では「クドが考える氷室憂希」との問答は簡潔に終わったり…と、尺の都合云々な事情も感じられました。
劇場版クドわふたーをこういうシナリオにした以上、あそこはもう少し尺があればもっと膨らませてたと思うんですよね。
さて。その仮想氷室にクドは「また繰り返すのか」と問われ、恭介にも同じことを言われたと返しました。これはリトバスのクド√に於いてrefrain後に追加される第3の選択肢で見られる光景です。理樹はクド自身に選択をさせ、その結果テヴアに帰らない選択肢を取り、ストルガツカヤ博士の処刑を目視し、残されたあるもの(DVD)を見なければならないと言って物語を終えます。そのDVDを見た後の結末…と認識することもできるでしょう。
リトバス本編の正史世界線では描写的にストルガツカヤ博士は死しているという解釈があります。確か生死は明言されてなかったはず?
虚構世界を抜けても大切な憧れの母はおらず、偽りの世界で愛し合えた人も自分の隣にいない。それならいっそこのまま覚めない夢を見続けて終わりを迎える方が…なんて。そんなことを願ったのかもしれません。
この辺はリトバスエクスタシーの小毬√を想起しなくもないです。なんにせよ、上映が終わった後は「マジかあ…マジかあ」と呟くだけの機械になっていました。
そもそもリトバス当時の時点でクド√は微妙に難解で説明不足であると言われていたのです。refrain後の第3選択肢やクドわふたーを読んでなお頭から疑問符が離れないユーザーも数多くいたと思います。この映画は「それ」を踏まえた上でその先を描いたものでしょう。
閑話休題。能美クドリャフカというキャラクターの物語を構成している要素はいくつかあります。それは「ロシア」であったり「宇宙」であったり「犬」であったり「歯車」であったり。そして「鎖」も彼女の物語の構成要素です。今回の映画はそれらのうちのその「鎖」をフィーチャーしたものでした。リトバスのCGの中でも随一の暗さを持つあの1枚が思い起こされるシナリオでしたね。
自ら鎖で閉じた世界から出るために屋上でカウントダウンするシーン。残り1カウントで理樹はクドの元を離れたことで彼女の心は再び折れてしまいますが、最後にストルガツカヤ博士への思念によって鎖を解き放つことに成功します。クドの傍に理樹はおらず目指す場所にあり、クドが目覚める最後の一助となったのは母への想いであった…そういう描写であると私は解釈しました。理樹は(その後の描写的に当然と言えば当然ですが)クドわふ世界線の色ボケ兄ちゃんではなく皆と手を繋ぎ先へ進む強さを得た彼でした。
そしてラストシーン。最後の例の丘でクドは理樹に告白します。ですがこの映画の世界線にはバス事故があり、リトバスの面々も復帰している世界です。つまり理樹から矢印が向いているのはクドではなく鈴なんですよね。つまり彼女の恋は実らない。劇場版クドわふたーとは…。
クドが理樹に好意を抱いたのは1年生の時です。そもそもの正史では理樹からクドへの恋愛のラインは発生しないことを考えると、refrain後含めクドはずっと片想いし続けていることになります。この物語はそこにもフォーカスしていることになるんですかね。
その他雑感。
上半身裸になって自分の紋を刻み合う例のおまじない。あれやるの私の記憶が間違ってなければクドわふじゃなくてリトバスの方でしたよね?もう随分前なので自信は無いです。仮にそうであるとして、にも関わらず映画の中では二人はそれを初めてやるかのような面持ちでした。
これは、映画世界が"クド単身が無限に繰り返す世界"でしたからクド主観で「理樹との大切な思い出の一つを繰り返しているだけ」なのでしょうか?
それはそれとして紋を刻むシーン、ちゃんとしてましたね。理樹の指はまず最初に上から下に2本なぞっていました。樹の幹の部分になる部位です。適当に指を動かすのではなく完成形をイメージしながら描いた作画でした。
・総括
「クドわふたー」のファンにはこれ以上無いくらいの絶望を叩きつけた物語でしたが、「リトルバスターズ!」のファンにはこれまでの解釈等に一石を投じる物語でもありました。クドわふやってない層にはウケるんじゃないかな(適当)
クドわふたー本編の映像化を望んでいたファンにはモヤモヤや恨み悔みが残ってもおかしくはないでしょう。私だってその一人です。
私達はモブに紛れ真人に白い目を送るだけの有月姉や、屋上や肝試し会場にしれっといる某金髪ツインテや、自縛と一人戦うクドの悲恋を見に来たのではなく、主人公たちとぶつかり合う有月姉や氷室さん、そして地球からの光が届き無事生還したストルガツカヤ博士とクドとの再会シーンを銀幕に見に来ていたのですから。
ただまあそれでも、リトバスの続きの1つが映像で見られて私はある程度満足です。それを最終的な感想ということにしておきましょう!
あとどういう形であれ映画館で星屑が聴けてよかったです。
・終わりに
私がクドわふの存在を知ったのはWeiß Schwarzというカードゲームからでした。ちょうど私がKeyというかADV界隈から完全に離れている時期に、ホビーショップでABとクドわふのセットタイトルなカードパックを見つけて「クドのafter出たんだ」という感じで知りました。
んでそのカードパックを1つ買って開封すると次のカードが入っていました。
「飛べないアルビナの願い」…カード名を見た瞬間に鳥肌が立ちました。諦観を湛えたクドの表情や、謎の新キャラ(氷室というらしい)の鬼気迫る表情と相まった素晴らしいカード名です。
クドがライカであること、ベルカとストレルカという名前の犬がリトバスに登場していること、そしてフレーバーテキストから推察するにこの「アルビナ」及び氷室なる少女はスプートニク2号で本来飛ぶはずであった宇宙犬アルビナをモデルにしていることは想像に難くありませんでした。
そしてこの描写…これは「クドは宇宙飛行士になる夢を叶える」という結末を示していると当時の私は考えました。
ここまで来るともう止まりません。鍵民としてのスイッチが入った私はクドわふたーを即ググり、その時熱中していた†伝説の名機†PSVitaでリリースされていることまで確認してからはノンストップでプレイしました。
迎えたエンディング。我らが青き星を宇宙としてその上で瞬く無数の星々。そしてそれを背景に響く霜月はるかさんの『星屑』…私がそれまで見てきたあらゆるエンディングの中でも無二と言って過言ではありませんでした。
この手のゲームでエンディングが無二であるというのは随一であるという意味ではありません。様々な無二がある中の一つではあります。
それはさておき。私の中で星屑はKeyでいうところの『夏影』と同等の…つまり最上級の評価を与えています。それほど入れ込んでいる曲なのです。
そんな終わりを与えてくれた作品が映画化する!コ○ナがなんだってんですか私は銀幕であのエンディングがもう一度見たいんだ邪魔をするなァァァァ!!!って感じの心意気で大阪敢行しました。
まあ幕が上がってみるとそこに待っていたのはあのエンディングではなく、私の大好きなクドわふたーに真正面からぶつかってきてさらに上からドンッとクエスチョンを落としてくるような知らん50分だったわけですが。
そういうわけでこの辺で。
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