屋根裏の道化師、考察
はじめに
先日買ったIDOLM@STER THE@TER BOOST03。それのドラマパートである「屋根裏の道化師」がとても良かったため自分なりに考察をしてみる。もちろんネタバレ全開なためそれはご了承いただきたい。
あれ?これで終わり?
こう思った方も少なくないのではないだろうか。若干の消化不良、わだかまり。ボイスドラマであることや、サスペンスであって事件の謎を楽しむためのものではないとはいえ、それでも胸の突っかかりは無くならないだろう。カーテンコールまで聴いた上で浮かび上がる疑問だと次の4つが主だ。
・コレットはなぜ紹介状を持っていたのか
・モニカは死ぬ必要があったのか
・なぜモニカ殺害時にリトルミルズを使ったのか
・なぜシンシアは舞台続行を望んだのか
物語は限られた時間の中で収めなければならない以上、言葉足らずの部分や駆け足になってしまうことは多々ある。しかし言葉の端々にヒントを散りばめることはできる。これはあくまで推測であり真実とは限らない。私の見解を述べる。
シンシア真の黒幕説
である。
この説を立証するため最初に挙げた3つの疑問点を解消しよう。
コレットはなぜ紹介状を持っていたのか
身寄りがない子供に紹介状を書く。それもわざわざ知名度があまりないミリオン座への。
ミリオン座が世界レベルで有名な劇場ならまだしもここは歴史があるだけの劇場で有名なわけでも決してない。そこへの紹介状を送ることやコレットが来た時の劇団員の反応を見ると、消去法でシンシアが1番送っている可能性が高い。昔から女優をやっていたシンシアならば若き日のミルズやコレットの母を知っていても不思議ではないだろう。
コレットの母から子を宿していると相談を受けていたか、若き日のシンシアが演技に磨きをかけるためコレットの母を訪ねようとしてコレットの存在を知ったか、はたまた全くの偶然でコレットの存在を知ったのか、その真偽は定かではない。
だが身寄りのないコレットへ紹介状を書いたにも関わらず誰が紹介したのか分からないままにしておいたのは、シンシアはコレットを売名なり道化師なり少なくとも利用することを考えていたのだろう。
モニカは死ぬ必要があったのか
Pは大切な人を無くす経験のため、マドリーンは殺人に気づかれたためと殺しの動機に説明がされている。しかしモニカだけはされておらず、芝居の方向性の違いから殺人とモニカへ自供したのか気づかれたのか曖昧なのだ。
そうなるとモニカとコレットが2人きりで話せる場所が必要になってくるが、P死亡後に2人きりで話せるタイミングはP死亡後の夜、マドリーンを含めた3人で寮に帰る時から翌日早朝までしかない。
しかしそれだと疑問なのがモニカの性格上、コレットが犯人だと言うはずなのに言わなかったことだ。舞台は中止だと思い込んでいる以上はコレットに黙っておく理由など存在しない。そうなるとコレットがモニカに相談(芝居の方向性について)したのは事件前ということになる。
事件前の場合はモニカがコレットを道化師だなんて信じられない(信じたくない)という言葉も辻褄が合い、矛盾もなくなる。そうなると殺した動機は口封じだろう。
そしてこのような相談を先輩であるスタァのモニカにしたということは、少なくとももう1人、似たような相談をした人物がいるはずだ。尊敬していたモニカには否定された芝居のアプローチ、芝居の根幹を否定されたコレットは他に相談できる先輩を探すはずだ。コレットの考えを肯定してくれる先輩はそう、シンシアである。
ではマドリーンは?と思われるがマドリーンは殺人が発覚した際にモニカと同じように混乱していた。他の名前あり劇団員が日常に近い反応を示す中で、モニカとマドリーンは似た心理になっているのだ。考えが近い以上、シンシアがマドリーンに相談したところでモニカの反応と大きな違いはないだろう。だとすると相談を受けた上で肯定してくれるのはシンシアしかいない。
シンシアへ相談しにいったのはモニカに芝居を否定されたあとであろう。シンシアとしては簡単だ。そんなことないコレットは正しい。と、そっとコレットの背中を押すだけなのだから。
なぜモニカ殺害時にリトルミルズを使ったのか
連続してモニカ殺害についてだが、リトルミルズを使った犯行であった。だが、そもそも殺したのはコレットなのだろうか。ミルズは庇っただけ、コレットは動機のみ。モニカを殺害したのは誰が不明なのである。
モニカ殺害で怪しいのはシンシアとコレット。コレットは1人部屋で練習をしており後からウォーカーと話していた。これ以上の情報がないためシンシアに焦点を当てる。
シンシアはコレットの部屋を訪ねた際にウォーカーがいることを知ったと言っているが、この寮の防音性は低い。シンシアが声をかける直前に返事をしていたウォーカーの声を聞き逃すだろうか。
それに加えシンシアはモニカの反応がないとコレットの部屋を訪ねてきた。モニカの部屋に向かうと警官が大きな声で声をかけていた。時系列としては、シンシアがモニカに声をかける。(無反応)警察に無反応を伝える。ミルズにマスターキーを頼む(警察が頼んだ可能性もある)。コレットを訪ねに行く。といった所だろうか。
リトルミルズの使う頻度は不明だが昔からミルズと親交があったシンシアなら上手くリトルミルズを扱えたのではないだろうか。それこそミルズを模倣して。
リトルミルズの存在はミルズを囮に使うこともでき一石二鳥。もしかしたらミルズとコレットが親子関係なのも気づいていたのかもしれない。気づいていたのなら、シンシアの罪をミルズにコレットがやったと思わせ背負わせる事も出来る。
なぜシンシアは舞台続行を望んだのか+真の黒幕説について
マドリーン死後、最初は舞台中止を支持していたシンシアだがミルズとコレットの話以降は中止と言わなくなり、事件解決以降はしきりに舞台続行を訴えると、マドリーン死後とは真逆のスタンスをとるのである。
場の空気に流され舞台続行を望んだのか、ミリオン座のためなのか、世間からの同情や名声を集めるためなのか。動機がここまで多岐になるのは、一連の事件でシンシアだけが本心らしい本心をあまり語っていないためである。
その中でも1番シンシアらしい動機を挙げるなら、それは女優であるシンシアが世間から脚光を浴びたい気持ちと、役を演じきれた達成感からと思われる。
女優であるシンシアは退屈していたのではないだろうか。後輩の指導に回りスポットライトの当たらない日々、お客が集まらず経営が傾くミリオン座。優しいPならシンシアに、屋根裏の道化師はどうかと意見を求めることもありえる。
一計を案じたシンシアはすぐさまコレットを呼び、コレットの芝居を肯定し、ウォーカーを招待、舞台を整える。モニカ殺害による事件への関与(コレットが殺害したと考えた場合シンシアにスポットライトは当たらないためシンシアが殺したと解釈する)、真犯人コレットの身投げ。
最後に笑っているのは誰か。
最後まで事件に関わり続け悲劇の元大女優として世間から注目と同情を浴び、真相は闇に葬られ誰一人真相には辿り着けない。
真の黒幕役としてここまで完璧なフィナーレは存在しないのではないだろうか。
これがシンシア真の黒幕説を説く理由だ。
ウォーカーの功績、ラスト・アクトレス
コレットを真犯人と突き止めることが出来たウォーカー。しかしウォーカーはシンシアが真の黒幕だと気づいているのではないだろうか。
ウォーカーはカーテンコールの序盤でシンシアに何かを話そうとしていた。最低限の前口上で話すウォーカーはシンシアにも真相を確認しようとしていたと考える事ができる。
そしてラスト・アクトレスの歌詞にも注目してもらいたい。最後の部分、「おっとここから先はもう二人だけのヒミツよ」と書いてある。これはおかしい。
コレットが身投げする直前、「ここでのヒミツは一人胸に抱えたまま」と発言している。
そして歌詞の口調。ウォーカーに丁寧語で話していないのはモニカとシンシアだけなのだ。モニカはもう死んでいる以上これをウォーカーに話すのはシンシアということになる。
ラスト・アクトレスがキャラの声ならば「命賭けたほうが美しくいられる」「綿密なシナリオ」はシンシアの心情を物語っているとも言えるほか「最高のおもてなし最期にしてあげましょう」はコレットの言葉とも、真相を語るウォーカーを褒めるシンシアの素顔とも取れる。
事件から1ヶ月経っており証拠もミルズが隠滅。真相を立証することはできないが、ウォーカーはただ一人真相に辿り着いた。それに敬意を表したシンシアと考えると辻褄が合わないだろうか。
終わりに
以上が屋根裏の道化師の考察の全てである。1時間にも満たないボイスドラマとは思えない考察できる余地の深さは敬服せざるを得ない。ここまでこの考察を読んでくれてありがとう。他の人の考察と見比べた上でもう1回最初から屋根裏の道化師を聴き、自分なりの考察をしてみてほしい。