メガバンク出身「マゾ兄やん」:通貨オプション完全攻略ガイド
今回は、マゾ兄やんさんから寄稿いただいた3つ目の記事をご紹介します。
私の自己紹介記事も、ぜひあわせてチェックしていただけると嬉しいです。
こんにちは。
マゾ兄やんと申します。
新卒メガバンクに入社し、その後メーカー2社で海外勤務を経て、現在は商社でDX業務や投資業務などに携わっています。
谷本さんとはXで出会いましたが、同じ金融出身ということもあり、それ以来仲良くさせていただいております。
メガバンクでは中小企業の融資業務にも携わっていました。今回は「通貨オプション」ついて書かせていただきます。
今回の記事は「為替予約」に続き、外国為替関連の続編となっております。「為替予約」をお読みになっていない方はまずはそちらをご一読いただけますと幸いです。
Xでも、私の考えを発信しています。
https://x.com/mazoNiiiiiiii
通貨オプションとは
銀行担当者から「通貨オプションを検討されたことはありますか?」と言われたことがあるかもしれません。通貨オプションは、デリバティブの一種です。一見難しそうですが、仕組みを理解すればそれほど難しくはありません。
そもそもオプションとは、権利のことを指します。ですから、通貨オプションを導入するということは、(例えば)米ドルを買う権利や米ドルを売る権利を購入することを意味します。通貨オプションをうまく利用すれば、為替予約と同じような経済効果があります。
為替予約のときと同様に、輸入企業の事例を用いて解説していきます。
輸入企業の事例
輸入企業A社は、海外から商材を仕入れる際、仕入先に米ドル建で支払っています。今回仕入れる商材は毎月仕入れるものです。
仕入先に対して毎月1米ドルを支払っていますが、今後1ドル160円、170円・・・と円安が進行することにより採算が悪化することを懸念しています。向こう1年間について、毎月1ドルを150円以下で固定し、ドルを買い続けたいと考えています。
為替予約のときと同様に、今後1年間のレートは概算で算出できます。
【前提】
日本の金利:0%
米国の金利:4%
上表の例では、1年間、毎月1ドルを購入する通貨オプションを導入する場合、ドル円レートは146.84円となります。
為替予約では毎月のレートは金利差×期間によって変化しますが、一般的な通貨オプションでは毎月同じレートで購入することになります。(もちろん例外もあります。というか商品が多すぎて例外だらけです)
尚、この契約を締結すると、毎月ドルを購入しなければならないという義務が発生します。購入のタイミングで実勢相場と比較し、レートが不利であったとしても中途解約はできません。
ちなみに、毎月同じレートでドルを買ったり、売ったりする通貨オプションのことを「シングルレートフォワード」と言います。単一(シングル)のレートが将来にわたって(フォワード)続いていくことから、こう呼ばれています。
ゼロコストオプション(読み飛ばし可)
少し難しい話をします。適宜、読み飛ばししてください。
基本的に金融機関が提案してくる通貨オプションは「ゼロコストオプション」と呼ばれるものがほとんどです。先程のシングルレートフォワードもゼロコストオプションの1つです。
オプションとは本来、権利の売買です。権利なのであれば、毎月のオプションを行使するタイミングで、レートが有利だったらドルを買い、不利だったらドルを買わないこともできるのでは?と思われるかもしれません。
ですが、実際は「(不利な条件であったとしても)ドルを購入しなければならない」という契約となっています。なぜそうなのでしょうか?
通貨オプションの仕組みを簡単に説明すると…
権利の買い
権利の売り
この2つを同時に成約させることで、お客様に初期コストを発生させない仕組みを取っていますが、お客様がドルを買わなければならない理由は、「権利の売り」によって義務が発生するからです。(ちなみに初期コストが発生しないことから「ゼロコストオプション」と言われています)
オプションは権利の売買ですから、権利を買うときに支払うコストが発生します。一方、権利を売るときは売却に対する対価が貰える仕組みとなっています。
よって、権利の買いで「支払う分」と権利の売りで「貰える分」がちょうど等しくなるレートが、(上記例では)146.84円となるわけです。
さらに詳しく説明できますが、長くなるのでこの辺にしたいと思います。ここからは、通貨オプションの注意点について説明します。
中途解約できない
原則、中途解約はできません。為替予約と同様、恒常的に発生する商売において検討すべき金融商品となっています。
どうしても解約したい場合は清算するためのコストが発生しますが、かなりの損失が発生する可能性もあります。
銀行の手数料
通貨オプションはお客様にとって、銀行の手数料(マージン)が見えにくいものとなっています。先程、「支払う分と貰える分が等しくなる」と説明しましたが、厳密は下図のような収支になっております。
例えば、銀行が1ドルにつき1円の手数料(マージン)を上乗せして提案してきた場合、レートは147.84円(146.84+1.00)となるといった具体です。
銀行担当者は「1ドルにつき1円の手数料を頂いております」と馬鹿正直には言うことはほとんどありませんから、契約時にはよくよく銀行担当者に確認してみてください。
通貨オプションは与信取引
通貨オプションは、為替予約と同様に銀行にとって与信取引です。もっとも銀行内部では融資などとは別の与信として管理されていることが一般的です。
事前相談がおすすめ
新規で通貨オプションを検討したい企業は、予め銀行に相談しておきましょう。通貨オプションも与信ですから融資と同じように、数ヶ月前から銀行に相談することをオススメします。
仕組みが複雑
通貨オプションは、仕組みが複雑です。複数の権利を組み合わせて組成しているケースがほとんどですから、仕組みを理解するまでに時間を要するかもしれません。
専門家に相談
通貨オプションをはじめとするデリバティブは複雑であり、理解するのも一苦労です。銀行担当者も丁寧に説明してくれない可能性もあります。
弊社では、融資はもちろん外国為替業務についてもサポートしています。銀行に相談することに少しでも不安がおありでしたら、ぜひ私たちにお声掛けください。
銀行に相談する場面で、社長のとなりに元銀行員がいる安心感を提供できるのが私たちの強みの一つです。
まずは、気軽にご相談ください。
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