【入居者目線】不動産オーナーが注意すべき不動産管理会社との立場の違い
不動産経営において、不動産管理会社はオーナーの代理人として、オーナーの住宅を管理する。管理会社はオーナーのために行動すると思われがちだが、その立場の違いから、賃貸経営に対する姿勢やリスク許容度に大きな差がある。
不動産オーナーの立場
不動産オーナーは、一般的にはローンを組んで住宅を取得し、賃貸経営を行う。経営の成否がオーナーの収益に直接影響するため、物件からの収益をいかに最大化できるかがカギとなる、不動産オーナーの立場としては、次のような点がある。
賃貸経営の成否が直接的に収益に影響する
空室率の上昇や家賃下落は、収益減少につながる
長期的に賃貸経営が上手くいかない場合、物件売却による損失リスクがある
管理会社の提案する設備導入やリフォームが、真に必要なものか見極める必要がある
管理会社ほどの業界経験と知識を持ち合わせていないことが多い
入居者の本当の満足度を把握しにくい
入居者に長く住んでもらいたい
不動産管理会社の立場
一方、不動産管理会社の収益は、オーナーからのものである。入居者が管理に不満があっても、中長期的には影響はあるが、トラブルは常に発生しているわけではないため、不適切な対応でも大きな影響はない。不動産管理会社の立場としては、次のような点が挙げられる。
物件の管理業務に対する手数料がおもな収益源
賃貸経営の成否が直接的な収益に与える影響は限定的
管理物件の入居率低下やトラブル多発は、評判低下のリスクにつながる
入居率低下の責任を自身で負わない傾向がある
新たな設備導入やリフォームを提案し、別の形で利益を得ようとする可能性がある
豊富な業界経験と知識を持ち、オーナーよりも情報量で優位に立つ
入居者への満足度よりも、管理会社としての責任を果たせばよい
不動産オーナーと管理会社との決定的な差
オーナーの立場から考えると、入居者に安心して住んでもらえれば、長期入居が見込め、募集を頻繁にする必要はなくなる。しかし、管理会社の立場を考えると、この点は理解しているが、知識や経験の少ない入居者に入居してもらうほうが、トラブルなどで人材を割かずに済む。つまり、不動産管理会社としては、無知で経験のないオーナーや入居者は扱いやすいといえる。
また、入居者に直接対応するのは管理会社である。入居者とのやり取りをそのままオーナーが知ることはなく、管理会社の言葉でまとめられた情報のみが伝えられる。オーナーは、入居者への対応が上手くいっていると勘違いし、入居率の低い原因は、古い設備や物件の見た目にあるという指摘を信じてしまい、さらに費用をかけて収益を追求してしまう。
収益への影響
オーナー:賃貸経営の成否が直接的に収益に影響する
管理会社:管理業務に対する手数料が主な収益源で、賃貸経営の成否の影響は限定的
リスク許容度
オーナー:空室率上昇や家賃下落は収益減少につながり、長期的な経営失敗のリスクがある
管理会社:入居率低下やトラブル多発は評判低下のリスクがあるが、責任を負わない傾向がある
知識と経験
オーナー:業界経験と知識が少ない場合が多い
管理会社:豊富な業界経験と知識を持ち、情報量で優位に立つ
入居者への姿勢
オーナー:入居者に長く住んでもらいたいと考え、満足度を重視する
管理会社:入居者の満足度よりも、管理会社として法律さえ守っておけば十分。そもそも管理サービスが低くても法律違反にはならない。
長期的視点
オーナー:資産価値の維持・向上を長期的な視点で考えるべき
管理会社:短期的な利益を優先しがちである
情報の非対称性
オーナー:入居者とのやり取りを直接知ることはなく、管理会社からの情報に頼らざるを得ない
管理会社:オーナーへの報告の仕方次第で、オーナーの意思決定に大きな影響を与えられる
提案の動機
オーナー:管理会社の提案が真に必要かを見極める必要がある
管理会社:新たな設備導入やリフォームを提案し、別の形で利益を得ようとする可能性がある
管理会社の選定
オーナー:複数の管理会社を比較検討し、信頼できる会社を選ぶ必要がある
管理会社:オーナーに対して良い印象を与えるために、初期の段階では手厚いサポートを提供する場合がある
トラブル対応
オーナー:入居者とのトラブルは管理会社に任せがちだが、重大な問題につながる可能性がある
管理会社:トラブル対応は手間とコストがかかるため、できるだけ簡単に済ませたい傾向がある
コミュニケーション
オーナー:管理会社との定期的な連絡や報告を求めるべきだが、忙しさから疎かになりがち
管理会社:オーナーとのコミュニケーションは必要最低限に留めたい傾向がある
マーケティング
オーナー:空室対策や入居者募集は管理会社に一任しがちである
管理会社:効果的なマーケティングには費用がかかるため、できるだけ抑えたい傾向がある
メンテナンス
オーナー:物件の長期的な価値維持のために、定期的なメンテナンスが必要だが、コストを懸念する
管理会社:メンテナンスにかかる手間とコストを最小限に抑えたい傾向がある
家賃保証制度やフラット35を利用した物件購入などの問題を考えても、不動産管理会社は自社の利益を優先していることがわかる。フラット35は規約違反であるため、利用を勧めること自体問題だが、家賃保証制度は法律上は問題なかったと認識している。しかし、実際には、オーナーは家賃の値下げに同意せざるを得ず、収益に直接影響を与えている。これらの事案は、知識と経験の差を利用したものと言えるだろう。