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【現役銀行員×中小企業診断士ゆーき】固定費分析を“行動”につなげる【後編】~具体的施策とQ&Aで納得するコスト最適化~

今回は、ゆーきさんから寄稿いただいた18つ目の記事をご紹介します。
私の自己紹介記事も、ぜひあわせてチェックしていただけると嬉しいです。


こんにちは。現役銀行員×中小企業診断士のゆーきです。
今回は、前回の記事の続きをお話ししていきます。

Xでも、私の考えを発信しています。
https://x.com/yuuki_sanbou


前編のおさらい:Bさんが見つけた固定費の盲点

前編のおさらい:Bさんが見つけた固定費の盲点

前編では、自動車部品メーカーを営むBさんが、売上は増えているにもかかわらず思うように利益が伸びない問題に直面し、固定費分析 に着目した物語をご紹介しました。

  • 固定費とは?
    売上にかかわらず一定期間発生する費用
    (人件費・家賃・リース料・光熱費など)

  • 投資かコストか?
    設備投資など「利益を生むポテンシャル」がある費用と、削減余地の大きい費用を区別する視点が重要

  • チェック体制の甘さ
    “使っていないリース物件がそのまま放置”など、定期的な見直しを怠るとズルズル固定費が増える

Bさんは「棚卸し → 金額の優先順位付け → 損益分岐点の把握 → 具体的施策」へと進むステップを踏む中で、ようやく「いったいどこに手を打てばいいのか」が見えてきました。後編では、良くある質問への回答、考え方と事業計画への落とし込みを解説します。

Q&A:固定費にまつわる素朴な疑問

Q&A:固定費にまつわる素朴な疑問

ここからは、読者の皆さんが抱きやすい固定費の疑問をピックアップし、Q&A形式 で解消していきます。

Q1.固定費を削減するとサービスの質が落ちるのでは?

A1.一律の削減ではなく、“投資かコストか”を見極めることが重要です。攻めの固定費(例:生産効率を高める新設備のリース、マーケティング費用など)は、むしろ継続的に投資すべき。

逆に、「誰も使っていないツールの月額料金」など、明らかに成果が出ていない支出は見直し候補。こうすることで質を落とさずに無駄だけを減らすことができます。

Q2.人件費を減らすとモチベーションが下がるのでは?

A2.残業代カットや給与減額をすれば当然反発は大きいです。まずはムダな作業や過剰配置など、現場に負荷をかけている部分を改善し、生産性アップにつなげましょう。やらないことを決めることが重要です。

また、従業員のスキルアップや研修には投資し、人材育成で「生産効率+モチベーション」を高める方法もあります。本質的には、「従業員にもメリットのある改善策」を探ることが重要です。

Q3.どこから削っていいのかわからない…

A3.棚卸しで“金額の大きい順”に注目するのがおすすめ。ただし、投資効果のある費用まで削ると、逆に利益を失うリスクがあるので要注意。まず大枠の金額を押さえて、その後、細かい科目へと進むとスムーズです。

Q4.変動費と固定費ってどう分けるの?

A4.基本的には“売上に連動して増減するかどうか”が基準です。材料費や外注加工費などは売上が増えるほど増加しやすいので変動費。家賃や固定人件費などは売上に関係なく一定額が発生するので固定費。

ただし、水道光熱費やアルバイト人件費など、一部は混在費用(固定的要素と変動的要素がある)として便宜上固定費に区分することが多いです。コストを時系列で並べたときに、明らかにデコボコしているコストは変動費かも?と疑ってください。

Q5.変動費の中に固定費が含まれている場合は?

A5.便宜上、まずは“ざっくり固定費”として把握し、後で精度を高めればOK。完璧に分類しようとすると作業が止まってしまいます。
大切なのは“事業全体の方向性を見極める”ことなので、まずは概算で仕分けして問題ありません。

Q6.この科目、本当は変動費だと思うんだけど、金額的には小さいし、固定費でいい?

A6.“金額が小さいなら、まずは便宜上固定費でOK”という考え方もアリです。後から必要に応じて分類し直すこともできるため、最初の段階で細かくしすぎないほうがスピード感を保てます。時間ができたときに細分化し、余力があれば再分析して精度を上げましょう。

Q7.銀行からの評価や従業員への還元にどう繋がるの?

A7.固定費を健全にコントロールできると財務改善につながり、利益が出るようになります。そうなると、銀行の評価が上がり、融資や金利優遇を受けやすくなります。

利益が増えれば従業員への給与・賞与面で還元しやすくなり、モチベーション向上にも好影響を及ぼします。

“利益を出す×継続性”を実現するためのチェック体制

2.“利益を出す×継続性”を実現するためのチェック体制

「固定費って、意外と多いし、一度見直してもすぐにまた増えるんじゃ…?」

と不安になる方もいるかもしれません。そこで、定期的にコストを把握し、あわせて“投資効果”を検証するためのチェック体制 が重要になります。

定期的な第三者の目

a顧問税理士や中小企業診断士などの社外アドバイザー
自社だけでは見落としがちなポイントを指摘してくれる。

b.銀行の担当者
定期的な財務面談で、損益分岐点や固定費の構造を話し合うと、融資や金利優遇においてもプラスに働く。

会計ソフトの活用

a.月次レポートの自動作成
前年同月比や科目別の推移を簡単にグラフ化できるように、Excelなどで仕組みを整えておく。

b.通知設定
ある科目の支出が一定額を超えたらアラートが出るようにする、など。

コストだけでなく“価値”も見える化

費用対効果の実績を記録:例えば交際費をかけた成果として、新規受注やリピート率が上がったかを定期的に確認。

目標管理

「3か月後に○○を○○%削減」
というように、費用目標を決める。

事業計画書への落とし込み:Bさんのケース

事業計画書への落とし込み:Bさんのケース

Bさんは、具体的な施策をどう事業計画書に反映させたのでしょうか? 以下に簡単な例を示します。

1.目標設定
「来年度の年間損益分岐点売上高を○○万円に抑えるため、固定費を月平均○万円削減する」

2.具体的アクション
「倉庫スペースを縮小し、年間家賃を60万円削減」
「生産性向上による残業代削減で、年間人件費を○%圧縮する」
「研修制度を拡充し、長期的に生産効率とモチベーションを上げる投資を継続する」

3.理由・期待効果
「売上が前年並みでも利益が安定し、銀行との協議で金利優遇が期待できる」
「従業員の定着率向上で求人コストや教育コストも抑制可能」

銀行や投資家に提出する場合、このように“何を、いつまでに、どのくらい削減するか”を明示し、かつ“なぜその施策が必要なのか”を示すと、説得力が格段に増します。

まとめ:固定費こそ“攻めと守り”の使い分けを

まとめ:固定費こそ“攻めと守り”の使い分けを

固定費は「動きがない費用」「ずっと同じ金額を払い続けるもの」というイメージがあるかもしれません。しかし、実際は契約や見直し次第で大きく変化しますし、“投資”として考えられる費用も少なくありません。

  • 攻めの固定費
    設備投資や人材育成など、売上利益UPに繋がる余地がある支出

  • 守りの固定費
    維持管理費や借入金返済など、削減の余地があるなら検討すべき支出

「売上利益に繋がる固定費は活かし、無駄な固定費は容赦なく削る」
――このメリハリが、結果的に利益を出す×継続性 を実現する近道です。

今すぐ取り組みたい“次の一歩”

まとめ:固定費こそ“攻めと守り”の使い分けを

a.自社の試算表や総勘定元帳を眺め、変動費以外の費用科目をチェックする
b.棚卸し結果を金額が大きい順に並べ、投資かコストかを判断する
c.必要に応じて契約交渉や組織体制の見直しを行い、事業計画に反映する
d.定期的な第三者チェック、会計ソフトを活用して継続的な見直しを行う

Bさんはこの一連の流れを踏まえて、固定費をトータルで月々5~10%ほど削減できる見込みが立ちました。その一部は人材研修費など、将来の売上拡大につながる“攻めの投資”に再配分していくつもりだそうです。
さらに利益体質が安定すれば、銀行との相談で金利優遇を受けたり、社員への還元を強化したりと好循環を生みやすくなります。

終わりに

前編・後編を通じ、「固定費をいかにコントロールし、利益に結びつけるか」 をテーマにお届けしました。今回の後編では、具体的施策例(家賃交渉・人件費見直し・リース契約など)やQ&Aを中心に解説しましたので、「なんだか難しそう…」という印象が少しでも和らいでいれば幸いです。

【最後に強調したいポイント】

  • 固定費分析は、一度やって終わりではない。
    定期的に見直すことで初めて、数字と現実がズレなくなります。

  • コスト削減イコール悪ではない。
    本当に必要な投資は続けるべきで、無駄な部分だけ削るメリハリが大切。

  • “利益を出す×継続性”を見失わない。
    事業計画書に施策を落とし込み、銀行や投資家とのコミュニケーションをスムーズにしつつ、従業員のモチベーションとも両立を図りましょう。

前回の限界利益分析と今回の固定費分析をセットで行えば、あなたのビジネスはより強固な経営基盤を手に入れられるはずです。会社の事情はさまざまですが、もし「どこから手をつけていいかわからない」という場合は、遠慮なくご相談ください。あなたの事業が“真の意味で儲かる仕組み”へと進化するお手伝いを、これからも続けていきたいと思っています。

「数字を味方につけ、攻めの固定費で未来を切り開きながら、守るべき部分はしっかり守る」。そのバランス感覚こそが、これからの経営者にとって必須のスキルです。 ぜひ、この機会に取り組んでみてくださいね。

XのフォローやDMでのご相談もお待ちしております。
https://x.com/yuuki_sanbou


実は私、谷本はこの度、自身のYouTubeチャンネルを開設いたしました!
早速、1/29に1本目の動画がアップされています。

今回アップしている1本目の動画は、『資金調達コンサルタントの一日密着』というタイトルで作成させていただきました。
お客様にも出演いただき"リアル"を動画に詰め込んでいます。ご出演いただいた社長の皆さまありがとうございました!

下記は、2025年1月29日より始めたYouTubeチャンネルです。
現在は、2~4本目の動画もアップされています。
ぜひ、こちらもあわせてチェックしていただけると嬉しいです。
https://www.youtube.com/channel/UCXLxrsiPKa_d4FMOtFBPv-A

また、谷本はXでも日々発信を行っています。
ぜひnote、Xについて今後もフォローをお願いします。
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相談に関する質問については、以下の記事でお答えしています。

お問い合わせは、DMもしくは問い合わせフォームからお願い致します。

※氏名・社名・業種・Facebook URL・メールアドレスなどを添えてお問い合わせください。

主に銀行融資関係(資金調達)のコンサルを行っています。

資金調達が出来た際の成功報酬は基本的に頂いておりません
理由としては・・・
・1度融資を利用する企業は、その後、2回目、3回目と利用があります。
・長いお付き合いをすることで、お互いの信頼関係を築くと共に、今後の資金繰りについて責任を果たすためです。
ですので、契約先とは最低でも毎月1回は定例でコミュニケーションを取らせて頂き、その都度、資金調達のタイミングや事業方針などについても議論をしております。

社長の望む調達金額を受けられる決算書の作成を得意とします。

銀行融資にはいくつかポイントがあります。
粉飾などによらず、目指す決算書にたどり着くよう、決算月の約半年前からすり合わせを行います。
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お客様によりますが、御社での私の名刺を作ってもらい、銀行対応全般をお任せ頂いております。
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